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Adobe、無料の「Creative Cloud Express」投入。デザインの心得がなくても高品質コンテンツを簡単に作成可能に

Adobeが公開したCreative Cloud ExpressのWindowsストアアプリ(PWA版)、誰でも手軽に写真や動画を編集し、高品質なコンテンツを作ることができる

 Adobeは、12月13日(現地時間、日本時間12月14日)に米国で記者会見を開催し、同社のサブスクリプション型クリエイターツールCreative Cloudの新しいファミリー製品となる「Creative Cloud Express」を発表した。基本機能を無料で利用できるのが特徴で、追加のクラウドストレージやプレミアムアセット/フォントなどが使えるプレミアムプランは月額1,078円、年額1万978円と比較的安価に用意されている。

 従来のCreative Cloudは、プロフェッショナルなユーザーをターゲットにしたツール群で、PhotoshopやPremiere Proといったプロ向けのツールがサブスクリプション形式で提供されるサービス。すべてのツールを含むコンプリートプランは月額6,248円(年間7万2,336円)という価格設定であり、今回のCreative Cloud Expressのリーズナブルさが際立っている。

PhotoshopやPremiere Proの使い方を知らなくても手軽に高品質な編集を可能にするCreative Cloud Express

Microsoft Store版Creative Cloud Expressを利用して2021年のF1チャンピオンになったマックス・フェルスタッペン選手のお祝いカードを作ってみたところ。こんなコンテンツも手軽に作ることができる、ちなみに作成にかかった時間は数分とあっという間に完成した

 今回発表された「Creative Cloud Express」は、従来のCreative Cloudの入門版として位置づけられる。元々は「Adobe Spark」という名称で提供されていたアプリケーションのうち「Spark Post」と呼ばれていた製品がベースになっており、ブランド名称や機能などが大幅に改良されている。

 Creative Cloudが、Photoshop、Lightroom、Premiere Pro、Illustratorなどを使用するプロを対象にしているのに対して、Creative Cloud Expressはそうしたツールには精通していないようなユーザーを対象とし、誰でも手軽に高品質なコンテンツが作れることを目指したツールとなる。

 例えば、写真の背景を削除して、人物だけを切り抜きたいというのはPhotoshopの基本的な使い方の1つだ。しかし、それを行なうには、まずその人物の領域を指定して、切り抜く必要があり、初めてPhotoshopを使う人にとってはどうしたらいいか見当がつかないだろう。

 Photoshopには「被写体を選択」という機能が用意されており、切り抜きたい被写体を、AI(Adobe Sensei)が自動で判別して、髪の毛などの本来であれば指定が難しい部分の選択を自動で行なってくれる機能がある。しかし、それも知っていれば分かる話であって、基本的な機能を知らなければ、そこにたどり着けないはずだ。

元の写真を読み込んで「背景を削除」を選ぶだけで簡単に背景を削除して人物だけを切り出すことができる。ただ写真を選んで「背景を削除」を押すだけと文字通りワンタッチ

 それに対してCreative Cloud Expressは、そうした機能に対する前提知識がなくても使えるように配慮されている。人物を切り抜きたいときには「背景を削除」という分かりやすい名称で機能が用意されており、そこに写真をドラッグ&ドロップするだけで背景だけを切り抜いてくれるのだ。

 ほかにも、「GIFに変換」、「ビデオサイズ変更」、「画像サイズを変更」などの目的に応じたクイックアクションが用意されており、ツールの使い方を知らなくても写真や動画を手軽に編集できる。実際にWindows向けのPWA(Progressive Web Apps)版で使ってみたが、簡単に人物を切り抜いて、手軽にコンテンツを作れることを確認できた。

Adobeが行なった会見ではサンフランシスコの有名なレストラン「百福」のオーナーであるデビッド・チャン氏が登場し、Creative Cloud ExpressでメニューやSNSへ投稿するコンテンツを作成する様子などが公開された

 これにより、画像や動画を手軽かつ高品質に編集したいというユーザーのニーズに応える。例えば、中小企業やレストランなどといった、PhotoshopやPremiere Proに精通した専任のデザイナーを置くことができないような規模の事業者であっても、Creative Cloud Expressを利用することで、見栄えのする自社ロゴを作成できる。

 また、ビジネスパーソンが、PowerPointのスライドを作成する時に、Creative Cloud Expressで手軽に切り抜き画像をスライドに取り込むなどといった使い方が考えられるだろう。

テンプレートやAdobe Fontsを利用して簡単に高品質な自前のアセットを作成できる

Adobe CEO シャンタヌ・ナラヤン氏

 同社CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏は「今回発表するCreative Cloud Expressは、Adobeにとって新しい章の始まりだ。我々はCreative Cloudでクリエイターの利便性を向上してきたが、Creative Cloud Expressではそれをすべての人に広げていく。Creative Cloud Expressではテンプレートやフォントなどを充実させており、手軽に創造性を発揮することができる」と述べており、クリエイティブなツールを一般的なユーザー層に広げていく意味があると強調した。

様々なテンプレートが用意されており、それをベースに作成可能
写真はLightroom(クラウド版)に保存している写真やDropboxやGoogleフォトに保存している写真などクラウドの写真も読み込めるし、ローカルストレージの写真も利用できる
Adobe Stockで公開されているストックフォトも利用可能
最大で2万におよぶAdobe Fontsのフォントを活用できる

 Adobeによれば、Creative Cloud Expressには、数千におよぶテンプレートが用意されており、自分で最初からデザインするのが難しい場合にそれらを下地に作成することができる。

 また、AdobeがCreative Cloudの一部として提供している最大で2万にもおよぶAdobe Fontsのフォントや、ロイヤルティーフリーで利用できるAdobe Stockのイメージも利用可能(無料プランは制限がある)。そうしたアセットを活用して高品質なコンテンツを作成し、InstagramやFacebookに投稿したり、YouTubeのサムネイルとして利用したりといったことが可能になっている。

既にiOSやAndroidのアップストアに公開されている
iOS版アプリ
iPad版アプリ

 Creative Cloud Expressの機能はWebベースでも使うことができ、無料プランでは2GBのクラウドストレージと組み合わせて利用可能。また、Android、iOS(iPhone、iPad)向けのモバイルアプリも用意されており、スマートフォンやタブレットからも利用できる。

 WindowsやmacOSであれば、Webブラウザから使えるほか、Windows向けにはPWA版のアプリがWindows Store経由で配布される。すでにそれぞれのプラットホームのアプリストアからダウンロード可能になっており、日本語版の提供も開始されている。

【表】Creative Cloud Expressの無料プランとプレミアムプラン
無料プランプレミアムプラン
テンプレート数千すべてのプレミアムテンプレート
Adobe Stock一部全コレクション
編集機能など基本機能カットアウト編集、サイズ変更などのプレミアム機能
タップ1回でブランディング/
ロゴ/カラー/フォントを追加
対応
PDFへの双方向変換/書き出し対応
CCライブラリの活用
(テンプレート/アセットの作成、管理、共有)
対応
アプリWeb/モバイルWeb/モバイル
クラウドストレージ2GB100GB
料金無料月額1,078円/年額1万978円

 基本的な機能は無料プランで提供されるが、Adobe StockのアセットとAdobe Fontsの利用に制限があり、クラウドストレージは2GBまでとなっている。すべてのAdobe Stockのアセット、2万におよぶAdobe Fonts、さらにはプレミアム機能(カットアウト編集、リサイズ、グラフィックグループ)、PDFへの変換、100GBのクラウドストレージを利用したい場合にはプレミアムプランへの登録が必要だ。

 無料プランでも多数の機能が利用できるので、まずは無料プランを試し、必要ならプレミアムプランに移行するのが良いだろう。なお、すでにCreative Cloudのコンプリートプランを契約している場合には、プレミアムプラン相当のCreative Cloud Expressが利用可能となっている。