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その昔、ミニPCと言えばECSの「LIVA」だけど今はどうしてる?

ECSのEOGのデモ。中央のPCの画面に、EOGでつながれた左右の2台のPCの画面が映っていることが分かる

 今、「ミニPC」は弊誌の読者にとってすっかりお馴染みのジャンルの1つだ。そもそも発祥はいつだったのか筆者も記憶が曖昧なので恐縮だが、イーレッツが2003年に投入した「Be Silent」辺りから少しずつ地位を築いてきたように思う。その後2010年にZOTACが「ZBOX」を投入したタイミングでコンシューマ製品としての完成度が高まり、Intelが2012年末に投入したベアボーンの「NUC」でミニPCの知名度がさらに広がった。

 そうした流れの中で、ECSが2014年に投入した「LIVA」も、ミニPCの普及に貢献した製品のうちの1つ。当時、Intelの低価格プロセッサAtomに採用されたBay Trailアーキテクチャは、小型/省電力/高性能であり、それまでのAtomが遅いというイメージを払拭。同時に当時大流行したWebブラウザゲーム「艦隊これくしょん-艦これ-」がぼちぼち動くことから、Atom搭載のWindowsタブレットとともに艦これプレイデバイスとして一定の地位を得た。

 その後ECSは精力的にLIVAシリーズを投入し続けたが、近年は中国のメーカーが矢継ぎ早に高性能ミニPCを投入していることもあり、鳴りを潜めている感じがあるのは否定できない。

 実はそれもそのはずで、LIVAシリーズは今、個人よりも法人や個人事業主に注力しているからだ。その「武器」とも言える機能が、2026年に投入する予定の「EoG」であるという。ECSは千葉・幕張メッセで開催中の大型展示会Japan IT Week 秋 2025のリンクスインターナショナルブースの一角で展示があるのだが、そこでEoGのデモが行なわれている。

リンクスインターナショナルのブース
EOG内蔵PCのプロトタイプ
こちらはEOGの外付けユニットだが、販売当初は別売りの予定がなく、あくまでも組み込まれた状態で販売するとのこと

 EOGはいわばIPベースのKVM機能である。つまり、ネットワークを通じてキーボード/マウス/モニター信号を流し、リモートでWebブラウザ上などからそのPCを操作するできるようにする機能だ。

 いわばリモートデスクトップのようなイメージだが、リモートデスクトップはOSが起動しないと操作できないのに対し、EOGは電源オフの状態から電源を投入し、BIOS画面も含めて操作できるのが大きな違いとなる。手元の環境にあるISOファイルをマウントしてリモートで使う、リモートのBIOS更新作業をする……といったことも可能なため、管理性が桁違いである。

EOGのパンフレットを配布している。いわばIPベースのKVM機能だ
将来的にはこういったミニPC自身にEOGを組み込む

 「な~んだ、Intel vProとかAMD DASHみたいな機能か……」と思われるかもしれないが、vProおよびDASHは対応BIOSが必要だったり、管理側の専用ソフトウェアが必要だったり、Windowsに限定されていたりとさまざまな制限があり、また対応デバイスが高価になりがちだった。

 EOGは独立したシステムとして、ECSのミニPC内に組み込まれることでこうした制限を回避し、アクセスもWebブラウザから行なえるため、スマートフォンなどでも操作できる。ちなみに追加コストは50ドル以下になる見込みだ。

 ズバリ同様の単体デバイスとして「NanoKVM」があるが、ユーザー自身がケーブルを接続する手間が増えるため大量導入には向かない。EOGはシステムとともに組み込まれた状態で提供され、1つのアカウントで100台管理できるのがウリとなっている。

 このように、EOGはデジタルサイネージのように普段アクセスしにくいところにミニPCを設置する場合のみならず、遠隔(それこそ海外)に置いたPCを管理したい管理者にとって有力な機能だ。今後、意外なところでECSのミニPCを見かける機会が増えるのかもしれない。