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世界初水冷ゲーミングノート「Legion 9i」の中身

Legion 9i

 Lenovoはシンガポールで7日(現地時間)にアジアパシフィック地域のメディアを対象とした記者説明会を開催し、この中で世界初を謳う水冷採用のゲーミングノート「Legion 9i」を発表。会場ではその実機とともに、分解モデルも展示されたので簡単にご紹介したい。

 外付けの水冷ユニットを後からオプション搭載できるゲーミングノートであれば、ASUSやマウスコンピューターで既に前例がある。一方本体内の内循環だけで水冷を実現したノートPCなら、日立が20年以上前に投入済みだ。よってLegion 9iは「本体内だけで水冷システムが完成された」(ASUSやマウスコンピューターは外付け)、「ゲーミングノート」(日立の製品はゲーミングではなかった)という2つの条件を満たしての“世界初”である。

 もっとも、Legion 9iが水冷を搭載した理由として、「薄型軽量で高性能を両立させるための手段」として挙げている点が、これまでの製品とは異なる。たとえばASUSとマウスコンピューターの例では、主に性能向上(オーバークロック)や性能安定性向上(熱によってサーマルスロットリングを起こさない)ためだし、日立や富士通の例では「静音化のため」であって、本体そのものはそこそこの厚みがあり重量級だった。

【表】水冷搭載のノートPCたち
メーカー製品名GPU厚さ重量
日立製作所 FLORA 270WサイレントモデルMOBILITY RADEON 7500(16MB)46mm3.75kg
富士通 FMV-BIBLO NWIntel GM45 Express内蔵GPU36.9~49.4mm3.4kg
ASUS ROG GX700VOGeForce GTX 98033~35mm3.6kg
マウスコンピューター G-Tune H5-LCGeForce RTX 3070 Ti28mm2.27kg
LenovoLegion 9iGeForce RTX 4080/409018.99~22.7mm2.4~2.5kg

 その一方でLegion 9iは、CPU/GPUが持つ最高性能を引き出せる230W以上の冷却能力を実現しつつ、それを18.99~22.7mmの薄さ、そして重量2.4kgという筐体に抑えるために、水冷を利用している。

 ここまで書くと「なんだか日立や富士通より凄そうな本格水冷システムが入っている」と思われがちだが、分解モデルで確認したところ、GPUの周りをぐるっと銅製の水冷パイプが一周し、終端に約30mm四方程度のマイクロポンプがくっついているという、ビックリするほどあっさりとしたものだった。

展示された分解モデル。各層は手に持って取り出せる
Legion 9iの冷却モジュール
冷却モジュールのCPU/GPU接合側

 この水冷で何を冷やしているのかというと、主にビデオメモリだ。水冷パイプが明らかにその上を通っているので間違いないだろう。実はGDDR6メモリも度重なる高速化や大容量化によってその温度が課題になってきている。この最小限の水冷システムは、その発熱に対処したと考えるのが妥当だろう。

GPUメモリ上をぐるっと一周する水冷
マイクロポンプ

 ただ、Legion 9iの冷却の工夫は水冷だけではない。一般的なゲーミングノートで当たり前な2基の大型ファンに加え、その水路で得た熱やチップセットを逃がすためと思われる“第3のファン”、2つおきにブレードをリング状の外側から途中まで伸ばしただけのファンブレードなど、さまざまな考察や工夫の跡がみられる。

 同社は冷却についてCooler Masterと協力しているというが、このあたりはさすが冷却技術に長け、さまざまなチャレンジを行なっているCooler Masterだけのことはある。

冷却ファンのブレードにも工夫が

 Lenovo 9iではこのほか、カーボンの天板やマグネシウム合金のシャーシなど、薄型化をしながらも堅牢性を損なわないような設計も施されている。つまり、同社のさまざまな技術を集大成させた、フラグシップのゲーミングノートに仕上がっているのだ。

カーボンで独特のテクスチャの天板
本体右側面
本体左側面
キーボード
カーソルキーが大型で操作しやすい
CPU部
GPU部
Lenovoのロゴが入った、CPU/GPUの性能を引き出すためのAIチップ
GPUの電源VRM部