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第4世代EPYCのキモはダイサイズの小ささにあり。AMD発表会レポート
2022年11月11日 12:00
米AMDは10日(現地時間)、カリフォルニア州サンフランシスコ市内のホテルで記者会見を開催し、「Genoa」(ジェノア)の開発コードネームで開発してきた第4世代EPYCプロセッサ(以下第4世代EPYC)を正式発表した。
本稿ではその発表会についてレポートする。製品の詳細については、下記記事を参照されたい。
競合に比べて高性能を高電力効率で実現
壇上でスー氏は「AMDにとってデータセンター市場は非常に大きな潜在成長性がある市場だ。そして顧客は高い性能と、より高いエネルギー効率を必要としている。それを顧客に提供するのが今回発表する第4世代EPYCだ」と述べつつ、第4世代EPYCを高々と掲げて、第4世代EPYCを正式に発表した。
新EPYCの概要を簡単にまとめると、CPUコアが最大96コアに増やされ、DDR5に対応した新しいCPUソケット「SP5」に対応し、12チャンネル構成でDDR5メモリを利用することができる。128レーンのPCI Express Gen 5に対応し、2ソケット時は160レーンの構成で利用が可能。CXL 1.1にも対応しており、メモリバッファを介してメモリモジュールをCXL経由で接続することが可能になっている。
第4世代EPYCが96コアを実現できているのはAMDが「チップレット」と呼んでいる、複数のダイを1つのパッケージに混載する技術を、従来世代に引き続き採用しているからだ。AMDはチップレットを初代EPYCで採用し、第2世代、第3世代と進化させてきた。第3世代EPYCでは、CCD(Core Complex Die)と呼ばれるCPU 8コアで構成されるダイを8個と、IOD(I/O Die)1つをパッケージに混載させてきた。
第4世代EPYCではそれを進化させ、IOD 1つは同じだが、CCDの最大数を12個に増加させ、8コアx12=96コアというCPUコア数を実現してきた。CPUコアはTSMCの5nm、IODはTSMCの6nmで製造され、そのプロセスノードの組み合わせはデスクトップPC向けのRyzen 7000シリーズと同等だ。
スー氏は性能について、最上位モデルのEPYC 9654が、Intelの最上位製品であるXeon Platinum 8380と比較して、整数演算での性能を示す「SPECrate2017_INT_base」で3倍、整数演算での性能の電力効率を示すベンチマーク「SPECrate2017_int_energy_base」で2.6倍、HPCでの性能を比較する2P時の浮動小数点演算の性能を示す「SPECrate2017_fp_base」で2.5倍、エンタープライズサーバーでのJava性能を示す「SPECjbb2015 Multi-JVM max-jOPS)において2.9倍などの性能を実現していると説明した。
そして、Xeon Platinum 8380であれば15台のサーバーが必要な性能を、第4世代EPYCであれば5台で実現でき、Xeon Platinum 8380 15台のコストが4万7,746ドルであるのに対して、第4世代EPYCのコストは2万1,756ドルと初期投資も少なく、同時に1kWhの電力あたり46セントの電力料を削減できると説明。「これによりサステナブル(持続可能な)データセンターを実現することができる」とた。
Ice Lake-SPよりコンパクトなZen 4コア
続いて登場したのは、AMD テクノロジー・エンジニアリング担当上級副社長兼CTOのマーク・ペーパーマスター氏。ペーパーマスター氏は、Zen 4のアーキテクチャの利点などについて説明した。
Zen 4のアーキテクチャの利点に関しては、Ryzen 7000シリーズの発表時と同じ内容の繰り返しだったが、面白かったのは競合製品(第3世代Xeon SP)とのCPUコア(CPUコア+L2)のダイ面積の比較だ。
第4世代EPYCはダイ面積が3.84平方mmであるのに対して、第3世代Xeon SPは6.x平方mmとなっており、約40%ダイサイズが小さく、それにより電力効率も48%改善されるとアピールした。
また、ペーパーマスター氏は自身のパートの最後で「AMDはロードマップ通りに着実に製品をオンタイムで提供している」と述べ、Sapphire Rapidsをなかなか出荷できないIntelに皮肉を放つことも忘れなかった。
また、AMDは今回の発表会に、多くのOEMメーカー、CSP(クラウドサービスプロバイダ)などを招待し、ステージ上でEPYCへの期待を語ってもらっている。現地で登壇したのが、CSPではOracle、OEMメーカーではDell、Lenovo、Supermicroの4社。ビデオで出演したのがCSPではMicrosoftとGoogle、OEMメーカーではHPE、そして仮想マシンの環境を提供するVMwareの4社となっていた。
サーバー製品向けに製造能力増強を行なっているとスーCEO
会見の最後にスーCEOは再び登壇し、サーバー向け製品ロードマップに関してのアップデートを行なった。スケールアウト向けのBergamoを2023年の前半に、3D V-Cacheを搭載したGenoa-Xを2023年の前半に、そしてSienaを2023年の後半に投入する計画だ。
Bergamoはクラウドで大規模にスケールアウト(EthernetやInfiniBandで接続した大規模クラスタ)向けの製品で、Zen 4Cコアを採用することで密度が向上すると説明された。CPUコア数が増える可能性が高く、2023年前半に投入される。
Genoa-Xは第3世代EPYC(Milan)の後半にリリースされた3D V-Cache搭載版Milan-Xと同じように、Genoaの3D V-Cache搭載版となり、2023年前半に投入される計画。Sienaはより電力効率が重視された製品で、2023年の後半に投入される見通しだ。
会見後の質疑応答では、2023年にIntelとのシェア競争の中で製造量を増やす計画があるかと問われたスー氏は「ここ12~18カ月間、AMDはサーバー向けの製造能力を増強してきた。それでもこの12カ月はややギリギリの供給になっていたが、年末までには改善する見通しで、来年は供給量を潤沢にしていく。特にGenoaではソケットが更新されたこともあり、来年いっぱいぐらいはMilan(第3世代EPYC)と共存していく形になるだろう」と述べ、第3世代EPYCも引き続き市場に供給していくことで、シェア増強の意向を表明した。