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日本橋から宇宙への道を創り出す「TOKYO SPACE BUSINESS EXHIBITION 2021」開催
2021年12月14日 17:19
三井不動産株式会社は2021年12月14日(火)~17日(金)、宇宙ビジネスイベント「NIHONBASHI SPACE WEEK 2021」を日本橋で初めて開催する。三井不動産による宇宙関連領域のビジネス拡大プロジェクト「X-NIHONBASHI(クロスニホンバシ)」の一環として開催するもので、14日と15日には宇宙スタートアップ企業や宇宙港設置に取組む自治体、JAXAなど、宇宙ビジネスに関わる約25の企業・団体を集めた「TOKYO SPACE BUSINESS EXHIBITION 2021」を日本橋三井ホールで開催した。
三井不動産では2004年の「COREDO日本橋」の開業を皮切りに「残しながら、蘇らせながら、創っていく」を開発コンセプトとして、官民地域一体となった「日本橋再生計画」を推進している。「日本橋再生計画」は「豊かな水辺の再生」「新たな産業の創造」「世界とつながる国際イベントの開催」の3つを重点構想として掲げており、その1つである「新たな産業の創造」の注力領域に「宇宙」を設定している。
「NIHONBASHI SPACE WEEK 2021」では、宇宙ビジネス展示会「TOKYO SPACE BUSINESS EXHIBITION 2021」のほか、若きイノベーターを発掘・表彰する世界的なアワード「Innovators Under 35 Japan 2021」、内閣府主催の宇宙を活用したビジネスアイデアコンテスト「S-Booster2021」といったイベントを開催する。
「五街道」起点の街から6つめの街道「宇宙への道」を作り出す
「TOKYO SPACE BUSINESS EXHIBITION 2021」オープニングセレモニーでは、まず主催である三井不動産株式会社 取締役 専務執行役員の植田俊氏が登壇。なぜ三井不動産が日本橋で宇宙に取り組んでいるのかについて語った。植田氏は「日本橋は江戸開府とともに5街道の起点、日本の中心だった。イノベーションの伝統が息づく街。三井不動産は、バブル崩壊後の活気が失われた街にかつての賑わいを取り戻そうと再生計画を20年以上続け、将来有望な産業を街で支援してきた」と述べた。
そして「まずは健康/長寿という社会課題解決のためのライフサイエンス領域の支援と集積を進めてきた。宇宙とライフサイエンス領域はもとより近接領域。2014年から『X-NIHONBASHI』を進めてきた。JAXAほか多くの宇宙プレイヤーに集まってもらった。現在20を超えるプレイヤーが拠点を構えている。連携の機会作りにも努めてきた。来年以降は欧州との連携も進める。今回のイベントも機会づくりの1つ。そうそうたる宇宙スタートアップに参集してもらった。17日まで今週1週間は宇宙イベントを開催し、規模はアジア最大級。ネットワーキングや商談が行なわれる機会を今後も日本橋で作りたい」と語った。
そして「宇宙はもはや夢ではない。困難かつ壮大な話を聞くたびにジュール・ベルヌの言葉を思い出す。想像できることは必ず実現できる。宇宙ビジネスは地上にもイノベーションをもたらす産業領域。6つめの街道、宇宙への道を作り出す」と挨拶を締めくくった。
続けて国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事の石井康夫氏は「JAXAは『X-NIHONBASHI』をきっかけに三井不動産と協力を開始した。さらに日本橋エリアから宇宙産業の裾野を広げようとしている。変化の激しいなかで海外からも最先端で活躍している企業や団体が参加するイベントで時宜を得た企画だと思っている。化学変化が生じて宇宙ビジネスが盛んになることを期待している。この企画が宇宙ビジネスの盛り上がりとともにさらに継続することを祈念している」と挨拶した。
各社協調で宇宙ビジネスの高速立ち上げを目指す
出展社からは、衛星ローンチサービスを手がけるSpace BD株式会社と、 スペースデブリ(宇宙ごみ)除去サービスの開発に取り組む株式会社アストロスケールの2社が登壇。
まず、Space BD 代表取締役社長の永崎将利氏が「日本橋は宇宙ビジネスの一大拠点。我々にとっては大変ありがたい。Space BDは『X-NIHONBASHI』オープンからご一緒している。主力ビジネスである衛星打ち上げサービスについてはJAXAとの提携のもと50機を超えてシェアを伸ばしている。国際宇宙ステーション『きぼう』実験棟を使った新規ビジネスも進めている。やればやるほど無限の可能性と広がりを感じる。いっぽう宇宙は予見性が低い課題もあり、一社でできることは少ない。それぞれの強みをもった会社が協調することが重要で、こういった場が非常にありがたい」と述べた。
アストロスケール 創業者兼CEOの岡田光信氏は「今回のイベントに『ビジネス』という単語が入っていることがとても重要。宇宙というセクターが商業に立っていくことを体現するのがこのカンファレンス。宇宙セクターにもいろいろある。ロケットや衛星、基盤技術の提供など様々なセクターがある。各社の名前を見ただけでワクワクする。私はもともと宇宙とは関係ない領域にいて、業界に入る時に日本の宇宙開発の歴史を調べたところ、糸川英夫教授のペンシルロケット開発から世界で4番目の人工衛星『おおすみ』の打ち上げまでわずか15年だった。今はもっと速いペースで事業開発しなければならないと感じた。今後2年、3年でもっと大きくなっていく。アストロスケールは衛星が活動するためのJAFのようなサービスを目指している。宇宙開発が持続できるように頑張っていきたい」と述べた。
JAXA 宇宙飛行士の野口聡一氏もゲスト挨拶として登壇。野口氏は「このロゴマークはロケットのフェアリングをイメージしている。時と場所と人が重要。今年は様々な民間宇宙ビジネスが花開いた年。乗り物はSpaceXのクルードラゴン、AmazonのBlueOrigine、いま現在、前澤友作さんと平野陽三さんが宇宙にいる。普通の人が宇宙に行く画期的な例。長い訓練なしにどんどん宇宙に行けるようになる。日本人が4人宇宙に行ったのは今年(2021年)が初めてで、2021年にこのイベントが行なわれることは素晴らしい。日本橋は日本の中心だった。これからここが宇宙ビジネスの中心になる。日本橋が宇宙への道になる。人と人とのつながりがビジネスにおいては重要。産業界とJAXA、アカデミアの世界が一体になって宇宙ビジネスを推し進めていく」と述べた。
打ち上げロケット、衛星、月面探査など国内外の宇宙スタートアップ企業が集結
会場ではそのほかの企業がブースを展開していた。いくつかを簡単にご紹介する。インターステラテクノロジズ株式会社は北海道大樹町のスタートアップ。ブースでは国内民間単独で初めて宇宙空間に到達した観測ロケット「MOMO」の取り組みのほか、2023年度の打上げを目指す超小型衛星打上げロケット「ZERO」、人工衛星開発の子会社Our Stars株式会社を紹介。
株式会社アクセルスペースは超小型人工衛星の設計、製造、活用を事業としている。全地球観測プラットフォーム「AxelGlobe」を支える衛星や衛星撮影画像を紹介していた。
宇宙サービスイノベーションラボ(SSIL)は、事業・資金知見ニーズを持つ大学発スタートアップや大学研究室と技術・事業化ニーズを持つ大企業や公共団体のマッチングや当該技術・事業のインキュベーションを行なう事業協同組合。ブースでは組合員である株式会社アークエッジ・スペース(東大 中須賀研究室発のスタートアップ)が開発した衛星の実物大モックを出展。
株式会社Synspectiveは、独自の小型合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar、SAR)衛星により高頻度観測を可能にする衛星群の構築と、そこから得られるデータの販売、および、多様な衛星、IoTデータを機械学習やデータサイエンスを用い組み合わせることを目指す。
株式会社アストロスケールはスペースデブリ(宇宙ごみ)除去などの軌道上サービスに取り組むスタートアップ。2021年8月には、デブリ除去技術実証衛星「ELSA-d (エルサディー、End-of-Life Services by Astroscale-demonstration)」を使って、捕獲機(サービサー)が磁石を活用した捕獲機構で、模擬デブリ(クライアント)の捕獲に成功したと発表している。
株式会社ALEは衛星を使って人工流れ星を開発し、宇宙エンターテインメント事業を目指しているスタートアップ。ブースでは流れ星衛星の模型、流れ星を作るための金属球の実物などを出展。流星源は秒速最大400mで放出され、高度約60〜80kmで消滅するため宇宙ゴミにはならない。同社ではこのほか、同じ技術を使った地球観測や運用の終わった衛星の軌道離脱などを行なうための技術を開発している。
株式会社Pale Blueは、「水」を推進剤とした小型衛星用エンジンを提供する、東大小泉研究室発ベンチャー。マイクロ波を用いた超低電力プラズマ生成技術で、高圧ガスやヒドラジンなどの有毒な燃料を使わない、「水」を推進剤とする小型衛星エンジン開発を目指す。
株式会社ispaceは月面資源の開発に取り組むスタートアップ。月への高頻度かつ低コストの輸送サービス提供を目的とした月着陸船と月面探査車を開発しすることを目指している。ブースではランダー(月着陸船)と月面探査ローバーの1/5スケール模型を出展。
avatarin(アバターイン)株式会社はANAホールディングス発のスタートアップで、アバター(分身)ロボットを使った観光ビジネス等を行なっている。将来は宇宙にも分身ロボットを置いて、宇宙観光できるようにすることを目指す。なお2020年11月19~22日には、ISSの「きぼう」に4Kカメラ搭載の宇宙アバターを設置して地上の一般施設に画像を送る試みを実施している。
株式会社SPACE WALKERは有翼式再使用型サブオービタルスペースプレーンの研究/開発を行なっている企業。ブースではスペースプレーンのモックアップやパネル展示を行なった。
「宇宙港」への取り組みも
大分県は、2020年4月に米国の小型人工衛星打ち上げ企業Virgin Orbit(ヴァージン・オービット)と提携。大分空港の水平型宇宙港(スペースポート)活用に向けた取組を進めている。「水平型宇宙港」とは、航空機が人工衛星を搭載したロケットを翼に吊り下げて飛行場から離陸、空中で打ち上げるというもの。
なお、2021年12月13日(月)からは新たなシティプロモーション「宇宙ノオンセン県オオイタ」をスタートしている。2022年2月には大分県で宇宙技術および科学の国際シンポジウム(ISTS)が開催されるとのこと。
北海道スペースポート:HOSPO(北海道宇宙関連ビジネス創出連携会議)は、インターステラテクノロジズの「MOMO」打ち上げ実績を足がかりとして、誰もが利用できる、民間に開かれた「シェアするスペースポート」として整備を目指す。北緯42度、東と南が海に開けていること、敷地が広大であること、「十勝晴れ」と呼ばれる晴天率の高さなど売りだという。
このほか、宇宙商社のSpace BD株式会社、地上局ネットワークを周回衛星向けに提供する株式会社インフォステラ、100kg級小型SAR衛星を開発・製造・運用している株式会社QPS研究所、シスコシステムズ合同会社、フィンランドのICEYE(アイサイ)、衛星データとAIによる環境分析やモニタリングサービスを提供する株式会社天地人、JAXA、NIKKEI 宇宙プロジェクト、三井住友海上火災保険株式会社などが出展していた。