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ゲーム性能の強化には「ビデオカード交換」が効果大!

~でもその前に知っておきたいパーツの選びのポイント

 PCを使い慣れてくると感じる“なんだか遅い!”という状態。ゲームが遅いと感じたらまずすべきは「描画負荷を減らす」、つまり画質設定や解像度を下げることだ。しかし描画負荷を減らしてもまだ重い、あるいは画質や解像度をこれ以上下げたくないと感じたらハード強化。つまりビデオカードを交換するときだ。(TEXT:加藤勝明

PCの現状を把握して必要な対策を見きわめる

 まずは今自分がどんなGPUでゲームをプレイしているのか、そもそもビデオカードは交換できるのか確認しよう。とくに重要なのが後者で、超小型PCやノートPCだとこれはかなりのハードル(手がないわけではないがコスパは難アリ)。その点、自作PCで広く利用されているタワー型のPCケースであれば交換にトライしやすい。とはいえ、ビデオカードのサイズ確認は必須で、電源ユニットの補助電源コネクタは足りるのか、自分のディスプレイに接続できるディスプレイ出力はあるのか、などの要素も確認しておこう。

現状が分かったら乗り換え先を検討

 ビデオカードが物理的に交換できることを確認できたら、次は乗り換え先の選定だ。今使っているビデオカードよりも強力なGPUを搭載していなければ、ゲームの動作改善にはつながらない。GPUの型番は世代ごとに増えていくものだが、単純により大きな型番に乗り換えればいい、というわけではない。たとえば今使っているのが「GeForce GTX 970」ならば、現行の「GeForce GTX 1650 SUPER」では型番は上回って見えても性能的にはほぼ横ばい。性能向上を狙うなら、3DMarkのScoreが1.5倍よりも上になるGPUを選ぶのがベスト。下図の例で言うと、GTX 970ならGTX 1660 Tiより上が狙い目だ。

 どのくらいまで上を目指すかは遊びたいゲームにもよるが、「予算の許す限り上ッ!」と言いたいところ。とくに最近の描き込みがリッチなゲームでは、ビデオメモリサイズがキモになることも多い。4GB以下では足らなくなりやすいため6GBが最低ラインだが、8GBより上は体感できないことも多い。

 上位GPUほど消費電力も増えるので、電源出力も気にかけよう。GPUやビデオカードのスペックに推奨電源出力があるが、まずはこれを満たしており、かつ電源ユニットから出るPCI Express補助電源(6ピン/8ピンコネクタの電源ケーブル)が足りるかを確認。補助電源コネクタは変換ケーブルである程度増やすこともできるが、配線が汚くなるし、トラブルの発生源になりかねない。基本的には、電源ユニットが標準で持っているコネクタの範囲内で収まるカードを選ぶか、電源ユニット自体を交換することを推奨する。

GPUメーカーが公表している電源ユニットの推奨出力と補助電源構成
※補助電源構成を公表しているのはNVIDIAのみ
GPU名メーカー推奨の電源出力メーカー推奨の補助電源構成
NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti650W8ピン+8ピン
NVIDIA GeForce RTX 2080 SUPER650W8ピン+6ピン
NVIDIA GeForce RTX 2070 SUPER650W8ピン+6ピン
NVIDIA GeForce RTX 2060 SUPER550W8ピン
NVIDIA GeForce GTX 1660 SUPER450W8ピン
NVIDIA GeForce GTX 1650 SUPER350W6ピン
NVIDIA GeForce GTX 1650300Wなし
AMD Radeon RX 5700 XT600W
AMD Radeon RX 5600 XT550W
AMD Radeon RX 5500 XT450W
自作PCなら、使用中のPCケースのスペック表と、ビデオカードのスペック表を見てみよう。PCケースの表には使用可能なカードの長さが、ビデオカードの表にはカードの長さが記載されていることが多い
写真は同じRTX 2070 SUPERを載せた、ZOTAC製の別製品。サイズの違いはピーク性能の差として表われ、ファンが多くクーラーのサイズが大きいほうが冷却力が高く、より高い性能を引き出せる。ただし、物理的な大きさが導入の障壁となりやすい

CPUも強力なほうがモアベターだが、優先度が高いのはGPU

 ゲームのフレームレートを上げるには高性能なGPUが必須だが、高フレームレートで処理するにはCPU性能もそれなりに必要で、CPUが高性能GPUの足を引っ張ることもめずらしくない。最近のGPUドライバはマルチスレッド化されて、ゲームの処理も複雑化しているため、CPU負荷そのものが上がっている。ゲームの設計にもよるが、描き込みに凝ったゲームほどCPUにもコア数と動作クロックの双方が求められるからだ。さらに、プレイ動画の録画・配信という要素まで絡んでくると、CPUの重要度は一段と高まってくる。

 とはいえゲームにおいてはGPUが絶対的な主でCPUは従。つまりビデオカードを強化せずCPUとマザーだけを強化しても状況は改善しない。予算的にどちらかしか更新できないなら、旧世代CPU+マザーに新しいビデオカードを装着したほうがゲームの快適度は向上する。旧世代CPUではPCI Expressの世代が古いから性能が出ないと考えがちだが、同じシステムでGPUの接続をPCI Express 2.0/3.0/4.0に切り換えてテストしても、ゲームのフレームレートはほんの数%しか変わらなかった。PCI Expressのバス性能がゲームに影響するのではなく、それにつながるCPUの性能が低いから性能が出ないのだ。

ビデオカードはGTX 960搭載カードのまま、マザーとシステムを第2世代Coreから第3世代Ryzenに交換してみたが、ゲームのフレームレートはわずかに向上するのみ。いかにCPUも重要とは言っても、ゲームのパフォーマンスの大半はGPUの性能が握っている

“古い環境であること”が原因のトラブルも

 CPUの性能に不満はなくても、旧世代PCに最新ビデオカードを組み合わせるのはお勧めできない。その理由は旧世代マザーに新しいビデオカードを組み合わせると、映像を出力できないトラブルがあるからだ。これはUEFI BIOSが存在しない時代に生まれた古いマザーと、UEFI登場以降のファームウェアを搭載したビデオカードの組み合わせで発生しやすい。ただ、同じGPUを搭載していても、動く製品、動かない製品があるのが悩ましいところ。特定の組み合わせでの動く・動かないの判定は過去の実績や情報に頼らざるを得ない。UEFIやFast Bootに対応したWindows 8登場以降に発売されたマザーであればマザー側が原因で起動しない心配はないが、Core 2世代や初代Core世代のPCでは、情報収集や若干の試行錯誤が欠かせない。

 さらにUEFIが原因で動かないようなマザーの入ったPCだと、エアフローまわりの設計思想が古いため、ビデオカードの冷却性能が十分に発揮されない可能性も考えられる。新しいビデオカードを使うなら、マザーやPCケースもそれなりに新しいほうがトラブルを未然に回避できるのだ。

今時のビデオカードと古いマザーボードの相性問題は、UEFI化する前のマザーでとくに発生しやすい。画面のようなテキストベースのUIを操作するレガシーBIOS(時期によってはレガシーBIOSのような見た目のUEFIも存在)の環境を使い続けるなら、ビデオカード選びは動作可否の情報も同時に集めたほうがよい
GPU-Zで「UEFI」にチェックが入っていれば、そのビデオカードはUEFI環境でのブートに対応していることを示す。このチェックがないものは世代が古いものの可能性が高く、もう交換すべきだろう
高性能なビデオカードを導入するとGPUの冷却が足りなくなる可能性がある。理想的なのはフロントからリアまで風が吹き抜けるようなエアフロー。これを意識してケースファンの増設や回転数調整を行なおう

DOS/V POWER REPORT 2020年夏号では「おうちPCの強化書」と題し、巣ごもり・テレワークによって性能に不満を感じたPCをさまざまに強化する方法をまとめた特集を掲載している。2020年夏号ではこのほか、巻頭企画「第10世代Core vs. 第3世代Ryzen」、第2特集「最強の簡易水冷クーラーはこれだ!」などを掲載。さらに50ページのPCパーツレビュー連載がスタート。PC自作初心者から上級者までマストバイの1冊です。

【検証環境】

<モンスターハンター:ワールドでの検証>マザーボード:GIGA-BYTE Z390 AORUS MASTER(rev. 1.0)(Intel Z390)、GIGA-BYTE X570 AORUS MASTER(AMD X570)、メモリ:G.Skill F4-3200C16D-16GTZRX(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2 ※Intel環境ではPC4-21300として使用)×2、SSD:GIGA-BYTE AORUS GP-ASM2NE6200TTTD[M.2(PCI Express 4.0 x4)、2TB ※AMD環境で使用]、Western Digital WD Black NVMe WDS100T2X0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB ※Intel環境で使用]、OS:Windows 10 Pro 64bit版、計測方法:集会エリア内の一定コースを移動したときのフレームレートをCapFrameXで計測、OBS Studio:エンコーダはx264を使用し、レート制御/bitレート/CPU使用のプリセットは配信時がCBR/6Mbps/faster、録画時がVBR/10Mbps/mediumにそれぞれ設定、<レインボーシックス シージでの検証>CPU:Intel Core i7-2600K(4コア8スレッド)、AMD Ryzen 5 3600X(6コア12スレッド)、マザーボード:ASUSTeK P8P67(Intel P67)、MSI MPG X570 GAMING EDGE WIFI(AMD X570)、メモリ:CFD販売 ELIXIR W3U1600HQ-4G(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、G.Skill F4-3600C19D-16GSXWB(PC4-28800 DDR4 SDRAM 8GB×2)、SSD(新旧環境共通):Samsung 850 EVO MZ-75E250B/IT(Serial ATA 3.0、250GB)、ビデオカード(新旧環境共通):GALAX GEFORCE GTX 960 EXOC 2GB(NVIDIA GeForce GTX 960)、OS:Windows 10 Pro 64bit版、計測方法:ゲーム内ベンチマーク機能を利用して計測、<Red Dead Redemption 2での検証>CPU:AMD Ryzen 9 3950X(16コア32スレッド)、マザーボード:GIGA-BYTE X570 AORUS MASTER(rev. 1.0)(AMD X570)、メモリ:G.Skill F4-3200C16D-32GTZRX(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2)×2、SSD:GIGA-BYTE GP-ASM2NE6200TTTD[M.2(PCI Express 4.0 x4)、2TB]、OS:Windows 10 Pro 64bit版、計測方法:ゲーム内ベンチマーク機能を利用して計測