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2025年PC市場は過去最高。今後値上げ懸念で減少に転じる

出荷台数の増加(出典: MM総研)

 2025年の国内PC市場の好調ぶりが、調査データから示された

 MM総研が発表した2025年度上期(2025年4月~9月)の国内PC出荷台数は、前年同期比60.7%増の965万5,000台となり、過去最高を記録した。半期ごとの集計では、2013年度下期の960万1,000台を上回り、12年ぶりに過去最高を更新したことになる。

 2025年10月のWindows 10のサポート終了を前に、企業および個人の買い替え需要が増加したのに加えて、GIGAスクール端末の更新需要が貢献し、大幅な増加となった。特に、GIGAスクール端末では、Chromebookのシェアが拡大し、一部ではタブレットからPCへのシフトもみられたという。

 また、2025年度通期(2025年4月~2026年3月)の見通しについても発表。出荷台数は、前年比29.9%増の1,755万5,000台になると予測した。同社が1995年に統計を開始して以来、過去最高となる。

 Windows 10のサポート終了に伴う買い替え需要は減少するものの、GIGAスクール端末の更新需要が継続することで、2025年度下期(2025年10月~2026年3月)も前年同期実績を上回り、5.3%増の790万台に達すると予測した。

 なお、MM総研の調べでは、古いOSを搭載したPCは、国内で1,000万台前後が、企業および家庭で稼働しているという。

一方で値上げが懸念

 好調な需要に対する懸念材料は、値上げの動きだ。

 現在、GPU向けのDRAM需要が急激に増加。PCやスマホ向けメモリやSSDの需給がひっ迫し、部品価格の上昇につながっており、海外の大手PCメーカーは相次いで、値上げの意向を示している。MM総研でも、「主要部品の値上げ状況や今後の値上げの見通しを踏まえると、2026 年度(2026年4月~2027年3月)は、PCの価格が、さらに10%以上、上昇することも想定される」と予測。「2026年は、好調な需要の反動と、値上げによる減速が懸念される」とした。

 また、生成AIの活用により、高価格帯のAI PCの需要が拡大。汎用PCであっても、メモリやSSDのほか、内蔵カメラやマイクの高性能化への要求などが高まっていることを指摘し、これも平均出荷単価の上昇の一因になるとみられる。

平均価格の推移(出典: MM総研)

 MM総研では、半期ごとの平均出荷単価の推移についても公表。2020年度下期を底に、右肩上がりで上昇を続け、2025年度上期は11万4,000円となった。2024年度下期の12万3,000円から大きく下落しているが、これは1台あたり5万5,000円の予算で整備が進められているGIGAスクール端末の需要が増大したことが影響しているためであり、それを除くと平均出荷単価の上昇傾向には変化がなさそうだ。

NECレノボの一人勝ち

 今回の調査では、メーカー別シェアも発表している。

 2025年度上期にトップシェアを獲得したのは、NECレノボ(レノボ・ジャパン、NECパーソナルコンピュータ)で、2024年度上期から7.7ポイントもシェアを高め、29.3%となった。出荷台数は283万台。上位6社の中では唯一シェアを上昇させており、一人勝ちの様相をみせている。MM総研では、「単価の高い企業向けや個人向けだけでなく、低価格帯のGIGAスクール端末にも注力し、幅広い価格帯の需要に応えたことがシェア拡大の要因」と分析している。

メーカー別シェア(出典: MM総研)

 2位は日本HPで、シェアは前年同期から1.8ポイント減の15.8%(出荷台数は152万5,000台)。3位は富士通クライアントコンピューティング(FCCL)で2.5ポイント減の10.5%(同101万3,000台)、4位がデル・テクノロジーズで4.0ポイント減の10.5%(同101万1,000台)、5位がDynabookで0.8ポイント減の9.6%(同92万5,000台)、6位がアップルで1.8ポイント減の4.8%(46万台)となった。

 個人向けPC市場全体では、前年同期比26%増の210万台。メーカー別シェアでは、NECレノボが前年同期比0.6ポイント増の20.0%(同41万9,000台)と首位を維持した。2位はFCCLで2.2ポイント増の17.0%(同35万6,000台)、3位がアップルで1.9ポイント減の16.9%(35万5,000台)、4位はデルで3.5ポイント増の10.0%(同20万9,000台)となった。

 FCCLとデルがシェアを拡大しており、「学生やモバイル需要への対応に加え、Web販路を中心に低価格帯の買い替え需要も捉えている」という。

出荷台数構成比(出典: MM総研)
個人向け出荷台数(出典: MM総研)

 MM総研では、個人向けPC市場では、法人向けと比較して、新たなOSへの更新対応が遅いことを指摘。サポートが終了した10月以降も買い替え需要が続く傾向があると見ている。また、今後のPC本体価格の上昇を懸念し、年末年始商戦では、値上げ前の駆け込み需要が続くとも予測した。

 法人向けPC市場全体は、前年同期比74%増の755万5,000台となった。メーカー別シェアでは、NECレノボが前年同期比9.5ポイント増の31.9%(同241万1,000台)となり、2位以下を大きく引き離した。2位は日本HPで2.9ポイント減の17.5%(同132万5,000台)、3位がデルで7.0ポイント減の10.6%(80万2,000台)、4位はDynabookで0.3ポイント減の10.6%(80万台)となった。

法人向け出荷台数(出典: MM総研)

 MM総研では、2025年度上期の出荷実績において、GIGAスクール端末が約200万台含まれていると推定。年度末に向けて、GIGAスクール端末の大型更新案件が見込まれるなど、需要はさらに加速すると予測しており、2025年度下期の出荷台数に占めるGIGAスクール端末の構成比はさらに高まる見通しだという。

国内生産比率が高まる

 一方、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、「電子情報産業の世界生産見通し」を発表。その中でPCの需要動向について明らかにした。ここでも、2025年の国内PC市場の好調ぶりが示されている。

 同調査は、2007年から実施しているもので、JEITA会員企業への調査に加えて、国内外の関連企業や団体の協力を得てまとめている。

 これによると、2025年のPCの世界生産額は前年比7%増の32兆6,664億円(2,195億ドル)になると見込んでいる。

世界のPC生産額推移(出典: JEITA)

 同協会では、「2025年は、Windows10のサポート終了に伴い、法人、個人ともに買い替え需要が高まり、市場が拡大した」と分析。その一方で、「今後は、AI機能を搭載したPCの普及が見込まれるほか、ITリモートをはじめとする仕事や教育プロセス強化のための急速なデジタル化の担い手として、スリムな外観や軽量化など、携帯性に優れたノート型PCの需要がある。だが、Windows10サポート終了による買い替え需要の反動で、2026年はマイナスに転じる」とみており、2026年のPCの世界生産額は、前年比1%減の32兆3,605億円と、前年割れを見込んでいる。

 2025年の世界生産額に占める日系企業の生産額は、前年比11%増の1兆5,122億円。全体の約5%となった。このうち、国内における生産額は前年比19%増の7,267億円、海外における生産額は同5%増の7,855億円。日系企業の国内生産比率は約48%となり、前年の45%から増加。国内生産が進展したことを裏づけた。

 「2025年は、Windows10サポート終了による買い替え需要の喚起や、GIGAスクール構想に基づく教育分野での需要増加が進んだ。また、小型軽量で、カメラや通信、セキュリティ機能を高めたノート型PCが支持されたことなどを背景に、2桁のプラス成長になる」とした。

 なお、2026年の世界生産額に占める日系企業の生産額は、前年比6%減の1兆4,219億円。全体の約4%と減少。このうち、国内における生産額は前年比3%減の7,021億円、海外における生産額は同8%減の7,198億円。日系企業の国内生産比率は約49%となり、市場全体は縮小するものの、国内生産比率が高まると見ている。

日系企業のシェア(出典: JEITA)
日系企業の生産額推移(出典: JEITA)