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レノボ、2030年を見据えたAI展開。鍵は「ハイブリッドAI」と「オンプレミス推論」

 レノボ・ジャパンはLenovo Tech World Japan 2026に先駆けて記者説明会を開催し、同社のAI戦略「Smarter AI for All」およびインフラ技術の最新動向を解説した。

 説明会では、レノボ・ジャパン代表取締役社長の檜山太郎氏、Lenovoアジア太平洋地域プレジデントのアマール・バブ氏、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ代表取締役社長の張磊氏、同社バイスプレジデント兼ソリューション&サービスグループ最高マーケティング責任者のデビット・ラビン氏らが登壇。現在のLenovoの市場規模、クラウドからエッジへのAI処理の移行、データセンターの発熱問題に対する水冷技術「Lenovo Neptune」などに触れられたほか、リクルートやMCデジタル・リアルティといったパートナー企業が登壇し、実導入に向けた議論が展開された。

檜山太郎氏
張磊氏
アマール・バブ氏
デビット・ラビン氏

 グループ全体として世界180の市場に7万2,000人の社員を抱えるなどグローバルに事業展開するLenovoグループは、日本をアジア太平洋地域最大の市場として重視しているという。国内ではThinkPadのグローバルR&Dセンターである「大和ラボ」を設置したほか、レノボ・ジャパンやFCCL(富士通クライアントコンピューティング)などの拠点およびサプライチェーンを活用し、2025年には国内PCシェア1位を獲得した。

AIの主戦場は「学習」から「推論」へ

 説明会序盤では、AI市場の今後の動向について言及した。LenovoにとってAI市場は、関連売り上げが前年比で+72%の成長を見せるなど重要な領域だとした上で、AIに関する市場調査報告書「CIO Playbook 2026」を引用。日本では企業の68%がすでにAIを試験運用中または導入済みで、さらにその内83%はAI投資からプラス効果が得られているとし、エンタープライズAIは試験運用から社会実装の段階に進んでいると述べた。

 これからのAIトレンドについては「現在はAIモデルのトレーニング(学習)への投資が主流だが、2030年までには市場の75%が推論(Inference)へ移行する」との予測を示した。

 これまでクラウド上の巨大なデータセンターで集中的に行なわれていたAI処理が、今後はPC、スマートフォン、エッジサーバーといった、ユーザーに近いオンプレミス環境へと分散していく。檜山氏はこれを「Hybrid AI」のビジョンとして掲げ、パブリッククラウド、エンタープライズ(企業内)、パーソナル(個人)の各領域でデータを適切に処理、保護する重要性を説いた。

 特にオンプレミスでの推論需要の拡大は、医療や製造現場でのAI活用を加速させている。事例として紹介された藤田医科大学病院では、FIXERと協力し、NVIDIA製GPUを搭載したレノボの手のひらサイズエッジデバイス「GaiXer ThinkStation」を導入。退院サマリの作成業務などをAIで自動化することで、3カ月で医師や看護師の業務時間を約1,000時間削減したという。

会場で展示されたGaiXer ThinkStation実機

 また、説明会では最新エッジデバイスや個人用クロスプラットフォームAIも登場。檜山氏は自身が胸元に装着したウェアラブルAIデバイス「Project Maxwell」を紹介。内蔵したカメラとマイクでユーザーの生活を記録するほか、外国語の同時翻訳や、目の不自由な人へ文面を音声で届けるなど多様な機能を持つ。檜山氏は、ただ提供するだけではなく、実際の社会でどう活用できる可能性があるか、ユーザーとともに開拓していく領域だとした。

檜山氏が装着するProject Maxwell

 Lenovoが開発するAIエージェントとして紹介された「Qira」は、スマートフォンやPCなど複数のデバイス上(クロスプラットフォーム)で動作するローカルAIだ。複数デバイスのデータを統合的に扱い、ユーザーの文脈を理解した上で生活をサポートする、個々人専用のAIといえる。

「水冷」はもはや必須要件

 AIの普及に伴い、深刻化しているのがデータセンターの電力消費と熱の問題だ。発表内では、世界の電力の約3%がデータセンターで消費されており、そのうち約4割が冷却に使われていると指摘。さらには2030年にはデータセンター消費電力が全電力の10%近くに上るとの見通しを示し、同社が長年開発を続けてきた水冷技術「Lenovo Neptune」が、この課題解決の鍵になるとした。

 パネルディスカッションには、リクルート プロダクトディベロップメント室VPの片岡歩氏と、MCデジタル・リアルティ代表取締役社長の畠山孝成氏が登壇した。片岡氏は、パブリッククラウドのコスト高騰を背景に、オンプレミスのAI基盤構築を検討。その際、懸念材料だったのが冷却コストだったという。「大阪の猛暑の中で、空調なしで稼働しているレノボの水冷サーバー(Neptune)を見て衝撃を受けた。冷却にかかる電気代がほぼタダに近くなる計算で、これは導入するしかないと思った」と、採用の決め手を語った。

片岡歩氏
畠山孝成氏

 また、水冷化に伴う液漏れなどのリスクについては、安全性に注意を払って製造されていることに触れた上で、リスクをあえて許容してでも遂行しなければならない部分だとした。

 畠山氏も「顧客からの高密度ラックへの要望は高まっており、空冷では限界がある。水冷対応は競争優位性を保つ上で不可欠」と、データセンター事業者側の視点で水冷化の必然性を強調した。

FIFAワールドカップの公式パートナーに

 また、イベントではレノボがFIFA(国際サッカー連盟)と公式テクノロジーパートナー契約を締結したことも紹介された。2026年と2027年のワールドカップにおいて、スタジアム運営や放送、ファンの体験向上に向け、レノボのAIソリューションやハードウェアが全面的に活用される予定だ。

 Lenovo Tech World Japan 2026では、Lenovoおよび関連企業の製品展示ブースが展開され、ユーザー向けのノートPCやモトローラ製スマートフォンからNeptune搭載ワークステーションまで、幅広い製品が紹介された。

Neptune搭載ラックサーバー
ノートPCや周辺機器
PCバッグ
モトローラ製スマートフォン