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すべての企業がAIになる。孫正義氏とNVIDIAフアンCEOが対談

 10月29〜30日の期間で「SoftBank World 2020」がオンライン開催された。テーマは「この時代を乗り越えるテクノロジーが、ここにある。」

 1日目にはソフトバンクグループ株式会社 代表取締役会長 兼 社長の孫正義氏による基調講演が開催された。基調講演にはNVIDIA 創業者/CEOのジェンスン・フアン(Jen-Hsun Huang)氏も登壇し、対談が行なわれた。既報のとおり、ソフトバンクグループは2016年に320億ドルで買収したArmを、今年(2020年)9月14日に400億ドルでNVIDIAに売却すると発表している(NVIDIAがArmを4.2兆円超でソフトバンクから買収参照)。

クラウドとエッジのAIが統合される時代へ

 ソフトバンクグループ株式会社代表取締役会長兼社長の孫正義氏は、冒頭、「AIの時代が来た。AIは大学の研究室、企業の研究開発の場から、さまざまな会社の事業として活用されるようになった。AIはクラウド側で発展を遂げてきたが、これからエッジサイドにも盛り込まれる。エッジとクラウドが相互にやりとりしながらインテリジェンスを高める時代がやってきた。

 Armはエッジコンピューティングにおける世界最大の会社。今回、われわれの売却によりArmとNVIDIAが合併する。そしてソフトバンクグループはNVIDIAの筆頭株主になる。ジェンスン・フアン氏と語った夢が現実になる。AIはもっともエキサイティングな次の10年の時代を迎える」と語り、NVIDIAのビジョンを紹介した。

 NVIDIA創業者/CEOのジェンスン・フアン氏は、NVIDIAの開発者年次会議GTCについて改めて紹介。NVIDIAは医学、科学、ロボット工学、自動運転にとくに注力している。ツールやSDKなどソフトウェアの開発と生産性を高めるためのチップやシステムにも力を注いでいると述べた。

 そして「AIこそが現代のもっともパワフルなテクノロジである」と強調。現代は「歴史上はじめてコンピュータ自身がソフトウェアを書けるようになった」と続け、未解決の問題を解くために「人間には書けないようなソフトウェアを書ける極めてパワフルなコンピュータを構築できる」と述べた。孫氏が今日を予測していたことを指摘し、コンピュータサイエンスは新しい時代を迎えていると語った。

 孫氏もこれに応え、コンピュータがコーディングを行なうことで膨大な時間を節約でき、人間は創造的な活動に集中できると述べた。フアン氏も人の創造性のすばらしさを強調。同時に、コンピュータには人間には不可能な膨大なデータを用いた問題解決が可能だと述べ、「AIの優位性は膨大な量のデータから学べる能力。アルゴリズム自体が万能の関数近似器のようなもの。膨大な量のデータから関数を学び取ることもできるし、将来を予測することもできる」と続けた。

コンピュータ自身がソフトウェアを書ける時代に
コンピュータの優位性は規模の大きさ

AIが次のコンピューティングの主目的

 そして2人の業界への最大の貢献は「AIが最新のコンピュータ科学だという認識を広めたことでしょう。10年前に認識できたことは画期的洞察だった」と振りかえった。

 NVIDIAは技術開発に累計250億ドル投資しており、200万人の開発者たちとつながっている。同社の並列コンピューティングアーキテクチャのCUDAは昨年(2019年)1年間だけで600万回ダウンロードされ、CUDAベースのGPUは10億個出荷されているという。そしてコンピュータの歴史を振り返ると、現在使われているおもなコンピュータはArmのX86とNVIDIAのCUDAだと述べた。

CUDAベースGPUは10億個出荷

 孫氏は、コンピュータのアーキテクチャは求められる機能によって変わって来たと語った。孫氏によればコンピューティングの第1段階は演算機能、第2段階は記憶、第3段階は検索だ。こうしたコンピューティングの目的の変化にうまく気づけた企業が成功を収めてきたと指摘した。

 そして今やコンピュータには目や耳ができた。画像認識や音声認識ができるようになりはじめた。コンピュータの目的もこれまでと違うものになる。フアン氏も「知能、すなわちパターン認識、推論、計画推定をコンピュータは大規模に行なえる。だからこそ今というAIの時代は重要だ」と応じた。多くのタスクでコンピュータが人間を上回りはじめている。人は多くの問題の解決にそれを役立てることができるからだ。

すべての企業がAIになっていく

 孫氏は、コンピュータはコンテキストを理解できないと言われることに対して、「人が論理で理解できるなら、論理があるかぎりコンピュータもコンテキストを理解できるはず。コンテキストは論理に基づいたものなのですから」と答えていると述べた。

 フアン氏は、飛行機と鳥の比較を例に出し、「思考に似たスキルをコンピュータは実行できる。人間と同じ方法で思考する必要はない。AIは24時間働けるし、複製もできれば大規模稼働が可能だ。情報量が多すぎて人には不可能なパターン認識もAIならできる」と述べて、サイバー犯罪摘発や詐欺行為検出にAIは使われていると語った。

 世界経済規模の140兆ドルのうち1兆ドルがサイバー犯罪のせいで失われており、NVIDIAの技術を使えば、多数の攻撃者による侵入パターンをAIで認識することでミリ秒単位で侵入を断ち切ることができ、すでにアメリカンエクスプレスで使われているという。

孫氏「コンピュータも文脈を理解できるはず」
アメックスはAIを使った不正検出技術を利用している

 また、買い物や小売販売も無駄が多いと指摘し、支払い手続きの手順の間違いだけで年1.5%の損失が出ていると述べた。孫氏も「小売業にとって永遠の課題は仕入れ量を最適化すること」と述べ、コンピュータはそうした思考の専門家になれるし、多くのデータをもとにした予測が可能であり、個々の顧客に対する最適な価格設定や、最適なリコメンデーションもできると語った。

 NVIDIAの技術はウォルマートでも活用されており、地域や店舗によって異なる購買傾向や季節変動に応じて自動で在庫計画を立てているという。フアン氏は「将来的にはウォルマートという企業は1つの巨大なAIと同義語となる。すべての企業がAIになっていく」と語った。孫氏も銀行はすでに典型例だと答えた。

 そしてフアン氏は「決定を下すのは人間だ。人を助けたいと思ったなら、AIが価格変更を提案しても据え置くのが人間だ」と述べ、孫氏も「AIは判断や意思決定のための道具だが最終目標は人間の幸福だ」と語った。

必要在庫を膨大なデータをもとに予測可能
AIの最終目標は人間の幸福

AIは企業の基幹システムになる

 ネットに蓄積されるデータ量は急増中で、すべてを検索することも不可能になりつつある。そのためインターネットの主力分野も検索からリコメンデーションに移った。フアン氏はそれらのリコメンデーションエンジンを第1世代のAIと呼び、当時はそのための手法やソフトウェアをスタックを設計したりしていたが、すべてはクラウドで行なわれていたと語った。次の段階は全産業で活用されるようになるという。

 そしてアストラゼネカとグラクソスミスクラインと協働して進めている「CAMBRIDGE ONE」というゲノム研究向けスパコンを紹介した。ケンブリッジ大学がコンピュータサイエンスの生まれ故郷であることから名づけたという。目的はAI創薬だ。

 AzureとNVIDIAのAIをMicrosoft Officeにつなげると発表した件についても触れた。Officeがメールを要約したり作業の優先順位を決めたりしてくれるという。また、農業機械メーカーのジョン・ディア(John Deere)との農業への活用、日本のファナックとの協業、クボタとの協業なども進めていると紹介。「AIの第2世代は企業の基幹システムだ」と語った。

CAMBRIDGE ONE
Microsoft OfficeにNVIDIA AIが取り入れられる

すべてがロボットになり、自動運転は巨大産業へ

 そして「すべての企業がAIへと変容する」。それがAIの第3世代で、「AIが外の世界へ開放されるときこそ最大の機会がもたらされる。すべてがロボットになる。建物もロボットになるし車もロボット、歩行を助ける未来の義足はロボットだ。これは巨大産業だ」と述べて、自動運転の現状を紹介した。少なからぬ人が完全自動運転には疑問を持っているが、孫氏とフアン氏は自動運転は絶対可能だと考えているという。

 フアン氏は自動運転は3種類に分かれると述べた。1つ目は自動化された運搬車両だ。物流センターや倉庫など屋内の閉鎖環境、または屋外で時速8-24km程度でゆっくり動く。

自動化された運搬車両から自動運転ははじまる
物流センターや工場でも活用される

 2つ目は一定エリアのなかをバスや路面電車のように決められたルート上を走るものだ。それらは目に見えないデジタルのレールの上を走るようなものだと考えられるという。そしてそれが可能だとわかると多くの改良やコスト削減や長距離化は非常に速く進む。それが工学の性質だと述べた。

 危険性に対する懸念は消えない。しかし2人は自動運転は人間の運転より安全だと語った。納得してもらうには辛抱強く証拠を見せていくしかないという。

いったん可能だとわかると改良は急速に進む
自動運転は人間よりも安全だという

 3つ目は乗用車だ。フアン氏は乗用車は必ずしも完全自動運転だけではなく、「運転経験を今よりも快適で楽しいものにできればそれでいい。乗用車の自動運転とは実質的には運転支援が高度化したものだ。どんな道路状況でもまったく人の運転と変わらずに走行できる自動運転車が必要だと思い込む必要はないし、運転する喜びを実現するために完璧である必要はない」と語った。孫氏は同意し、人が運転する車は乗馬のように趣味の領域で残ることになるだろうと述べた。

乗用車の自動運転は運転支援高度化
人は趣味として運転することになる

ArmとNVIDIAを組み合わせることが合理的

 フアン氏は自動運転車だけではなく、すべての船舶も自動操縦になるし、デバイス開発のなかで個人的にもっとも楽しいものは人工装具のように身体装着デバイスだと述べた。人工装具を必要としている人は3,000万人から4,000万人いると見積もられている。街中ではあらゆるところでロボットを見かけるようになるだろうと語った。

 孫氏は「それらはすべてエッジAIだ」と指摘し、AIはエッジとクラウドで相互通信しながら超並列処理をする必要があり、シームレスにやりとりしなければならないと述べた。

 クラウド側はAIの開発に用いられ、エッジ側に実装される。近未来、建物や街路、倉庫や工場などあらゆるものがエッジAIになる。エッジで収集されたデータや間違いはクラウドに集約されて、学習され、またエッジに送り返される。フアン氏はこれを「学習の輪を持つ永久学習機械」と呼んだ。エッジはクラウドの入力であると同時に出力でもあるわけだ。

身体装着デバイスの開発も進む
エッジAIとクラウドAI
エッジとクラウドがシームレスにやりとり
エッジ側で情報が収集されクラウドで集約され、AIが改良される

 そしてフアン氏は再び「コンピュータシステム、アーキテクチャの視点からすると、今日のクラウドとAIはx86とNVIDIAで構成されている」と語り、「エッジ側に使われているのはArm。だからArmとNVIDIAを組み合わせるのは合理的。NVIDIAのAIを世界でもっとも普及したエッジCPUと組み合わせて使うということだ」と述べた。

 Armのすばらしさは普及率とエコシステムだと述べ、孫氏の質問に答えるかたちで、現在Armを使っている500のチップセット事業者は引き続きArmのライセンスを使用したような用途向けにデプロイできると述べた。

 さらに、「NVIDIAの夢は、NVIDIAのAIをArmエコシステムに参加させることだ。エコシステムには既存顧客やパートナーを通じて入っていくしかない。ライセンシーにもっと多くの価値を提供したい」と述べた。もっとも重要なことはビジョンであり、エッジに組み込まれているArmに対してNVIDIAのAIを提供したいと語った。

ArmとNVIDIAを組み合わせることが合理的
現在のライセンス契約を今後も継続する

AIは人類の味方

 フアン氏は「次世代のインターネットはさらに巨大化する」と指摘。孫氏は、将来出荷されるだろう1兆個のチップセットによって高速かつ大量に生産される知能が自律的に思考し情報提供できるようになるだろうと語った。

 フアン氏は「数十億の人間の代わりに数兆個のデバイスが働く。24時間常にインターネットに接続する。次世代インターネットは桁違いの規模になる。解決できなかった問題への解に満ちあふれた世界となる」と述べた。

 たとえばいまCOVID-19によるパンデミックの最中だが、AIは創薬にも用いられている。フアン氏は「これまでの人類史での脅威は戦争だったが、これからは生物学的なものになり、それらの脅威は目に見えない。唯一の解決策は早期発見し、治療法やワクチンを速やかに開発すること。唯一の方法がAIを使うこと。多くの国が防衛力を増強している」と語った。

 孫氏はビジョンファンドの投資先が心臓発作が起こる14日前に予測できるシステムの開発を行なった事例を紹介。ほかの病気についてもAIを用いることでリスクを下げることができるだろうと述べた。そして「AIは人間の敵だという人もいるがまったく逆。生産性をたけ、解決困難だった問題を解消できる」と語った。

AIが創薬を支援
AIが諸課題を解決する助けになる

技術革新を認識する

 フアン氏は、孫氏に対し、「あなたは初期の頃からコンピュータ革命を正しく認識していた唯一の人。パソコン革命、インターネット革命、携帯革命をもたらした。AI革命に気づくのも早かった。そうした進歩を見逃さずに認識し、利益も得た人物はあなた1人だ」と絶賛。孫氏は「うれしいがまだ非力な個人だ」と謙遜して応えた。

 フアン氏は続けて今回の技術革新には社会に認識してもらいたい影響があると述べた。現在価値の高いスキルはコンピュータサイエンスとプログラミングだが、それらを持たない人たちは取り残されている。だからこれまで長いあいだ、できるだけ多くの人がコンピュータプログラミングスキルを身につけるべきだと考えられてきた。だが全人類がスキルを身につけられる可能性は低い。

 しかし、今回の革新によって、コンピュータ自身がプログラムを書けるようになった。これによって万人が等しくコンピュータによる利益を得られるようになる。コンピュータ業界だけではなく多くの業界が恩恵を受けるようになると述べた。

 そして「ハイテク業界で働いてプログラミングスキルを持つ人は全人口の0.5%しかいないが、99%の人は人にものを教える方法は知っている。コンピュータにスキルを教えれば、コンピュータはそれを習得し、自動化もしてくれるようになった。今やテクノロジの民主化が完了した。AIはソフトウェアであり、スキルを自動化すること。多様な事例を見ても経済に革命を巻き起こす」と述べた。

 孫氏は「コンピュータ、つまりAIは私たちのアシスタントになり、パートナーになる。次にメンターになるということですね」と応えた。

 そして「個々の人間が成功するために重要なことは大きな夢や願望を思い描いていくこと。AIというアシスタントやパートナーを得て実現していけるようになる。したがって将来成功する人は強い願望や夢を思い描けた人ということになる。私たちは創造性を提供したい」と語った。

 フアン氏も「起業家には限界を押し広げてしまうような夢や願望、不合理なまでの期待の高さがある」と孫氏が以前語っていたことについて触れて、仲間たちのほかAIにも支えられて人は夢を実現していくようになるのだろうと述べた。

強い願望や夢を思い描く人が成功する
人はAIに支えられて夢を実現するようになる

デジタルツイン

 ここで、日本はAI全盛期に突入しようとしていると確信していると述べた。日本の産業は精密工業や機械が中心で、インターネットにそれほどの重きを置いていない。そのためコンピュータサイエンスによる恩恵をこれまで受けることができずにいた。

 だが今後は機械、ロボット、工場が自動化する。これらは日本がトップの地位を誇る業界であり、そうした業界へのAI導入の機が熟したと述べて、NVIDIAの「Omniverse」を紹介した。

 「Omniverse」は現実そっくりの仮想世界で、そのなかでバーチャルな工場を作り、ロボットにスキルを教え、プログラミングしてシミュレーションすることができる。「夜に人が寝ているあいだにAIが製造工程を最適化してくれる。最適段階に達したと思ったら青写真をダウンロードして現実でそれを作ればいい」という。

 つまり、物理現実と仮想現実にデジタルツインとして工場のコピーが2つ存在するので、仮想現実で最適化や改善を行ない、シミュレーションして効果を検証したあとに物理世界で変更を加えることができる。フアン氏は「仮想現実とロボット工場からなる将来、ロボットがロボットを作る未来、これがすべてを変えていく」と述べた。

 孫氏は「AIをエレクトロニクスに統合することで、メカトロニクスの経験がない国でもロボットを導入できるようになる。AIを世界を変えようとする情熱的な願望を抱く人たちに提供したい」と語った。

次の10年がはじまろうとしている

次の10年の主役はフアン氏だと語る孫氏

 孫氏とフアン氏は4年前に、孫氏の自宅の庭で2人だけで3、4時間語り合ったという。そのなかでジョブズの思い出も話したそうで、iPhoneがこの10年で世界を変えたように、次の10年の主役はあなただと孫氏は語りかけた。AIコンピューティングの時代が来る、その時代に万人が使いたいと願い、使わざるを得ないツールを提供するからだという。

 そして「新たな産業、科学、教育、コミュニケーションがそこから生まれる。とても刺激的だ。次の10年がはじまろうとしているのだから。今ほど刺激的な時代はない」と語った。

 フアン氏も「将来がこれほど有意義な時代になっていくと思えたのが今がはじめて。思い描いてきたAIに手で触れられるほどまで近づいてきた。NVIDIAは世界各地でAI研究者を雇用している。毎日のようにすばらしいことが起きている」と述べた。

 Zoomはいま世界中で使われているがネット帯域を大量に消費する。しかしアイコンタクトが取れないといった課題がある。そこで動画を送信するのではなく、システムが顔を認識してローカルで再構成することにより、通信消費量を10分の1まで削減でき、かつ、対話する人と目を合わせるような対話システムを実現できたという。

 しかも将来的には自然言語理解と音声翻訳を組み合わせることで、ビデオ会議を通じて互いに言語の壁を意識せずに対話することができるだろうと述べた。

AIビデオ圧縮技術
自然言語理解と音声翻訳を組み合わせることも

 孫氏は最後に「AIは人間だけでなく地球上すべての生物の役に立つ。これからの世界は希望に満ちたものになる」と述べた。

 フアン氏は「4年前に語り合ったことの多くが現実となっている。あなた自身のAIの未来についての夢も語った。そんなあなたからArmの未来を託してもらったことに感謝している。Armは至宝の1つだから」と述べ、「あなたが電話をくださったとき、私は最後の、そして最高額の入札者となるだろうと申し上げた。払った金額をはるかに超える価値をもたらしてくれるだろう。NVIDIAは世界一普及したCPUとAIコンピューティングを融合させた企業となっていき、AI時代に適応した企業へと進化していく。Arm買収はそのためのエキサイティングなきっかけだ」と語った。

 孫氏は、「4年前に夕食をともにしたあのとき、まさにArm買収を決めようと思った。そしてArmとNVIDIAを組み合わせた開発について考えていた」と述べて、「2人で話し合ったことが現実化していくのを見て本当にうれしく幸せ。どうもありがとう」と対談を締めくくった。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資しているAIスタートアップ

 続けて、孫氏は、「グループではAIを実際に活用してスタートアップが続々生まれて来ている。100社くらいソフトバンク・ビジョン・ファンドで投資しているなかからいくつかを紹介する」と述べ、新型コロナに対する抗体の開発を行なっているVir Biotechnology(ヴィア・バイオテクノロジ)、AIやロボットを使った実験で劇的にコストを削減して新素材開発を行なっているZymergen(ザイマージェン)、量子物理学とAIを結びつけてロボットで新しい組み合わせを見つけようとしている創薬企業XtalPi(晶泰科技)、心臓疾患を予測できるデジタルヘルスチェックのBiofourmis、中国の教育スタートアップZuoyebang、インドでスマートフォンのカメラを用いてメガネ選びサポートや視力診断・メガネ販売を行なっているlenskart.com、ソフトバンクビジョンファンドが筆頭株主となっておりカリフォルニアなどですでに動いている配送ロボットのNuro、TikTokを運営するByteDance、AI住宅売買プラットフォームのBeike(貝殼)、AIをすべての工程に導入している韓国小売のcoupang(クーパン)を紹介した。

 最後に、「計算、検索からAIを使ってコンピュータが認識、理解、クリエイトするところまでいく。情報革命で人々を幸せにしたい。AIは人をもっと快適で豊かで愉快な生活をもたらしてくれる。そのためにこの革命は進む。ぜひこのエキサイティングな時代に生まれたことを幸せだと思い、この革命に貢献していきたい。日本の多くのビジネスマンのみなさんも革命の潮流に遅れないように一緒にがんばっていきましょう」と基調講演全体を締めくくった。