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逆風の2026年、日本HPが掲げる「生存戦略」
2026年1月23日 06:17
日本HPは1月22日、都内で記者会見を開催し、2026年度の事業戦略について説明を行なった。発表会の冒頭では、同社代表取締役社長執行役員の岡戸伸樹氏が挨拶した。
岡戸はまず2025年を振り返り、「増収はしたものの減益となってしまった。しかしビジネスとしてはまずまず」と評価。久しぶりに東京ゲームショウに出展を行なうなど、活動が増えた1年でもあったとした。
一方、2026年の事業戦略だが、テクノロジを単なるツールではなく、生産性向上および健全な職場関係を構築するための触媒であるべきと捉え、ナレッジワーカーが生産的な仕事をするための支援として「Future of Work」戦略を掲げる。つまり、仕事の未来の定義だ。
そのFuture of Workは3本の柱を据える。
1つ目は「ハイブリッドAI」である。現在AIは主にクラウドで処理されているが、データセンターの増加による電力の逼迫の問題に加え、セキュリティやプライバシー面でも課題が残る。それを解消するのが、ローカルAIをも取り入れた「ハイブリッドAI」戦略である。
ローカルAIでは、一度環境を構築すれば追加コストなしで秘匿性の高いデータが利用でき、財務や業務といった専門的な業種に活用できる特徴を持っている。しかしクラウドのAIは圧倒的なコンピューティングパワーを持っており、最新のモデルで強力な推論を行ない、幅広く全般的に利用可能といった特徴を持つ。
つまり、どちらか一辺倒ではなく、両方活用することが生産性の向上につながるとしており、ハイブリッドAIを積極的に提唱していきたいという。そしてそれが実現できる年が2026年であるというのだ。そして日本HPは、単にそのハイブリッドAIを提唱して傍観するだけでなく、旗振り役を担いたいとし、「ハイブリッドAI推進コミッティ」を立ち上げるとする。
これは参画する企業が一丸となって、企業におけるハイブリッドAI環境の構築を支援するというもので、具体的にはコードの無償提供、エンジニアの立ち上げを支援する研修プログラム、ハードウェアのサイジング仕様のアドバイザリーサービス、PoCやサポートプログラムをバンドルしたパッケージの提供などである。
その一環として、昨年(2025年)はRakutenとの協業を発表したのだが、今回新たにエンタープライズ向けAIを提供するスタートアップ企業のUpstage AIと協業し、紙やPDFといった非構造化データをオンプレミスでAIによりドキュメント化し、日本語に最適化されたLLMを搭載したAIワークステーション統合パッケージ「SolarBox」を2026年春より日本国内で展開すると発表した。
2つ目は「ハイブリッドワーク」の深化だ。これまで日本HPは、同社製PC向けに「HP eSIM Connect PLUS」というサービスを展開してきており、PCからすぐにネットワークに接続できる環境を提供してきたが、直近では国際ローミング、副回線キャリア、MDMセキュリティ(電源オフでもデータ消去可能な技術)の提供を行なうなど、ハイブリッドワークの利便性/耐障害性/セキュリティ性の向上を図ってきたとする。
また、ノートPCが外出先で使われる機会が増えているため、エンドポイントを狙ったセキュリティリスクも高まっているのだが、量子コンピュータやエージェント型AIを含む最先端技術に対応できるセキュリティ技術、HP独自のセキュリティソリューションの拡充により、PCの可用性を高めるとしている。
3つ目は「ものづくりDX(デジタルトランスフォーメーション)」のさらなる強化。具体的には製造業や建築業の支援などである。
例の1つが、講談社の老舗文芸誌「群像」のデジタル印刷への転換だ。これまで群像を印刷してきたオフセット輪転機の企業が事業撤退し、課題となっていたのだが、HPのデジタルとオフセット印刷によるハイブリッド運用に切り替えたところ、小ロット/短納期/高品質化に成功したという。誌面がフルカラー化したことにより、読者への訴求力が高まったとしている。
もう1つは、「HP Build Workspace」というソリューションで、紙の設計図を大判プリンタでスキャンすると、AIがそれをノイズ除去/ベクター化して、自動的にレイヤーを分割する「ベクタライゼーション」を実行、データ化するという。これまで人力で1枚あたり5~6時間かけていた作業が、AIデータ化後の微修正作業のみで済むようになり、大幅に省力化できたという。
現時点ではこれはクラウドのサービスとして提供しているのだが、将来的にはHPのワークステーションで、ローカルでも実行できるようにしていくという。これにより、ものづくりの現場の人手不足の問題を解消していきたいとした。
このFuture of Workは対社外的な戦略だが、日本HP自身のFuture of Workはというと、ボランティアによる社会貢献活動の積極的な参加であるという。実は日本HPは積極的にボランティアを推進している企業の1つであり、2025年は「何らかのボランティアをしている社員」が実に75%にのぼった。これは業界内でもダントツの1位だと誇った。
最後に、こうしたFuture of Work戦略を掲げながら、社員一丸となって、全速力で2026年を駆け抜けたいと語った。
2026年の製品と、セキュリティ面の強化
2026年最初に投入する製品の紹介は、同社執行役員パーソナルシステムズ事業本部事業本部長の松浦徹氏が解説。
各製品についてすでに別記事でも紹介しているため、詳細は省くが、Intel、AMD、Qualcommといった複数のシリコンベンダーとの協業による幅広い製品ラインナップの用意、HP eSIM Connect PLUSの提供による利便性向上、安全にハイブリッドAIが利用できる環境の提供を主軸としている。
その中でも特徴的な製品としては、キーボードと一体化したPCの「HP EliteBoard G1a Next Gen AI PC」、Snapdragon X2 Elite搭載で最大38時間駆動可能な「OmniBook Ultra 14 AI PC」、HyperXブランドで生まれ変わり、PC/モニター/周辺機器まで一貫した体験を実現するゲーミングPCなどを紹介した。
製品に搭載されるセキュリティ機能については、同社セキュリティエバンジェリストの木下和紀エドワルド氏が解説した。
ハイブリッドワークが一般化した今やセキュリティは重要な課題の1つなのだが、HPは20世紀の終わり頃からセキュリティを重要視してきており、1999年にもトラステッド・コンピューティングの提唱を行ない、TPMの標準化を推進。2003年にも初となるTPM搭載PCを出荷している。また、2013年には自己修復BIOS、2017年には仮想化隔離技術、2023年に量子暗号対応PC、2024年にはPCの電源が切れていてもデータ消去できるPCなどをリリースし、現在にいたっている。
そして今後は、エンドポイント(クライアントPC)のセキュリティ保護が欠かせないとする。その理由としては、ローカルAIやハイブリッドワークの普及により、ローカルPCでの機密情報の扱いが増加している一方で、攻撃の手段が複雑/高度化しているためだという。
そのためHPではこれまでさまざまなセキュリティ技術を搭載してきたが、今回新たに搭載される技術は「Sure Access」と「Sure Admin」だ。
Sure Accessは、これまで提供してきた「Sure Click」とは逆のアプローチ。Sure Clickは仮想化隔離技術を応用して、脅威を箱の中に閉じ込める技術であるが、Sure Accessは逆に脅威を箱の外に留める。これにより、万が一エンドポイントがすでに攻撃を受けていても、安全にVPNなどの社内リソースが利用できるという。
もう1つのSure Adminは、今までリモート管理できなかったBIOSを、リモート統合管理できるようにするもの。具体的には、そもそもBIOSの攻撃に対して有効なのはBIOSパスワードであるのだが、運用上難しさがあった。たとえば、BIOSパスワードをExcelで管理していたのだがExcelファイルが紛失してしまう、もしくは同じBIOSパスワードを使い回したが、社員の辞職があった際にパスワードを変更し忘れる(それによって前社員が流出など)などだ。Sure Adminは、サーバーとリモートでBIOSを管理できるので、そういったリスクが回避できるというわけだ。
サポートにもいよいよAIを活用
続いて、同社執行役員カスタマーサポート統括本部統括本部長の室屋智子氏が、同社のサポート部門の革新について語った。
現在は世界情勢や日本情勢の変化により、サポート部門でも課題が多い。特に保守や技術サポートにおいては人材不足が深刻な課題になっているほか、サポートのニーズが多様化しており、顧客の期待度が高まっているため、サポート品質の維持が難しい。また、物価/物流費/人件費/部材費の高騰なども重なり、内部効率化も限界が生じている。
こうした背景があるため、カスタマーサポートのあり方を抜本的に変えていく必要があるとする。そこで同社が今後導入することを目指しているのが、AIだ。
室屋氏によれば、現在の顧客はセルフサービスへの抵抗感が減っているのだという。こういったトレンドに対して、同社はAIを活用。AIと人が生み出せる価値を明確に分離し、AIは「柔軟性」、人間は「深く共感して細かく回答できる」よう、顧客のニーズに応えていきたいとする。
AIを使ったサポートでは、ユーザーが必要な時にすぐ提供でき、一定の品質を維持することができ、人による品質のばらつきを減らせるのが特徴。そのため、この音声AIサポートを日本語化させ、早期に導入していく考えを示した。また、WebにおけるFAQの充実、LINEによるサポート、ユーザー自身が修理できる製品の充実なども取り組むとしている。
一方で、サポートの電話番号や連絡先などを見つけやすいところに公開し、「サポートにつながらせたくないのか」と思われないよう、オープンにしていくといった施策も展開していくとした。
2026年のメモリ/SSD高騰にどう向き合うのか
最後の質疑応答では、(Windows 10サポート終了特需に加え)メモリ/SSDといった部材の高騰に対して、製品価格にどう反映していくのか、厳しい年になっていくのでは、といった質問が数多く飛び交った。これに対し松浦氏は「市場についてはIDCなどの予測通りだと見ており、GIGAスクールの需要は継続している。台数は減るかもしれないが、その中でシェアを伸ばすことを目指す。コロナ禍(の半導体不足)も経験し、我々は忍耐力と耐久力を強くしてきた。今後も継続して努力する」と答えた。
また岡戸氏は、「価格面に関して、部材を購入して組み立てている関係上、コスト高は避けられないが、我々自身がコントロールできるものに関してはそのコントロールに注力する。HPは部材数があり、強靭なサプライチェーンを持っているので、日本のニーズを適切に捉え、先に掲げた戦略を追求していく」と語った。












































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