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インテル反攻の2026年。Core Ultraシリーズ3で描く“AI PC新章”

 インテルは2月3日、都内でプライベートイベント「Intel Connection Japan 2026」を開催。最新CPUのPanther Lakeを筆頭に、AI PCにまつわるさまざまな解説やデモショーケース、組み込み向けソリューションやサーバー向けソリューションなどを紹介した。なお、このイベントは申込制ではあるのだが、誰でも無料で参加することができた。

 イベントの午前の部では基調講演が行なわれたほか、午後では分科会として、AI PC、および生成AI & データセンターに分けて、参加者に説明する機会を設けた。本稿では主に基調講演の模様をお伝えする。なお、基調講演は多くのテーマに渡って語られたため、興味深い話題を中心に掘り下げていくことにしたい。

冒頭からいきなりNPUを駆使した演出。そしてインテルの経営と成長戦略

 このイベントが開催されたのが節分、ということもあり、オープニングでは鬼の仮面をつけた「能楽」からスタートした。企画をしたCHAOSRU代表の内藤薫氏の話によれば、今回の作品は実際にNPUを活用した画像/動画制作をしたとしており、クリエイターを影で支えるような存在であることを改めて認識したという。今までにない発想といったヒントを得ることができ、今後クリエイターを支えるインフラの1つになるだろうと述べた。

オープニングでのパフォーマンス
開催されたのが節分の日だったため、こうした粋なパフォーマンスが行なわれたようだ
左から企画したCHAOSRU代表の内藤薫氏、演者の源光士郎氏、そしてインテル代表取締役社長の大野誠氏

 パフォーマンスを演じた武楽座創始家元の源光士郎氏によれば、現実世界で演じつつ、揚幕の裏に潜む神仏や精霊、鬼といった異世界と出会うことが能の表現なのだが、今回は揚幕の裏に電脳空間があることをイメージ。そして日本の叡智を結集した名刀「村雲」の名前にかけて、クラウドを体現したという。

インテル代表取締役社長の大野誠氏
ハンス・チュアン氏

 インテル代表取締役社長の大野誠氏による簡単なイベント紹介の後、インテルのセールス、マーケティング&コミュニケーション統括本部アジア太平洋および日本ゼネラル・マネージャーのハンス・チュアン氏が、2026年における「4つの戦略の柱」を紹介した。

 その柱の1つ目は財務基盤の強化だ。既に知られている通り、2025年当初のインテルの財政状況は芳しくなかった。その中でソフトバンクによる支援と、NVIDIAとのパートナーシップ、米国政府からの投資により、財務体質は健全化したという。

 その財務状況をさらに改善し、強力に後押しするための2本目の柱がx86エコシステムへの注力だ。ここでの注力は2つの側面からなる。1つはインテル自身が優れた製品を投入することで、Core Ultraシリーズ3およびCoreシリーズ3に加え、ゲーミング向けのCPUを新たに投入する(筆者注: Core Ultraシリーズ3の中で12のXeコアを備えた製品を指す)。また、データセンターではClearwater Forestを展開した。

インテルの4つの戦略の柱

 もう1つの側面はパートナーシップだ。競合関係にあるAMDとは、x86エコシステム拡大に向けた「x86 Ecosystem Advisory Group」を2024年に設立しているが、この連携を強化する。もう1つはNVIDIAとの共同開発製品の投入だとしている。

 3つ目の柱はAIの推進で、ここではクライアント側に対してAI PCの市場拡大に努め、ソフトウェアパートナーと数百のAIソリューションを展開。データセンターにおいてはエージェンティックAIを推進していくという。

 そして4つ目はファウンドリ事業の加速。Core Ultraシリーズ3で採用されている18Aプロセスの歩留まり向上を目指すほか、より多くの顧客が利用しようとしている14Aに関しても開発を進めるとしている。なお、すでに複数の大企業から案件を獲得しているとのことで、着実に需要に応えられるようにしていくという。

Core Ultraシリーズ3が台頭するAI PC新時代

デビット・フェン氏

 基調講演の中盤から、話題の中心は新たに投入されたPanther LakeことCore Ultraシリーズ3に移された。ここではインテルのクライアント・コンピューティング事業本部副社長兼クライアント・セグメント担当本部長のデビット・フェン氏が解説した。

 フェン氏によれば、プロセッサは実際の設計から製品化まで時間がかかるため、常に未来を形作るために製品を定義してきた。その中で、米国内での製造および研究開発、最先端パッケージング技術、新しいファブ、EUV技術などに対して投資し構築し、最先端のx86プロセッサであるCore Ultraシリーズ3を生み出すことに成功。ハイブリッドコアアーキテクチャにより、省電力でありながら高性能で、CPU/GPU/NPUが三位一体となって駆動するローカルAIを実現する。こうしたプロセッサの成功を受けて、さらなる製造技術の進化を駆動させていくとした。

プロセッサ開発では、常に市場を先読みしなければならない
クライアント製品戦略の中核であるCore Ultraシリーズ3の誕生

 また、2023年の初NPU搭載プロセッサ「Meteor Lake」以降、AI PCを推進させてきており、これまで数百のデザインおよび20社以上のOEM、 200社以上のリセラーを介して1億台出荷してきたが、2026年では第2四半期以降さらにこの取り組みを拡大。また、企業で利用されるvProプラットフォームも変革させるとし、Microsoft Intuneへの統合により管理操作性を大きく向上させるという。

Core Ultraシリーズ1登場以降のAI PCの進化
vProプラットフォームも刷新
これまでのAI PC累計出荷
Core Ultraシリーズ3を手にするフェン氏

 AI PC推進の中核を担うCore Ultraシリーズ3について、ここで改めて特徴が解説され、新しい特徴によりAI PC市場をさらに盛り上げるとした。

  • RibbonFETトランジスタやPowerVia技術を採用した最先端のプロセスノード18Aの採用
  • EコアにDarkmont、PコアにCougar Coveアーキテクチャを採用
  • XeSSマルチフレーム生成などをサポートしたXe3 GPU
  • 効率や性能が向上したNPU 5
  • PCIe 5.0、Thunderbolt 4やWi-Fi 7/Bluetooth 6といった最新の接続性
  • LPDDR5およびLPCAMM対応

 こうしたさまざまな特徴の中で、まずフォーカスが当てられたのはXeコアを12基搭載したCore Ultra Xシリーズだ。アーキテクチャの刷新とともに、Intelとしては多い12基のXeコアを内蔵することで、競合のRyzen 9 HX 370と比較して、多くのゲームにおいて平均で73%も高速であるとした。

 そもそもGPUとしての「素の性能」の高さに加え、3枚の中間フレームを生成できるMFG 4x技術によりフレームレートを大きく引き上げられる。基調講演では、Cyberpunk 2077の画質設定で、レイトレーシングをウルトラに設定した場合、Ryzen 9 HX 370を用いた環境では34.37fpsしか出せないことに対し、Core Ultra X9 388Hでは155.77fpsを達成できるとデモがなされた。

最先端の18Aプロセスの採用
Core Ultraシリーズ3の特徴
Arrow LakeとLunar Lakeの特徴を融合させたPanther Lake
Core Ultra XシリーズではGPU性能を大幅に強化
Core Ultra Xシリーズの特徴
内蔵GPUはついにAMDを大幅に超える
XeSSのMFG 4xによりフレームレートが大きく向上
フレーム生成がオフの状態でも、Cyberpunk 2077のフレームレートがRyzen 9 HX 370の2倍以上だ
これをオンにするとさらに差が広がる
会場展示でも実際の性能比較をデモ。34.83fps対136.88fpsと大きな差がついた

 また、電力効率もアピールされ、Ryzenより長時間駆動でき、Core Ultra X9 388HではNetflixストリーミングを視聴しても最大27時間のバッテリ駆動を達成。この長時間バッテリ駆動と高いGPU性能により、新たなポータブルゲーミングPCの可能性が広がったとし、今後に期待してほしいと語った。加えて、GPUを活用したクリエイティブなワークフローも時間短縮につながり、これまでデスクでしかされてこなかったような作業をポータブルで実現できるとした。

 なお、こうした“GPU強化版”のみならず、Xeコアを4基に抑えたモデルも用意しており、さまざまなレベルのニーズに応えられるとしている。

バッテリ駆動時間も競合より長くなっている
Netflixストリーミング視聴で27時間駆動可能だった
ポータブルゲーミングPCでの採用も広がるとしている
クリエイティブなワークロードでも強力なGPUが生きる
Xeコアが4基のモデルも用意し、さまざまなニーズに応える

 NPU 5については、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)との協業、およびXPU(インテルがいうCPU/GPU/NPUの総称)を活用できるOpenVINOといったソフトウェアエコシステムの展開により、アプリケーション内にNPUを活用できる機能の実装が進んでいるという。Core Ultraシリーズ1の際には9種類程度しかなかったアプリケーションも、シリーズ2、シリーズ3への進化にともなって広がってきたとし、今後は単なる回答のみならず、タスクを実行できるエージェント型AIに進化していくだろうとした。

ソフトウェアベンダーと協業し、新しいAI PCの体験を実現

 最後に同氏は、こうした新しい特徴を備えたCore Ultraシリーズ3を搭載したノートPCは、すでに200種類以上のPCがリリースされているとアピールし締めくくった。

さまざまなPCの登場

インテルのプロセッサを活用するソフトウェアのエコシステム

 基調講演の後半はCore Ultraシリーズ3を活用するようなソフトウェアエコシステムに話題が移った。壇上に戻った大野氏はまず「プロセッサの性能は向上したが、AI PCで動くソフトウェアはどうか。すでにPCの3台に1台はAI PCだが、ユーザーは多くのAI機能について使っていないのではないか、埋もれた宝になっているのではないか」と問題を提起した。

 その答えの1つとしてまずMicrosoftとのパートナーシップについて紹介し、これまでキーボードによる文字入力やマウスによるAI操作が、Copilotを統合したWindows PCでは声で制御できるようになると紹介。それを最大限に体験できるのがCopilot+ PCであるとし、この実現にインテルのシリコンが欠かせないなどと語った。

 もう1つは事例紹介となるが、トヨタ・コニック・プロにおけるCore Ultra 200Vシリーズ搭載PCの導入。当初は「バッテリが持つノートPC」として導入が始まったのだが、AI PCの活用を強く推進していく段階で、教育の浸透、基盤整備とAIツールの利活用が進んでいるのだという。

声で操作できるCopilot+ PC
トヨタ・コニック・プロにおける導入事例

 Core Ultra Xシリーズ内蔵のGPUの活用については、セガの龍が如くスタジオのチーフプロデューサーである阪本寛之氏を壇上に招き、2月12日に発売予定の「龍が如く 極3/龍が如く3 外伝 Dark Ties」のデモを行なった。龍が如くシリーズではいち早くからIntel XeSS技術をサポートしたタイトルの1つとして知られている。

 阪本氏によれば、高いフレームレートと美しいグラフィックスの両立は、常にゲーム開発者の頭を悩ませる課題の1つであったが、XeSS技術によって容易に実現できる。「Core Ultraシリーズ3ではびっくりするほど快適にゲームがプレイできるので、ユーザーにとっても、ゲームを開発する会社にとってもうれしい」と語った。

2月12日に発売予定の「龍が如く 極3/龍が如く3 外伝 Dark Ties」
龍が如くシリーズ、チーフプロデューサーである阪本寛之氏
展示会場でもすでにプレイできる状態だった

 このほか、Adobeの動画編集ソフト「Adobe Premiere」では特定人物の切り抜きや背景変更にNPUを利用しているほか、動画編集に12基のXeコアをフルに活用できること、CyberLinkの広告動画および投稿作成ツール「Promeo」もXeコアの活用で性能が2倍に向上すること、K-kaleidoのリアルタイム文字起こし/翻訳アプリ「スピーチコネクト」がNPUを駆使して省電力かつ機密情報を保持しながら処理できることなどを挙げた。

Adobe PremiereではオブジェクトマスクにおいてNPUを利用している。また、GPUもフルに活用できる
ちなみに展示会場では、LightroomにおいてもGPUの機能をフルに活用し、リアルタイムにボケ処理などが行なえることをアピールしていた
CyberLink Promeoでは、製品画像を自動解析して抽出する機能などを備えている
プロンプトで画像編集も可能なため、初心者でも容易に扱えるのが特徴
K-kaleidoのスピーチコネクト。PC上で再生されている音声をリアルタイムで文字起こしもしくは翻訳できる
会場でのデモ。NPUをフルに活用していた

 さらに、Core Ultraシリーズ3では、リアルタイム性を持って低遅延でAI処理が可能な点もアピール。ソフトウェア定義のPLC(Programmable Logic Controller)なども実現でき、これにより工場内での導入も進むだろうとしている。

インテルではPEAR Experienceと呼ばれるAIアプリ開発ワークショップも開いている
そのPEAR Experienceの成果の1つがAIスイングコーチ。映像からゴルフのスイングを分析し、AIが適宜アドバイスをしてくれるというもの
もう1つがRSSニュースリーダーアプリの「AIニュース読むニャン」。ニュースの内容を解釈して短く届けてくれる
工場でもCore Ultraシリーズ3が活用できるという
工場での検品検査に使う例の1つ。高速に滑り落ちるサンプルの不良品を即座に判別してはじき出すといったことが可能。ちなみにゆっくり流れる程度ならもっと低性能なものでもよいのだが、高速な反応が求められるシーンでCore Ultraシリーズ3が生きる
こちらはRedHatの展示で、機能が固定のPLCをソフトウェア定義のものにして汎用性や開発コストの削減を狙うというもの
「他社製CPUではダメなのか?」と尋ねてみたところ、特にリアルタイム制御を必要とされるシーンで、インテルならドライバレベルで最適化が可能とのことで、それが他社に対してのアドバンテージになっているという

クライアント/エッジは分かった。ではサーバーは?

 2026年のクライアント/エッジにおける目玉はCore Ultraシリーズ3だが、サーバー向けの戦略について、インテルGTM & AI製品マネジメント担当副社長のAnil Nanduri氏が説明した。

Anil Nanduri氏

 同氏はまずコンピューティングの歴史について振り返った。1980年代から始まったPCによるコンピューティングの革命だが、2000年代にはモバイル+GPS+クラウドが登場し、市場はかつてのPCの数倍規模に膨れ上がった。そして今、AIが登場し、その市場規模はこれまでのいずれよりも遥かに大きなものとなり、純粋なPC市場に対していえば15倍程度の規模になる見込みだという。

コンピューティングの進化と市場の拡大

 そのAIの中でも、単に質問に対して回答するチャットボットのようなものから、実際に実行に移せるエージェント型AI、そして実世界とインタラクションするフィジカルAIが台頭し、市場を牽引する。法律、マーケティング、医療などあらゆる分野でAIの活用が期待されているからだ。

 そのために必要とされるコンピューティング能力は、単なるチャットボットと比較して100倍に達する見込みだ。そうした市場においてGPUだけが有利になるわけではなく、各々のプロセッサが得意とする処理に対してワークロードを振り分けていく「ヘテロジニアスシステム」必要があり、それによってコスト効率性を高めていく必要があると力説する。

エージェント型AIに求められる推論性能
これに対して適材適所で推論処理を行なっていく必要があるという
インテルが提唱するヘテロジニアスハードウェア
オープンソフトウェアスタック戦略

 デモでは、NVIDIAの「B200」だけの構成に対して、インテルの「Xeon」と「Gaudi 3」をプラスした環境のほうが、より低コストかつ効率的に処理できることがアピールされた。

ヘテロジニアスの推論デモ
B200が3つのシステムと、Xeon、Gaudi 3、B200を併用するシステムでは、後者のほうが推論コストが低い
推論コストの低さというのはつまりは電力のことで、GPUのみのシステムと比較して低く抑えられるとのことだ
Gaudi 3のラインナップ

 また、LLMを実行する上での中核を担うGPUについて、まずは企業内のオンプレミスでLLMを実行することを想定したGPUとして、VRAMを最大24GB搭載したIntel Arc Proシリーズを用意。これを4基搭載すれば96GBというVRAM容量を実現でき、GPT-OSS-120Bといった大規模なLLMも実行できるとした。

GPUのロードマップ
エッジ向けのIntel Arc Proと、データセンター向けのIntel DataCenter GPU
Intel Arc Proがカバーする範囲
Intel Arc Pro B60を4つ使えば96GBのVRAM環境を構築でき、GPT-OSS-120Bも動作可能
単体でも24GBのメモリがあるため、16GBしかないNVIDIAのRTX 2000 AdaやGeForce RTX 5060 Tiと比較して、特に大容量モデルで高性能を実現できる
展示会場では、Intel Arc Pro B60を2基集積したMAXSUNの「MS-Intel ARC Pro B60 Dual 48G Turbo」が展示されていた。このカードは2スロット厚のため、4GPU環境を容易に構築可能だ
展示会場でのIntel Arc Pro B60のデモ

 一方データセンター向けには、開発コードネームCrescent Islandで知られるモデルを今後投入し、最大160GBのLPDDR5xによりメモリ負荷の高いワークロードに対応できるほか、Xe3Pアーキテクチャによる高い電力効率、FP4/MXP4からFP32/FP64まで対応できるデータ型などが特徴だとした。

次期Intel DataCenter GPUのCrescent Island
インテルのAIポートフォリオ

 Gaudi 3の導入事例としては、ハードウェアソリューションプロバイダのFsas Technologiesを挙げ、サポート業務におけるAI活用で、社内で導入していたNVIDIAの「H100」と比較して性能が40%向上しつつ、AIが提示する過去の同様事例の対応策などを活用した結果、サポートにかかる工数を33%削減できたことが示された。

Fsas Technologiesが展開している企業向けのソリューションだが、自社でも活用している
Gaudi 3によってもたらされた効果
サポートサービスにおいて、AIがナレッジを参照し対策を提案するため、対応工数が大きく削減できた
Fsas TechnologiesのGaudi 3搭載「PRIMERGY RX2540 M8」

 最後に壇上に戻った大野氏は、インテルの日本法人が今年(2026年)をもって50周年になる節目であることを紹介。これまでの50年間は、ムーアの法則が予測した通りPCが民主化したのだが、この50年後はAIが民主化し、どのように変化していくのか楽しみにしつつ、デジタルラボといった取り組みを通してAI人材の育成にも力を入れていきたいなどと述べ、講演を締めくくった。

インテルのデジタルラボ構想。AI時代に即した人材の育成や企業支援が目的だ
50年間の歩み