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NTTドコモ、「窓」で電波を曲げたり、入りやすくする技術

屋内の電波を屋外の建物の足元へ届けるイメージ

 株式会社NTTドコモは30日、建物の内外における電波品質の改善に関係する発表を行なった。

 本件についての発表は2つあり、1つは屋内基地局の電波を曲げて建物外の足元付近に届ける技術、もう1つは建物の外から屋内への電波を入りやすくする技術。

 前者はフィルム形状の透過型メタサーフェスによって屋内基地局の電波を窓経由で建物外の足元付近に届ける実証実験に成功したという内容で、世界初としている。現行の5G通信と次世代の6G通信で利用する高周波数帯の電波は、障害物を回り込みにくく、また伝搬距離で減衰しやすいという特徴があることから、NTTドコモでは通信エリアの改善を図る一環として、メタサーフェス技術の活用を進めていた。ここでいうメタサーフェスは、電波の波長よりも小さな構造体を配列することで、電波を特定の方向に曲げるよう加工した構造体のこと。

 実験ではメタサーフェス構造体をフィルム形状に構成し、窓ガラスに貼りつけることで28GHz帯および2.6GHz帯の電波を下方向に曲げて、建物の足元付近で受信できるようにした。フィルム形状のメタサーフェス構造体は透明化が可能で景観に影響を及ぼしにくく、また設置が容易。NTTドコモでは同日、1本の基地局アンテナで全方位へ電波を放射できる「マルチセクタアンテナ」を発表しており、メタサーフェス技術と組み合わせることで、屋内と屋外の通信エリアを同時に構築できる可能性について言及している。

透過型メタサーフェスで電波を曲げるイメージ
実証イメージ(横から見た図)と屋内に設置した実際の5G基地局

 後者の「外から内へ電波を入りやすくする技術」はYKK AP株式会社と共同で進めている取り組みで、住宅やオフィスの天井および壁面の一部を切り取り、電波を通しやすいエアロゲル素材に置き換えることで、主に屋内における電波の可用性を向上させる試み。両社はこれを"電波の窓"と呼んでおり、30日からドコモR&Dセンタ内の電波暗室で実証実験を開始した。

 エアロゲル素材は熱伝導率が低い一方で電波を通しやすく軽量であり、建材として利用すれば、屋内における電波品質の改善と高断熱化を両立できる可能性がある。

 この実験ではエアロゲル素材で作製した"電波の窓"の電波透過特性を確認する。役割分担として、YKK APは天井、壁、窓などのサンプル住宅構造モデルと住宅測定環境の提供、NTTドコモは電波透過特性の測定と構造の電波シミュレーションなどの評価をそれぞれ担当する。本実証実験の結果から、"電波の窓"に用いる素材や形状、構造などの検討をさらに進める見込み。

"電波の窓"の仕組み
エアロゲル素材を用いた"電波の窓"の試作