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アイロボット、小・中学生向け「ルンバエンジニアリングコース」を新開発し無料公開
~教育機関向けには無償貸出も
2022年6月8日 14:46
アイロボットジャパン合同会社は、 プログラミングを基本から学べる日米共同開発のカリキュラム「ルンバ エンジニアリングコース」を6月8日からアイロボット公式ページ内iRobot Educationサイトで無料公開すると発表した。主な対象は小・中学生。「ルンバ エンジニアリングコース」は日本法人からの呼びかけによりアメリカ本社と共同開発。ルンバの動きを同社が販売中のプログラミング教材ロボット「Root」で再現。ルンバのように部屋を掃除するプログラミングにチャレンジできる。
また今回、教育機関を対象に「Root」6台と、より高度なプログラミングが可能な国内未発売のロボット「Create 3」をセットで貸し出す。レンタル費用や送料は無料。教育機関であれば誰でも申し込める。申し込みはアイロボットの「ルンバ エンジニアリングコース」公式サイト(https://www.irobot-jp.com/root/rec/)から。
ロボット開発の原動力は子供たち
アイロボットは6月8日を「ルンバの日」としている。アイロボットジャパン新規事業開発室 執行役員の山田毅氏は、アイロボットCEOでルンバの生みの親であるコリン・アングル氏が子供たちにロボットについてインタビューした動画を紹介。同社では使う人に寄り添ったロボットで世界を変えていこうとしており、「子供達がロボット開発の原動力だ」と考えているという。
コリン・アングル氏は教育を重視しており、アイロボットでは「STEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)プログラム」を2009年から社内に導入・推進しており、社員には年間2日のSTEM休暇もあるという。日本でも2018年からボランティア社員により、ルンバを使ったプログラミング教室やワークショップを開催している。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年からは中断していたが、2022年7月24日に約2年半ぶりに再開する。
STEM活動を進めるために発売している教材が「Root」だ。無料でダウンロードできる専用アプリを使って、走る、光る、描く、音を出すことが可能で、「子供のワクワク感を刺激し、自由な発想を創出」できるという。2022年6月現在、38都道府県の小学校に導入されており、年内には全都道府県に導入予定。現場教員からも「かわいい」、「扱いやすい」、「レベルが変えられる」と好評だという。
山田氏は「プログラミングととロボット技術を合わせることでアイロボットでしかできないことを体現していきたい。将来エンジニアになる夢を想像してもらいたいと考えて活動している」と語った。
プログラミングと実生活の結びつきをイメージしながら学習可能
カリキュラム「ルンバ エンジニアリングコース」については、同 新規事業開発室 ビジネスデベロップメントマネージャー竹迫大佑氏が解説した。同社ではRootの教材展開だけでなく、プログラミングを学ぶ意義や学ぶことの楽しさを提案していきたいと考えており、その第1歩が今回の「ルンバエンジニアリングコース」だと紹介した。
「ルンバエンジニアリングコース」はルンバの動きをモチーフにしたプログラミング教材で、ルンバの動きを再現することでプログラミングの基本を学べる。プログラミングが実生活にどのように結びついているのかイメージしやすくすることでプログラミングの仕組みを学んでもらえるという。
竹迫氏は事例として大阪府摂津市別府小学校での小学4年生の授業の様子をビデオで紹介した。子供達には、まずはルンバを見てもらってどのような動きをしているのか示す。また、コリン・アングル氏からのメッセージも子供達には響いたようだという。ふだん、プログラマーやエンジニアとは接する機会が少なく、想像しにくいからだ。
授業では4人1組になり、バンパーセンサーを使って、Rootでルンバと同じ動きを再現する。子供達は試行錯誤しながらプログラミングを行なう。実際に実物が動くなかでは考えていたのとは違うことも出て来るが、それも含めて、学びになる。指導教員からも「プログラミングの思考力を育むだけでなく、寄り添ったかたちでプログラマーという職業に触れることになるのでキャリア教育にもなる」と評価されてるという。
竹迫氏は「不登校だった生徒がプログラミング教育をきっかけに再び登校するようになった事例もあり、感銘を受けた」と紹介した。プログラミングだけに止まらず「プログラミングを通じて、世の中にどのように貢献できるか」といった教科横断的な取り組みを行なっている教員もいるという。
ブラウザで簡単にプログラミング体験が可能
「ルンバ エンジニアリングコース」のポイントは3つ。
・ルンバの動きをRootで学ぶ
・45個のアクティビティ
・社員による動画コンテンツ
記者会見では社員による動画コンテンツの一例として、アイロボットジャパン トレーニングチームの渡邊峻氏が実際にデモを行なった。渡邊氏はRootについているバンパー、タッチセンサー、色認識センサーなどを紹介したあとアプリを操作しながら紹介した。
アプリはダウンロードのほか、Webブラウザからも使える。筆者ら記者たちもブラウザでアプリを操作しながら体験参加した。レベル1のブロックプログミラングだけなら本当に簡単で、誰でもルンバ風の動きを作って、シミュレータで確認することができる。
直感的なブロックプログラミングだけでなく、複雑で詳細な設定ができるレベル2、さらにコードを使ったより本格的なプログラミングのレベル3へと進むことも可能だ。
未来のエンジニアを育てる
締めくくりにアイロボット 竹迫氏は「カリキュラムを学んでいく道筋の先にゴールを思い描いてもらうことも必要」と改めて強調した。そしてより多彩なセンサー(エンコーダーやジャイロ、加速度など)を搭載し、PythonやROS2などを活用してハイレベルなプログラミングができるロボット「Create3」を紹介した。日本国内ではまだ発売されていないが、今後、子供たちにより深いレベルの興味を持ってもらえるように「Create3」を使ったプログラミング教育の仕組み作りも進めていくという。
そして「教育業界でも教育業界でも価値を提案していけるようにしていきたい。アイロボットは国籍や人種、性別を問わず全ての子供達が平等に教育を受ける権利があると考えている。SDGs(持続可能な開発目標)の4項目め『質の高い教育をみんなに』に貢献すべく取り組んでいく」と述べた。
STEMプログラムも募集再開
最後に、アイロボットジャパン シニアコミュニケーション マネージャーの村田佳代氏が、改めてアイロボット社員によるSTEMプログラムを紹介した。2022年7月24日に約2年半ぶりに再開予定となるSTEMプログラムの参加申し込みも本日(6月8日)から開始する。対象は小学2、3年生。参加費は無料。申し込みはアイロボットSTEM公式サイトから。
社員が手弁当で行なっている小規模なイベントで、毎回子供たちから新たな気づきがもらえることから、アイロボット社員たち自身も楽しみながら行なっているそうだ。