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Adobe、無料の「Creative Cloud Express」投入。デザインの心得がなくても高品質コンテンツを簡単に作成可能に
2021年12月14日 10:51
Adobeは、12月13日(現地時間、日本時間12月14日)に米国で記者会見を開催し、同社のサブスクリプション型クリエイターツールCreative Cloudの新しいファミリー製品となる「Creative Cloud Express」を発表した。基本機能を無料で利用できるのが特徴で、追加のクラウドストレージやプレミアムアセット/フォントなどが使えるプレミアムプランは月額1,078円、年額1万978円と比較的安価に用意されている。
従来のCreative Cloudは、プロフェッショナルなユーザーをターゲットにしたツール群で、PhotoshopやPremiere Proといったプロ向けのツールがサブスクリプション形式で提供されるサービス。すべてのツールを含むコンプリートプランは月額6,248円(年間7万2,336円)という価格設定であり、今回のCreative Cloud Expressのリーズナブルさが際立っている。
PhotoshopやPremiere Proの使い方を知らなくても手軽に高品質な編集を可能にするCreative Cloud Express
今回発表された「Creative Cloud Express」は、従来のCreative Cloudの入門版として位置づけられる。元々は「Adobe Spark」という名称で提供されていたアプリケーションのうち「Spark Post」と呼ばれていた製品がベースになっており、ブランド名称や機能などが大幅に改良されている。
Creative Cloudが、Photoshop、Lightroom、Premiere Pro、Illustratorなどを使用するプロを対象にしているのに対して、Creative Cloud Expressはそうしたツールには精通していないようなユーザーを対象とし、誰でも手軽に高品質なコンテンツが作れることを目指したツールとなる。
例えば、写真の背景を削除して、人物だけを切り抜きたいというのはPhotoshopの基本的な使い方の1つだ。しかし、それを行なうには、まずその人物の領域を指定して、切り抜く必要があり、初めてPhotoshopを使う人にとってはどうしたらいいか見当がつかないだろう。
Photoshopには「被写体を選択」という機能が用意されており、切り抜きたい被写体を、AI(Adobe Sensei)が自動で判別して、髪の毛などの本来であれば指定が難しい部分の選択を自動で行なってくれる機能がある。しかし、それも知っていれば分かる話であって、基本的な機能を知らなければ、そこにたどり着けないはずだ。
それに対してCreative Cloud Expressは、そうした機能に対する前提知識がなくても使えるように配慮されている。人物を切り抜きたいときには「背景を削除」という分かりやすい名称で機能が用意されており、そこに写真をドラッグ&ドロップするだけで背景だけを切り抜いてくれるのだ。
ほかにも、「GIFに変換」、「ビデオサイズ変更」、「画像サイズを変更」などの目的に応じたクイックアクションが用意されており、ツールの使い方を知らなくても写真や動画を手軽に編集できる。実際にWindows向けのPWA(Progressive Web Apps)版で使ってみたが、簡単に人物を切り抜いて、手軽にコンテンツを作れることを確認できた。
これにより、画像や動画を手軽かつ高品質に編集したいというユーザーのニーズに応える。例えば、中小企業やレストランなどといった、PhotoshopやPremiere Proに精通した専任のデザイナーを置くことができないような規模の事業者であっても、Creative Cloud Expressを利用することで、見栄えのする自社ロゴを作成できる。
また、ビジネスパーソンが、PowerPointのスライドを作成する時に、Creative Cloud Expressで手軽に切り抜き画像をスライドに取り込むなどといった使い方が考えられるだろう。
テンプレートやAdobe Fontsを利用して簡単に高品質な自前のアセットを作成できる
同社CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏は「今回発表するCreative Cloud Expressは、Adobeにとって新しい章の始まりだ。我々はCreative Cloudでクリエイターの利便性を向上してきたが、Creative Cloud Expressではそれをすべての人に広げていく。Creative Cloud Expressではテンプレートやフォントなどを充実させており、手軽に創造性を発揮することができる」と述べており、クリエイティブなツールを一般的なユーザー層に広げていく意味があると強調した。
Adobeによれば、Creative Cloud Expressには、数千におよぶテンプレートが用意されており、自分で最初からデザインするのが難しい場合にそれらを下地に作成することができる。
また、AdobeがCreative Cloudの一部として提供している最大で2万にもおよぶAdobe Fontsのフォントや、ロイヤルティーフリーで利用できるAdobe Stockのイメージも利用可能(無料プランは制限がある)。そうしたアセットを活用して高品質なコンテンツを作成し、InstagramやFacebookに投稿したり、YouTubeのサムネイルとして利用したりといったことが可能になっている。
Creative Cloud Expressの機能はWebベースでも使うことができ、無料プランでは2GBのクラウドストレージと組み合わせて利用可能。また、Android、iOS(iPhone、iPad)向けのモバイルアプリも用意されており、スマートフォンやタブレットからも利用できる。
WindowsやmacOSであれば、Webブラウザから使えるほか、Windows向けにはPWA版のアプリがWindows Store経由で配布される。すでにそれぞれのプラットホームのアプリストアからダウンロード可能になっており、日本語版の提供も開始されている。
- Microsoft StoreのCreative Cloud Express
- Apple StoreのCreative Cloud Express
- Google Play StoreのCreative Cloud Express
無料プラン | プレミアムプラン | |
---|---|---|
テンプレート | 数千 | すべてのプレミアムテンプレート |
Adobe Stock | 一部 | 全コレクション |
編集機能など | 基本機能 | カットアウト編集、サイズ変更などのプレミアム機能 |
タップ1回でブランディング/ ロゴ/カラー/フォントを追加 | - | 対応 |
PDFへの双方向変換/書き出し | - | 対応 |
CCライブラリの活用 (テンプレート/アセットの作成、管理、共有) | - | 対応 |
アプリ | Web/モバイル | Web/モバイル |
クラウドストレージ | 2GB | 100GB |
料金 | 無料 | 月額1,078円/年額1万978円 |
基本的な機能は無料プランで提供されるが、Adobe StockのアセットとAdobe Fontsの利用に制限があり、クラウドストレージは2GBまでとなっている。すべてのAdobe Stockのアセット、2万におよぶAdobe Fonts、さらにはプレミアム機能(カットアウト編集、リサイズ、グラフィックグループ)、PDFへの変換、100GBのクラウドストレージを利用したい場合にはプレミアムプランへの登録が必要だ。
無料プランでも多数の機能が利用できるので、まずは無料プランを試し、必要ならプレミアムプランに移行するのが良いだろう。なお、すでにCreative Cloudのコンプリートプランを契約している場合には、プレミアムプラン相当のCreative Cloud Expressが利用可能となっている。