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Raspberry Pi Ltdがロンドン証券取引所で新規株式公開へ

 Raspberry Pi Foundation(Raspberry Pi財団)は去る5月22日(英国時間)、子会社であるRaspberry Pi Ltdをロンドン証券取引所のメイン市場に新規株式公開(IPO)として上場させる予定であることを発表した。

 よく混同されるRaspberry Pi財団とRaspberry Pi Ltdとの関係だが、これについて財団の最高経営責任者であるフィリップ・コリガン氏が、28日のブログで改めてそれを整理するとともに、Raspberry Pi Ltdを上場させる意図について解説した。

 Raspberry Pi財団は、イギリスを拠点とする教育慈善団体として2008年に設立された。共同創設者らは、コンピュータサイエンスとエンジニアリングを学ぶことを選択する子どもたちの数と多様性の両方を増やすことを目標に掲げてきた。

 当初のアイデアは、「BBC Micro」や「ZX Spectrum」といったプラットフォームによってパーソナルコンピューティング革命が始まった時と同様、若者の心に巻き起こった興奮を呼び起こすことができる低コストでプログラム可能なコンピュータを作ることだった。

 一方、Raspberry Pi Ltdはこの財団の商業的な子会社として設立され、Raspberry Piと関連技術の設計/製造/配布といった事業を展開。その資産に関してはRaspberry Pi財団が100%所有しているが、こうした「慈善団体が商業活動をする子会社を持つ」スタイルは、イギリスとしてはかなり一般的だという。

 そのRaspberry Pi Ltdは、2012年に最初のRaspberry Piを投入して以来、革新を続けており、全世界で産業用/組み込み用/エンスージアスト/教育向けの高性能シングルボードコンピュータ(SBC)の製造や関連技術を持つ大手プロバイダーへと進化した。

 Raspberry Pi財団にとって、このRaspberry Piは「世界トップクラスのエンジニアや科学者が使用しているものと同じプラットフォームで、子どもたちがコーディングを学べること」こそが重要な点であり、世界中の学校で使われているカリキュラムや教室リソースを作成し、完全に無料で提供してきた。ただ、それはデバイスやプラットフォームに依存しておらず、つまり財団が提供する学習体験やリソースに参加するためにRaspberry Piそのものを利用する必要性はないという。

 今回のIPOの提案は、Raspberry Pi財団とRaspberry Pi Ltdの両方が次なる成長を遂げるのに必要なものだという。これまでRaspberry Pi Ltdで得られた利益のうち、約5,000万ドルが財団に寄付され、慈善事業/スポンサーシップ/教育サービス契約から得られる6,000万ドルを超える資金と合わせて、教育ミッションの推進に使われてきたという。

 しかし、さらなるイノベーションや製品開発といった成長には、さらなる投資や運転資金が必要。これまでは留保利益から賄われてきたが、IPOの新株発行を通じて追加の資本を調達できれば、より広範囲に大きな影響をもたらし、株主や財団に対しより多くの利益を生み出せるようになると期待している。

 また、財団側としては、これまでの利益の一部を資金を受け取る代わりに、株式の一部を基金に変換する形で、教育プログラムの資金として使用。主要株主としてRaspberry Piブランドを共有し続け、ほかの株主と同じ基準で意思決定に関与しながら、コンピューティングを誰もが利用しやすく手頃な価格にする使命を可能な限り達成できるよう、Raspberry Pi Ltdを支援するとしている。