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ごみ火災をAIで防ぐ。PFUのリチウム電池検知AIが実用段階へ

Raptor VISION BATTERYを組み込んだ「LiB検知システム」

 PFUは10月31日、資源ごみに混入したリチウムイオン電池を検知するごみ処理施設向けAIエンジン「Raptor VISION BATTERY」の提供開始を発表した。

 Raptor VISIONは、廃棄物の分別に特化したAIエンジン。廃棄物ラインをX線撮影し、特定の物体に特有の形状を識別/検知するとアラートを出すことができる。2024年にガラスビンの識別に対応した「Raptor VISION BOTTLE」が発表済みで、Raptor VISION BATTERYはリチウムイオン電池に特化した第2弾。技術自体は2月に発表している。

 同日、IHI検査計測がコンベアとX線検査装置からなる「LiB検知システム」を発表しており、このシステムがRaptor VISION BATTERYを採用した最初の製品となる。LiB検知システムでは、投入したゴミ袋を水平/垂直の2方向から撮影し、袋の内部にリチウムイオン電池を検知するとアラート音を発する。コンベア出口にはモニターとプロジェクタを設置し、リチウムイオン電池の検知箇所をプロジェクションマッピングで赤枠強調表示することで、すばやく除去しやすくなっている。飛行場の手荷物検査場のようなイメージだ。システムの価格帯は、X線撮影方向が1方向のシステムで6,000万円から。X線撮影方向が水平/垂直の両方に対応すると6,500万円から。

LiB検知システムの概要
導入イメージ
リチウムイオン電池を混入させた資源ごみを投入する
電池を検知するとアラート音を発する
袋を開けてリチウムイオン電池搭載デバイスを除去したところ
右側のモニターと上部のプロジェクタから該当する資源ごみを強調表示する
検知画面
垂直/水平方向からX線撮影した映像を表示する
該当する袋をプロジェクションマッピングで表示したところ(PFU提供)

 環境省の発表によれば、廃棄物処理施設においてリチウムイオン電池に起因する発煙/発火事故は年間2万件を超えており、被害額は約96~108億円に達する。PFUではこうした状況を受けて、リチウムイオン電池の検知に特化した画像認識システムの開発に着手したという。人の手で除去する必要がある点に変わりはないが、検知の精度を上げることで事故発生率の低下が見込めるとしている。

 Raptor VISION BATTERYでは樹脂や紙などの有機物、ガラスやアルミなどの中間物、鉄などの無機物を識別し、独自開発のAIアルゴリズムでリチウムイオン電池の検知を試みる。製品形状ではなく、製品に搭載している電池の形状をAIに学習させ、資源ごみに混入したリチウムイオン電池を検知する。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)と共同で行なった実証実験では94%の検知率を達成したという。検知率については、クラウド連携によって実物の画像データを再度学習させることで検知精度の維持/向上を図る。

 検知対象のバッテリは角形、パウチ型、円筒型、乾電池型など。ワイヤレスイヤフォン内蔵電池など極端に小さなバッテリについては火災リスクが低いため検知対象外としている(イヤフォンの充電ケースは検知可能)。今後のアップデートで不燃ごみへの対応や、その他の危険物についても検知対応を進めるとしている。

クラウド再学習システムの概要

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