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富士通とNVIDIAが協業拡大。ジェンスン・フアンCEO「日本の産業と人々のために」

富士通の時田隆仁氏(左)とNVIDIAのジェンスン・フアン氏(右)

 富士通は10月3日、NVIDIAとの戦略的協業の拡大を発表した。協業により、ヘルスケア、製造、ロボティクスなどの領域に特化した産業向けAIエージェントプラットフォームと、NVLink Fusionを介して富士通のCPU「FUJITSU-MONAKA」とNVIDIAのGPUをシームレスに接続するAIコンピューティングの基盤を共同で開発し提供する。

 今回は提携は、富士通のCPUにNVLinkを組み込み、NVIDIAのGPUをシームレスに統合するというすでに発表済みの取り組みに加え、自律的に学習して進化するAIエージェントを開発し、AI産業革命を加速するフルスタックAIインフラストラクチャの実現を目指す。これにより、日本の産業変革、および社会の隅々までのAIの浸透を図り、全産業の競争力向上、持続可能な社会の実現を牽引するとしている。

 同日、都内で開かれた記者会見では、富士通代表取締役社長CEOの時田隆仁氏が挨拶。NVIDIAと協業拡大に至った背景について「富士通は1935年の創業から今年(2025年)で90周年を迎え、時代や人々のニーズに合わせて提供するものを変えてきたが、技術は人に寄り添うという根源の思いは変えずに進化してきた。

時田隆仁氏
富士通の技術やそれが支える社会

 今は、AIが飛躍的に進化し、これまで解決できなかったような問題に対し、予測やシミュレーションを介して解決できるようになってきたものの、その生成AIが効果を発揮し、企業や社会で実装されていくためには、それを支えるインフラが必要である。そのAIのインフラをNVIDIAと協業して開発/提供していくのが狙い」だと語った。

 富士通は既に5月の時点で、同社製CPU「FUJITSU-MONAKA」とNVIDIAのGPUを、NVLink Fusionを介して接続することを発表しているが、こうしたコンピューティングの提供のみならず、自律的に学習して進化するAIソリューション「Kozuchi」を、NVIDIAのフレームワーク「Dynamo」やプラットフォーム「NeMo」、プログラミングモデル「CUDA」と連携させていく。

 また、安川電機のAIロボティクス技術と組み合わせ、自律型ロボットにより、ヘルスケアや金融、行政といった幅広い業界における産業革新を実現していく。さらに量子コンピュータ分野でも連携を高め、数兆円規模の市場展開を目指すとしている。

協業の具体的な内容について解説した執行役員副社長CTOのヴィヴェック・マハジャン氏
協業の狙い
プラットフォーム開発、自世代コンピューティング基盤のみならず、カスタマーエンゲージメントについても協業で高めていく
自律的に学習して進化するAIソリューション「Kozuchi」とNVIDIAのNeMoやDynamoなどと連携/統合
自律進化するAI開発環境のワンストップの提供
両社の狙い
AIロボティクスの提供
量子コンピュータにおける協業

 発表会にはゲストとしてNVIDIA CEOのジェンスン・フアン氏も招かれた。フアン氏は「NVIDIA創立後、セガは我々の初期投資パートナーとなった。ソニーのPlayStation 3でNVIDIAの名前が世間に知れ渡った。また、Nintendo Switchや東工大のTSUBAME、富士通最先端のスパコンなどもNVIDIA GPUを採用している」などと語り、日本企業はこれまでNVIDIAに多くの投資をしている親密な関係にある仲だと紹介。

ジェンスン・フアンCEO

 そして今回の提携拡大について、「富士通は全世界に11万3,000人ほどの従業員を抱えている偉大な企業で、さまざまな業種の中に入って、その問題を解決している。日本では高齢化に伴う人手不足といった社会問題があるが、AIエージェントやロボティクスによってそれらの問題を解決していき、新たな経済成長のための機会を創出していきたい。日本の人々、日本の社会のためのAIインフラを構築していきたい」などと語った。