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カシオ、C.ベヒシュタインと共同開発した電子ピアノ

AP-750BK

 カシオ計算機株式会社は、ドイツのピアノ製造会社であるC.ベヒシュタインと共同開発した電子ピアノ「AP-750BK」を2月9日に発売する。価格はオープンプライスで、実売予想価格は22万円前後の見込み。

 電子ピアノとしてはミドルレンジの価格帯でありながら、フラグシップモデル(GP-510BP)に採用されている「AiR Grand音源」を搭載。「ベルリン・グランド」、「ハンブルク・グランド」、「ウィーン・グランド」の3つの音色で、プレイする曲や気分に合わせて音色を変更できる。このうちベルリン・グランドはC.ベヒシュタイン共同開発で、本体手前にも「C.BECHSTEIN」の銘板があしらわれている。

 このほかにも、ソナタやエチュードなど、ピアノ曲の模式やジャンルに適した10種類のピアノ音色を内蔵する。

 音響面では、自然で臨場感のある響き実現する4チャンネル/8スピーカーのシステムを採用。グランドピアノ特有の機構音も再現する「アコースティックシミュレーター」も搭載する。鍵盤の上部には、新たに「ビジュアルインフォメーションバー」を搭載し、LEDを使って弾いた際の音の強弱を表現。自他ともに視覚的にその強弱を確認できるようになった。

AP-750BK
4チャンネル8スピーカーによる立体感と臨場感
グランドピアノの機構音なども再現したアコースティックシミュレーター
音源技術
ベルリン・グランドはC.ベヒシュタインと共同開発
鍵盤の物理機構
鍵盤の動きから音を忠実に再現するシステム

 鍵盤は、スプルース材と樹脂のハイブリッド構造を採用した白鍵や、カウンターウェイトを搭載し軽いタッチでも滑らかで安定した弾き心地を実現するアクション機構、打鍵の強さによって異なる発音タイミングも表現する「ハンマーレスポンス」や、離鍵の際の速さによって響き方を変える「キーオフシミュレーター」などを取り入れた。さらに、ダンパーペダルはすべて連続可変式となり、踏み込み量によって効果が変化するようになった。

AP-750のペダルは連続可変に

 このほか機能面では、常時録音を行ない、過去270秒まですぐに振り返りできる「インスタントリプレイヤー」を備える。また、スマートフォンやタブレットと連携でき、本体設定や曲/楽譜データを収録したアプリ「CASIO MUSIC SPACE」に対応する。

 本体サイズは1,401×440×929mm、重量は53.6kg。

設置イメージ
利用イメージ
操作パネルは前面
LEDで音量やメトロノームなどを示すビジュアルインフォメーションバー
発表会で展示されたAP-750BK
天板が少し開くようになっている
C.BECHSTEINのプレート
連続可変式になったダンパーペダル

 このほか、音源を「マルチ・ディメンショナル・モーフィングAiR」に変更し、スピーカーを2基にするなど低価格したモデル「AP-550BK/BN/WE」シリーズ(実売予想価格18万円前後)を2月9日、奥行きを299mmに抑えてスタイリッシュさを追求したモデル「AP-S450BN/WE」を2月22日に発売する。

AP-550BK
AP-550BN
AP-550WE
AP-S450BN
AP-S450WE

音楽人口の拡大に貢献へ

 発表に先立って行なわれた製品発表会の冒頭で、同社執行役員 国内営業統括部 統括部長の川合義宣氏が挨拶。「カシオは1980年に投入した『Casiotone201』以来の40年間、音楽人口の拡大に向け、電子ピアノ事業に取り組んできた。その中でも高いピアノクオリティや洗練されたデザイン、独自の機能に注力してきた。新モデルでは、さらなるユーザーの拡大を狙いたい」などと語った。

川合義宣氏
音楽人口拡大への貢献

 サウンドBU グローバル戦略部 部長の松田貴生氏は、「カシオは過去の製品で、新しい楽器の楽しみ方を提案し、それによりユーザー拡大を目指してきたが、その取り組みは楽器店などから評価もされている。電子ピアノについてはデジタルならではの提案を行ない、2015年にはフラグシップモデルも投入し、グランドピアノを研究し尽くして開発した。

 新製品では、ピアノの練習を自分でペースで取り組め、演奏時は高いレベルで満足できるところを徹底的に追求した。AP-750BKはクラシックシリーズの最高峰として、独自の音響システムでクラシックピアノを堪能できる音源を搭載したり、ビジュアルインフォメーションバーによる音楽の再発見をしてもらえるよう工夫をした。一方AP-550シリーズは上位と同じ表現力、AP-450はAP-550に近い性能をよりスタイリッシュに実現した。

松田貴生氏
販売店などから厚い支持を得ているカシオの電子ピアノ

 現代において、住環境が課題(集合住宅では音を出す楽器が使える時間が限られ、設置スペースの問題など)となる中、電子ピアノならではのメリットを訴求していきたい」などと語った。

 発表会には、ピアニストの鐵百合奈さん、大阪音楽大学 赤松林太郎准教授もゲストとして登壇し、AP-750での演奏を交えながら製品を紹介。鐵さんは「タッチが良く、思った音を引き出してくれるようなタッチ。ペダルも踏み込み量によって音が変化し、アナログな部分も残している」とコメント、一方で、「もう少しアコースティックピアノのような“適当さ”が実現できたらいいな」と、開発陣に難しい宿題を残した。

 赤松氏は「(特に日本の)音楽教育現場を見ると、まだまだアコースティックピアノが多いと思うが、現代的な住環境も考慮すると電子ピアノのほうが現実的。また、電子ピアノは、調律をしなくても安定した音色を奏でられるのがメリットで、教育用としては有望。今の時代はピアノが生まれたバッハの時代から大きく変化し、楽器も時代に沿って変化している。音楽は形から入っていくのではなく、心からそうしたい(深夜などでもピアノを弾きたい)ほうが重要。それを実現してくれるのが電子楽器の魅力」だと語った。

 また、AP-750の特徴については、これまで実現できなかったキーオフシミュレーターによる余韻の変化、複数の音色による幅広い表現力で、かなりのポテンシャルを感じたという。さらに、ビジュアルインフォメーションバーにより、生徒とのコミュニケーションも潤滑になり、客観性を高められる機能だと語った。

鐵百合奈さん(左)と赤松林太郎准教授(右)
鐵百合奈さん
赤松林太郎氏
鐵百合奈さんの試奏。ドビュッシーの月の光を披露
赤松林太郎氏は革命のエチュードを試弾