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AMD、55TOPSのNPUを採用した企業向け「Ryzen AI PRO 300」
2024年10月11日 03:00
米AMDは10月10日(現地時間)、企業向けのCPUとなる「Ryzen AI PRO 300シリーズ プロセッサ」(以下Ryzen AI PRO 300)を発表した。これは昨年(2023年)に発表された「AMD Ryzen PRO 8040 シリーズ プロセッサ」(以下Ryzen PRO 8040)の後継製品に位置づけられる製品となる。
基本的なスペックは一般消費者向けのRyzen AI 300と同等だが、NPUの性能が55TOPSと標準品の50TOPSを上回るSKUが用意されていることが特徴。なお、40TOPS以上のNPUというCopilot+ PCの要件を満たしており、Copilot+ PCに対応することが可能(x86版のCopilot+ PCアプリケーションは11月から配布予定)。
また、企業向けのハードウェア機能となるAMD PROにも、クラウドベースのベアメタルリカバリなどの機能が追加されており、企業の情報システム担当者などがビジネスPCのリモート管理をよりやりやすくなる仕組みが採用されている。
最上位SKU「Ryzen AI 9 HX PRO 375」は55TOPSを実現、従来モデルからCPUやGPUも大きく強化
今回発表されたRyzen AI PRO 300は、7月に発表された一般消費者向けのRyzen AI 300の企業/ビジネスPC向けのバージョンになる。開発コードネームは同じ「Strix Point」で、そのPRO(AMDの企業向け製品にはPROブランドがつけられる)版という扱いになる。このため、アーキテクチャや製品の特徴などにRyzen AI 300と基本的に同じになる。
Ryzen AI 300との大きな違いは、最上位SKUでのNPU性能にある。Ryzen AI 300では、一般向けのSKUではすべてNPUの性能が50TOPSに設定されている。唯一の例外は「HP OmniBook Ultra 14-inch Next Gen AI PC」に搭載されているRyzen AI 300で、AMDとHPのコラボレーションによる特別版で、55TOPSになっている製品が存在した。
それに対して、Ryzen AI PRO 300では、最上位SKUとなる「Ryzen AI 9 HX PRO 375」のNPUが55TOPSに設定されており、HP以外のOEMメーカーも含めてこの55TOPSのSKUを選択することが可能になっている。
CPUコア数 | CPUスレッド数 | ブースト時最大クロック | キャッシュ総量 | NPU性能 | GPU | |
---|---|---|---|---|---|---|
Ryzen AI 9 HX PRO 375 | 12(4+8) | 24 | 5.1GHz | 36MB | 55TOPS | Radeon 890M graphics |
Ryzen AI 9 HX PRO 370 | 12(4+8) | 24 | 5.1GHz | 36MB | 50TOPS | Radeon 890M graphics |
Ryzen AI 7 PRO 360 | 8(4+4) | 16 | 5GHz | 24MB | 50TOPS | Radeon 880M graphics |
なお、従来モデルとなるRyzen PRO 8040との比較では、CPUが12コアに強化されていること、内蔵されているGPUが12CU(Compute Unit)から16CUに増やされていること、さらにNPUの性能が最大16TOPSから最大55TOPSへと強化されていることなどが強化ポイントとなる。
AMD Ryzen PRO 8040 | AMD Ryzen AI PRO 300 | |
---|---|---|
開発コードネーム | Hawk Point | Strix Point |
CPUコア | Zen 4 | Zen 5/Zen 5c |
CPUコア/スレッド数 | 最大8C/16T | 最大12C/24T |
最大キャッシュサイズ | 24MB | 36MB |
グラフィックスアーキテクチャ | RDNA 3 | RDNA 3.5 |
NPUアーキテクチャ | XDNA | XDNA 2 |
NPU性能 | 最大16TOPS | 最大55TOPS |
TDP | 15~54W | 15~54W |
AMDによればRyzen AI PRO 300を搭載したシステムは10月から出荷開始される計画で、最終的には100を超えるシステムが出荷される計画だと言うことだ。
AMD PROもクラウドベースのベアメタルリカバリなどの新機能を搭載
AMDの企業向け製品は、「AMD PRO」と呼ばれているハードウェアセキュリティ機能や、企業向けの管理機能が搭載されている。「DASH」と呼ばれる業界標準の管理機能に対応しているほか、AMD独自の拡張も加えられており、別途配布されているAMDの管理用ソフトウェアやDASH対応サードパーティソフトウェアと組み合わせることで、リモート環境にあるデバイスを効率よく管理できる。
AMDは世代ごとにこの機能を追加している状況で、前モデルとなるRyzen PRO 7040(およびそのリフレッシュ版となるRyzen PRO 8040)ではクラウドベースのリモート管理性が追加している。それによりファイアウオールの内側にないPCでも管理することが可能になる。
今回のRyzen AI PRO 300では、Cloud Bare Metal Recovery(cBMR)、Supply Chain Security、Watch Dog Timerの3つの機能を追加している。
cBMRは、OS起動前の環境でクラウドからファイルをダウンロードしてPCのリカバリを実現する機能でより容易なリカバリ環境が実現できる。Supply Chain Securityは、OEMメーカーのサプライチェーンの中でAMDのCPUがどのように使われているかなどのトレーサビリティを実現する。Watch Dog Timerは、CPUなどがハングアップしていないかを監視する機能で、ハングアップしていたら自動で復旧するようにするなどの機能を実現する。