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Microsoft、AI活用でリチウム含有率削減した新バッテリ開発
2024年1月10日 01:00
米Microsoftは9日(現地時間)、同社の量子コンピュータサービスやHPCサービスなどの計算リソースと、AIを組み合わせることで、リチウムイオン含有率を70%削減した新しいバッテリを実現するための候補技術の絞り込みに成功したと発表した。研究は、米パシフィック・ノースウェスト国立研究所(以下PNNL)と共同で行なわれた。
今回の研究成果は、同社のクラウド事業(Microsoft Cloud)経由で提供されている量子コンピュータサービス「Azure Quantum Elements」、HPCサービス「Microsoft Azure HPC」などの計算リソースと、MicrosoftのAI技術を組み合わせて活用することで、膨大な材料や素材の候補の中から有望なものを絞り込み、最終的にリチウムイオン電池のリチウム含有量を70%削減することに成功したというものだ。
今回MicrosoftとPNNLは、まず量子コンピュータとAIを利用して、3,200万の候補の中から50万に、次にHPCを利用して離散フーリエ変換計算を行なって800に、さらに分子動力学法シミュレーションを利用して150に絞り込んだ。その中から研究者の知見を盛り込んだAIにより上位18の候補に絞り込みが行なわれた。ここまでわずか80時間で辿り着くことができたという。
そこからPNNLの研究者が最上位のものを選び、実際に実証実験が行なわれた。絞り込まれた素材は、稀少な素材であるリチウムの一部を、ありふれた化合物であるナトリウムに置きかえたもので、リチウムイオン電池のリチウム含有率を70%も削減できたという。PNNLの研究チームはさまざまな温度下で実証実験を行ない、実際に電球に電力を供給し、動作させることができたという。
化学や材料科学の分野において、膨大な素材の中から、有望な素材を選ぶというのは非常に時間がかかる研究作業になる。その時間を大幅に短縮することができれば、化学や材料科学の研究が飛躍的に進化する可能性を秘めている。
また、将来的にはこうした成果を化学、材料科学だけでなく、製薬など同じく化学物質の研究に膨大な時間がかかるものに役立てていける可能性があると考えられ、化学・科学などの発展に大きく寄与する重要な発表だと言えるだろう。