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マンガ海賊版サイトへの幇助でCloudflareに5億円の賠償判決。同社は「中立的サービス」を主張

 KADOKAWA、講談社、集英社、小学館がCloudflareに対して提起していた著作権侵害訴訟について、東京地裁は11月19日、Cloudflareの損害賠償責任を認める主旨の判決を言い渡した。4社は2022年、海賊版サイトにCDNサービスを提供していたCloudflareに対して、海賊版コンテンツの公衆送信・複製による出版権侵害行為の差し止めおよび損害賠償を請求する民事訴訟を提起していた。

 2022年に発表した4社共同の声明によれば、4社は複数の海賊版サイトへCDNサービスを提供していたCloudflareに対して。2018年以降、複数の海賊版サイトが違法に蔵置している侵害コンテンツの公衆送信の停止、キャッシュの削除、契約更新の停止を求めていた。

 Cloudflareからは「必要な措置を取った」と回答があったものの、具体的な説明がないまま、従前通り海賊版サイトが活動を続けている状況に至っていた。これを受けて、Cloudflareが依然として海賊版サイトにCDNサービスを提供している蓋然性が高いとして、海賊版サイトに掲載された各社コンテンツ計4作品の被害総額約56億円の一部である4億6,000万円について損害賠償を求める訴訟に踏み切った。

 今回の判決では、Cloudflareが4社からの侵害通知を受けながら適時適切な対応を行なわず、漫然とサービスの提供を継続したとし、これが著作権侵害の幇助に当たるとして、損害賠償責任を負う旨が認められた。11月19日の4社共同声明によると、海賊版サイトに掲載された侵害コンテンツについて判決で認定された被害総額は約36億円。判決主文においてはCloudflareに対して合計約5億円の支払いが命じられている。

 一方、Cloudflareが報道機関向けに発表した声明によれば、CloudflareのCDNは中立的なパススルーサービスであり、自社がホスティングしていないコンテンツを制御したり、削除したりすることはできないと主張している。さらに、今回の判決はインターネットの成長を支えてきた責任制限を取り除くことになり、世界的に問題のある先例となると指摘。日本だけでなく世界中のインターネットの効率、セキュリティ、信頼性に深刻な影響を及ぼす可能性があるとし、オープンで安全なインターネットに不可欠である責任制限の存続を求めて控訴する予定だとしている。

 原告の集英社は、自社が公開した共同声明の前文にて「海賊版サイト対策において画期的な判決」と評価しており、作者が心血注いで創作したコンテンツを預かり、適正な形で流通させるという出版社の役割を果たすため、引き続き侵害行為に対しては刑事・民事含め厳正に対処していく意向を示している。