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マイクロソフトが考えるAI導入の課題とその対策

マイクロソフト コーポレーション エグゼクティブ バイスプレジデント コマーシャル チーフ マーケティング オフィサーの沼本健氏

 日本マイクロソフト株式会社は2日、主に企業向けにおける同社のAI戦略などについて紹介するメディアラウンドテーブルを開催した。同会では、マイクロソフト コーポレーション エグゼクティブ バイスプレジデント コマーシャル チーフ マーケティング オフィサーの沼本健氏より、説明が行なわれた。

 AIが新たなプラットフォームの基盤になりつつある今、それを支える技術として、人間とコンピュータとの自然なやりとりを実現するナチュラルユーザーインターフェイス(NUI)と、データをより有機的に活用するための推論エンジン(Reasoning Engine)の2つが挙げられるという。

 Microsoftでは、同社のクラウド製品に対してAIプラットフォームを全域で導入。データからOffice、ビジネスアプリケーション、セキュリティまで、同社の持つ幅広い製品分野に横断的に活用している。だが、AIを導入していく上で、喫緊の課題が大きく3つあると説明した。

新たなプラットフォームとなるAIを支える2つの技術
Microsoftではクラウド製品に対して全域的にAIを導入
3つの課題

 1つ目は「Unlock productivity with Copilot」。顧客の生産性向上に向けたCopilotの活用について言及するもので、Windows製品はもちろん、GitHubやMicrosoft 365、営業向けツールなど、幅広い製品分野でCopilotを実装していく。たとえばMicrosoft 365の場合では、さまざまなデータを持つMicrosoft Graphと大規模言語モデルが連携し、企画書からPowerPointのスライドを作成してくれる、遅れて参加した会議でその時点までの内容を要約して教えてくれるといったことが可能になる。

 また、Microsoft 365 Chatでは、Copilotがさまざまなデータをもとに、より包括的にそのときユーザーに情報を情報源とともに提供することで、ユーザーがCopilot上で仕事ができるといった体験も可能になるという。

 同社の説明によれば、Copilotの導入によりソフトウェア開発者のコーディングが55%高速化したり、ナレッジワーカーがタスクを終えるのが37%早くなるなど、さまざまな領域で生産性の向上が図れるとしている。

幅広い製品にCopilotを導入
Microsoft 365 Copilotでは、Microsoft 365の各種アプリとMicrosoft Graph、大規模言語モデルが連携し、ユーザーを支援する

 2つ目は「Build your own AI capability」。顧客が自社用AI開発をする際のサポートに関するもので、Microsoft Azureを基盤としたCopilot Stackを提供する。AI開発に重要なデータについても、Microsoftが展開するデータベースやデータ分析サービスのほか、サードパーティとの協業も図ることで、データをクラウドに持ち込んで有機的に統合し、AIアプリケーションの開発や導入を加速するとした。

 また、AIアプリケーションを開発するツールチェーンについても、プロンプトエンジニアやコンテンツフィルタリングなどを含むAzure AI Studioを提供し、エンドツーエンドで開発をサポートできるという。

Azureを基盤とするCopilot stack
AIアプリ開発をサポートするAzure AI Studio

 3つ目は「Safeguard your business and data」。AIの活用においてビジネスやデータを安全に保つことの重要性についてのもので、まず、Microsoft Cloudのエンタプライズグレードのセキュリティとコンプライアンスのもと安全を担保して運用できると強調。直近では、商用Copilot製品の生成結果の著作権侵害に対し、同社が法的に補償するCopilot Copyright Commitmentを発表し、AI導入における顧客の不安を取り除いているという。

 また、公平性、プライバシーとセキュリティ、透明性、信頼性と安全性、包括性、アカウンタビリティといった項目をResponsible AI(責任あるAI)の基本原則として定めており、すべてのAI製品の開発や提供、運用においてこれを担保していることにも言及した。

さまざまな取り組みでAIの安全を担保する

 特に日本市場については、AIの前にクラウドを検討する必要があるケースが少なくないため、まずは現状のIT資産をどのようにAIで使えるようにしていくかといった分析が必要だとし、その上で生産性を向上するためのCopilotの導入、さらにはその導入による効果を明確化して分かりやすいかたちにしていくことで、導入が進んでいくだろうと説明した。