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無線充電で位置合わせが不要になる新技術。九州大

 九州大学は26日、無線電力伝送(WPT)の効率を維持したまま、伝送距離を最大300%伸長する技術を開発したと発表した。同大学院システム情報科学研究院のRamesh Pokharel教授とMohamed Aboualalaa外国人特別研究員らの研究グループによる成果。

 従来型のWPTシステムは、小型化を行なった際に伝送効率が低下し、効果的な伝送はごく短距離に限られるという問題があった。加えて、送受信機の位置がずれていると充電できなくなるアラインメントの問題も顕著になってきた。今回、無線電力伝送システムの送受信機間に新規開発のメタサーフェスを用いることで、伝送距離を伸長した。

 メタサーフェスは、ナノスケールの微細構造によって自然界に存在する物質ではありえない特性を得る物質。本研究では小型化したWPTシステムの伝送効率および伝送距離の向上を目的としてメタサーフェスの設計を行ない、透磁率の高い人工誘電体を開発。送受信機間の磁場を制御することによって伝送品質を向上した。

 本研究では送受信機間の距離を40mmに設定し、メタサーフェスの有無で伝送効率を比較。メタサーフェスなしでは8%のだった効率が、78%まで向上したという。また、この技術の応用により、送受信機の位置ズレによる伝送効率の低下も大幅に改善されたという。

 同学では本技術の利用によって、受信機の位置に依存しないWPTシステムの開発が可能になったとしている。活用例としては、タブレットや携帯電話を机に置くだけで充電できる技術の開発や、ペースメーカーなど埋込み型医療機器を体外から充電することによって、バッテリ交換のための手術が不要になる可能性を挙げている。