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岐阜大、心を読む能力を高めて交渉スキルを向上させるAIエージェントを開発

 岐阜大学の佐藤幹晃(博士前期課程2年)と寺田和憲教授らは、南カリフォルニア大学のJonathan Gratch教授と共同で、交渉の成功に重要な心の状態の1つである「選好」(価値観の相対化によって得られる順序関係)を読む能力を向上させるAIエージェントを開発した。

 交渉は多くの人にとって難易度の高い社会的相互作用であり、交渉能力の向上は社会的課題となっている。一般的に交渉においてWin-Winの関係になるには、複数ある論点に対する選好を相互に正確に見極め、資源の分配を最適化する必要がある。

 本研究グループは、人の感情が個人の選好による状況評価により決まるという評価理論(appraisal theory)に基づいた感情評価生成モデルをAIエージェントに搭載。

 AIエージェントで感情の評価プロセスを視覚的に明示し、ユーザーに言語的フィードバックを与えながらシンプルな交渉タスクを行なうことで、選好と表出感情の対応関係のモデルを用いて選好を推論する方法を学び、ユーザーの選好を読む能力を向上させるシステムを開発した。

 成人187人を対象とした同システムの実証実験の結果、選好を読む能力が向上したことを確認できたという。

 研究グループは今後、道徳と数学を掛け合わせた教育プログラムをAIエージェントに実装し、コミュニケーションに課題を抱える子も含めた多くの子どもたちが、相手の心情を理解して多様な価値観を尊重し、複雑な人関関係にうまく対応する能力を獲得できるシステムを開発するとしている。