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フランス生まれの玉乗りソーシャルロボット「Miroki」が国内初お披露目

 フランスのスタートアップEnchanted Tools(エンチャンティッド・ツールズ)が2023年2月14日に、新しいキャラクターロボット「Miroki(ミロキ)」のプロトタイプの取材会を開いた。これまでに「CES 2023」と時期を合わせて一部関係者に公開されたことはあるが、日本国内でのメディア公開は今回が初めて。

 人とコミュニケーションが取れるキャラクター型の搬送ロボットとして、病院内の配送や、オフィスの資料配達アシスタントなどの用途を想定している。商用実装は世界初だという球乗り移動で、前後左右に機敏に動くことができる。顔の表情はプロジェクション。両腕で3kgまでのものを持つことができ、台車を押すこともできる。

「Pepper」のリードデザイナーが新たに送り出すヒューマノイド「Miroki」

「Miroki」。身長123cmの玉乗りヒューマノイド

 「Miroki」の身長は123cm。体重は28kg。RGBカメラを2つ、赤外線カメラを2つ、マイクを4つ、スピーカー、超音波センサーなどを搭載している。全身の自由度は28。そのうち22はインピーダンス制御がができる。頭部とロボット台車部にCPUとGPU(NVIDIA Jetson)を2つずつ内蔵し、単体で顔認識・音声認識、自然言語処理、自律移動ができる。ロボット内部の通信はEthernetを採用。最大移動速度は時速3.2km。最大稼働時間は8時間。

顔は小型プロジェクタによる投影。多様な表情が可能。額にはRGBカメラやデプスカメラ。
耳も動作する
後方。今回はバッテリを運ぶことができなかったとのことで有線給電での動作
最大の特徴である足は一球

 ロボットは人に押されるなど外力を加えられると、押されたほうに滑らかに力をいなして追従する。玉乗りを採用した理由は「一番動かしやすく、場所を取らない。そして魔法っぽい感じがあるから」(Enchanted Tools CEO モンソー氏)とのこと。

 一見不安定そうに見えるが、バランス制御によって極めて安定している。エネルギー消費量もそれほど多くないという。なお将来の量産モデルでは脚部車輪の横には補助脚をつけ、不安定になったときにはその脚で支えることができるようになる予定。5度くらいの坂を登ることもできるという。

 「ルーン(魔導石)」というBluetooh内蔵の独自タグを使うことで、Mirokiを呼んだり、対象物につけてビジュアルトラッキングと組み合わせることで把持させたりできる。Mirokiは腕を伸ばした状態で片腕1.5kg、両腕で3kgまで持てる。腕を下に下げた状態なら10kgまで持てる。また15kgまでの物体を牽引できるという。

ハンド部。指は4本
ハンド部の掌側

 デモでは「ルーン」をつけたハンドルを認識させて、腕を伸ばさせ、掴ませる動作が行なわれた。

「ルーン」を使って物を持たせることができる
「ルーン」を使うことでさまざまなものを認識させやすくする

 開発したEnchanted Tools社は、2021年に創業。創業者はソフトバンクロボティクスの「Pepper」や「NAO」などを開発したAldebaran(アルデバラン)の共同創業者の1人であるジェローム・モンソー(Jérôme Monceaux)氏と、フランス国立認知刺激専門センター前所長のサミュエル・ベンベニスト氏の2人。今回来日したCEOのジェローム・モンソー氏は、Pepperのリードデザイナーだった。

 同社は「役に立つ以上のもの」を作ることをミッションとしており、フランスのソーシャルロボット関連では史上最高額となる約20億円(1,500万ユーロ)のシード投資を受けた。

フレンドリーなアニメキャラのようなロボットとしてデザイン

Enchanted Tools CEO ジェローム・モンソー(Jérôme Monceaux)氏

 リリースによれば、「Miroki」は社会全体の最適化を目指すため(Social Logistics)のロボットとして開発された。「人間を建物内の単純な配達業務から解放し、子供も怖くない病院環境作りに貢献するなど、世界的なインパクトを与えること」を目指しているとされている。

Social Logisticsのためのロボット

 Enchanted Tools CEOのジェローム・モンソー氏は2005年にブルーノ・メゾニエ氏とAldebaran Roboticsの設立に参加。同社はその後、「NAO」や「Pepper」の開発を経て、ソフトバンクに買収された。ソフトバンクを退社後、2015年にはインタラクティブなアニメーションを作る会社SPooNを創業し、従事していたが、「ロボット業界が変化した」と感じ、Enchanted Toolsを創業し、再びロボット開発を始めたという。

 取材会でモンソー氏は「私はロボットを20年間作ってきた。Pepperのあと何ができるのか、できなかったことをどう解決するかを考えた。成長できるポイントは3つあった。アクションを使ったコミュニケーション能力、人が集まっている場所でも自律移動できるナビゲーション能力、そしてものを拾う力があったほうがいいと考えた」と語った。今回のMirokiはロボットをアニメのキャラのように考えて、アニメーションスタジオとコラボして、ロボットのキャラクターデザインや世界観を作っていったという。開発期間は12カ月。50人のメンバーで新しいヒューマノイドを作ったと語った。

mirokiのスペック

設定は異星人、病院等で人を助けるためのロボット

「ルーン」を使ってプレゼン開始

 そして自ら、前述のタグ「ルーン」を使って、プレゼンを開始。アニメーションを使ったプレゼンでは、Mirokiたちの星(ミロコ星)があり、そこからMirokiがやってくるという設定で進められた。なお「Miroki」のほか、「Miroka(ミロカ)」という女性キャラクターもいて、「Miroki」と「Miroka」は双子とのこと。日本とフランスのカルチャーを組み合わせたものであり、「ミロキ」「ミロカ」という名前には「ほら、他の世界を見てください」という意味が込められているという。

Mirokiたちの星「ミロコ星」
ゲートを通って地球にやってきた
アニメキャラを実体化させたイメージ
アニメのデザインをロボット化させた

 ロボットの内部では、バランス制御のほか、マルチモーダル・セマンティック・インタラクション(実世界でのロボットと人間のコミュニケーション技術)、そしてノンバーバル・アニマル・インタラクション(非言語的な生物的な動き)の3つの制御機能が同時に走っている。「アニマル・インタラクション」とは、Pepperがやっていたような、特に何もしてない時にもナチュラルな生物感を出すための動きだ。

Miroki(ミロキ)登場

 フランスでは実際の病院で実証実験を行なっており、日本でもコラボレーションしたいと考えているとのこと。病院でも搬送業務は多く、200床の病院の場合は1週間で10万時間が搬送に使われている。1日のうち、おおよそ2時間半が搬送関連に割かれており、病院以外でも倉庫など、ものを運ぶところでは活用できるのではないかと考えているという。

病院でも業務の1割の時間が搬送に使われている
1日2時間半に相当
人手不足は世界中で深刻化している
フランスの病院での実証実験の様子

目標は10年間で10万台

Mirokiとモンソー氏

 ロボットの価格は、1台あたり3万ユーロ(約420万円)。モンソー氏は「PepperとNAOは4万台を生産した。当時からロボットも人も変わった。今度は10年間で10万台の販売を目指す」と語った。フランス、ヨーロッパ、日本、アメリカで展開する。これから量産設計に移行し、販売開始は2025年を予定。2025年には500台、2026年には2,500台を販売し、さらに2027年には1,000台/月の生産を目指す。

「Miroki」活用イメージ
今後の目標。10年間で10万台を目指す

 ロボットの操作は「ルーン」のほか、スマホアプリなどを想定している。APIも用意される。ただしPepperのようにさまざまなアプリをサードパーティが開発するエコシステムは想定していない。階層間移動するためのエレベーターや自動ドアなどの建物設備との連携も現段階では想定していない。

 まだプロトタイプができたばかりなので、詳細は未定とのことだ。ローカライズ等についても未定だが、モンロー氏としては日本市場にも期待しているようだった。

今後、さまざまなキャラクター展開も想定
左が量産モデル、右はプロトタイプ