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欧州委員会、音楽ストリーミング独禁法違反でAppleに約2,938億円の制裁金。Appleは「Spotifyが最大の受益者」と非難

 欧州委員会(European Commission:EC)は3月4日、AppleがiPhoneおよびiPadユーザーに音楽ストリーミングアプリを配信するという支配的地位を乱用したとして、18億ユーロ(約2,938億円)もの制裁金を課したと発表した。

 ECによれば、Appleは音楽ストリーミングアプリ開発者、およびiOSユーザーに対し、アプリ外で利用できる代替の安価な音楽サブスクリプションが可能なことを十分に通知せず、また、そのような指示をアプリ内で提供することを禁止しているという。

 特に、アプリのアンチステアリング規定により、以下のようなことがアプリ内で禁止されていることが、不公平な取引条件に違反するという。

  • アプリ外/ネット経由で契約できるサブスクリプションオファー価格の通知
  • アプリ内購入とアプリ外購入の価格差の通知
  • 開発者のWebサイトへの誘導、代替サブスクリプションを購入できるリンクをアプリ内に含めることが不可能。また、アカウント設定後に新たに獲得したユーザーに電子メールで連絡して別の価格オプションを通知することを禁止

 ECはAppleのこうした行為によって、ユーザーはApp Store経由で購入する必要があり、結果としてサブスクリプションの価格に転嫁し、iOSユーザーは音楽ストリーミングサブスクリプションにかなり高額な料金を支払うことになった可能性があると指摘している。

 今回の罰金は、Appleの総売上高、時価総額に加え、違反期間やことの重大性を評価した上で、違反のかなりの部分が非金銭的な損害であり、従来の罰金ガイドラインに定められた収益ベースの方法論では説明できないため、罰金が抑止力となるよう、合計18億ユーロに上る追加の制裁を行なうという。

Apple「最大の受益者はSpotify」

 こうした一連のECの決断に対し、Appleは「最大の受益者はスウェーデンのストックホルムに拠点を置くSpotifyである」と声明を発表。Spotifyはヨーロッパにおける音楽ストリーミング市場で56%と競合の2倍以上のシェアを誇るが、そのベースがApp Storeであるとした上で、「Spotifyは無料アプリのためAppleに何も支払っておらず、ストリーミングのサブスクリプションはWebサイトで行なっている」と指摘した。

 SpotifyはAppleデバイス上で1,190億回ダウンロード/再ダウンロード/更新されているほか、AppleのエンジニアリングによりSiriやCarPlay、Apple Watch、AirPlay、ウィジェットなどとシームレスに連携。25万を超えるAPIにアクセスでき、60のフレームワークを使用してさまざまな機能を実現している。また、ベータテストを介した新機能の実験や、過去421バージョンに渡るレビューや承認をほとんど即日で審査完了させているなど、多くの協力を行なっている。

 そうしたSpotifyの機能をシームレスで正常に機能させるようなエンジニアリングを日々行なってきたのにもかかわらず、「SpotifyはAppleに何も支払っていない」とし、「“Spotifyにとって”無料なだけでは不十分で、App Storeのルールを自分たちにさらに有利な方法で書き換えたいと考えている」として強く非難。そのうえでECと協力し、根拠のない調査を始めたとしている。

 このためAppleはECの決断を尊重する一方で、事実はこの決定を裏付けるものではなく、不服とし控訴するとしている。