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Intel vs. AMDガチ比較! ゲームのfpsは、配信負荷はどうだ!?
~第3世代Ryzen×GPUの最適タッグを検討する
2019年11月9日 11:00
PCゲームの世界では、これまでIntel製CPUが鉄板とされてきた。だが第2世代Ryzenの登場でその定説も怪しくなり、第3世代Ryzenではついに性能面で見劣りしなくなったと言われている。ここでは、Intel、AMDの計6種類のCPUと、2種類のGPUを組み合わせて、ゲーム性能への影響をテストし、CPUとGPUの最適タッグを探ってみる。(TEXT:加藤 勝明)
比較に使用した機材 | |
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CPU | |
AMD | Ryzen 9 3900X (12C/24T、3.8GHz/最大4.6GHz) |
AMD | Ryzen 7 3700X (8C/16T、3.6GHz/最大4.4GHz) |
AMD | Ryzen 5 3600X (6C/12T、3.8GHz/最大4.4GHz) |
Intel | Core i9-9900K (8C/16T、3.6GHz/最大5GHz) |
Intel | Core i7-9700K (8C/8T、3.6GHz/最大4.9GHz) |
Intel | Core i5-9600K (6C/6T、3.7GHz/最大4.6GHz) |
ビデオカード | |
NVIDIA | GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition |
ZOTAC | GAMING GeForce GTX 1660 Ti AMP 6GB GDDR6 |
まずは「3DMark」でCPUの差がどの程度効いてくるのかテストした。3DMarkはCPUによる物理演算性能がスコアに加味されるため、総合スコアはCPUのコア数が多いほうが高くなる。Fire Strikeではクロックの高いIntel CPUのほうが伸びる傾向だが、DirectX 12ベースのTime SpyはCPUのコア数でスコアが伸びることが示された。
さらに各テストにおけるGraphicsテストのみのスコアも比較してみると、Fire StrikeではIntel勢のスコアが明らかに高い傾向が見られる一方で、Time Spyは横並びの差が小さい。さらに、今回テストした中では最多12コアを誇るRyzen 9 3900Xは8コアのRyzen 7 3700Xに僅差で上回られてしまう結果も出ている。総じて見ると、Graphicsスコアから読み取れる素の描画性能はややIntel勢が高めではあるが、どのCPUでも大きな差は出ないと言えるレベルだ。
3DMark v2.10.6771による基本性能テスト
【検証環境】
マザーボード:GIGA-BYTE Z390 AORUS MASTER(rev. 1.0)(Intel Z390)、GIGA-BYTE X570 AORUS MASTER(AMD X570)、メモリ:G.Skill F4-3200C16D-16GTZRX×2(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×4 ※Intel環境ではPC4-21300として使用)、SSD:GIGA-BYTE AORUS GP-ASM2NE6200TTTD[M.2(PCI Express 4.0 x4)、2TB ※AMD環境で使用]、Western Digital WD Black NVMe WDS100T2X0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB ※Intel環境で使用]、OS:Windows 10 Pro 64bit版、レインボーシックス シージ:内蔵ベンチマーク機能で計測、モンスターハンター:ワールド:集会エリア内の一定コースを移動したときのフレームレートをCapFrameXで計測、OBS Studio:エンコーダはx264を使用し、レート制御/bitレート/CPU使用のプリセットは配信時がCBR/6Mbps/faster、録画時がVBR/10Mbps/mediumにそれぞれ設定
軽めタイトル向きの組み合わせは?
まずは軽いゲームの代表格、「レインボーシックス シージ」(R6S)のフレームレートで比較しよう。設定は画質“最高”、レンダースケール100%で、内蔵ベンチマークで算出された総合の平均fpsを比較した。このゲームはGPU負荷が軽いため高いfpsが出やすいが、超高fpsを維持するためにはCPUパワーが必要となる。R6Sはeスポーツ性の強いタイトルゆえfps無制限で検証した。
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本タイトルでは、どの解像度においてもIntel勢はAMD勢よりも高いfpsが出ている。これは前項のFire StrikeのGraphicsスコアと同じ傾向だ。AMD製のCPUは3次キャッシュ量やコア数で優位に立っているものの、高fpsを維持する上ではIntelのクロック重視の設計が有利であることを示している。同じ8C16Tの9900Kと3700Xを対比すれば、R6Sにおける最適なCPUチョイスは明らかだ。ただ、解像度が高くなるにつれてCPUの差は縮まり、4Kにもなると差はわずか。これはGPUの選択に関係ない、R6Sの傾向と言える。
R6SにおけるCPUとGPUの組み合わせは、GPUから決めたほうが分かりやすい。ミドルレンジのGTX 1660Tiを軸に考えるなら、フルHDで平均144fpsをやや超えるIntel製CPUが好適だ。しかしRTX 2080 TiでフルHD/WQHD液晶を使うのであれば、今回取り上げたCPUならどれもオススメ。フルHDかつリフレッシュレート240Hzの超高速ゲーミング液晶でのプレイを想定しても、どのCPUでも平均240fpsを超えているため、見た目で違いを見分けることは難しいだろう。
重めのゲームではCPU選びの方向性も変わる
最近のPCゲームは、以前よりも積極的にCPUを利用するものが多く見られるようになった。このページではR6Sより重めの「モンスターハンター:ワールド」(MHW)で検証を行なった。なお、WQHD以上でのフレームレートを著しく改善するDLSSはすべて無効にしている。
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まずフレームレート無制限の状態で検証すると、Intel勢のフレームレートが出やすい傾向が見られた。この傾向は3DMarkのFire StrikeやR6Sと同様。12C24Tの3900Xでコアの使われ方を見ると、とくにアプリケーション時間は3基のコアに集中し、さらに3基ほど負荷の高いコアが見られる。
6C6Tのi5-9600Kだとゲームを遊んでいるだけで全コアがフル稼働状態となる。ただ、i5-9600Kがフル稼働になるのは高いフレームレートが出せるRTX 2080 Tiだからであって、フルHD時で平均60fps程度にとどまるGTX 1660 Tiの場合は、CPU負荷にもぐっと余裕が出てくる。RTX 2080 TiのようなハイエンドGPUにコア数の少ないCore i5を組み合わせた場合、MHWをプレイする“だけ”ならCPUが足を引っ張ってフレームレートが大きく伸び悩むことはない。
しかしCore i5に余力はなく、バックグラウンドタスクが増えるとCPUがネックとなってハイエンドGPUのパワーが活かし切れなくなる可能性が出てくるのだ。一方GTX 1660 Tiは、MHWの最高画質設定には荷がやや重く、ハイエンドCPUのリソースを使い切るにはほど遠い状況。i5-9600KとGTX 1660 Tiの組み合わせならフルHD@平均60fpsプレイ(最小フレームレートは56.3fps)ができるのでコスト的にムダがないと言える。
AMD勢はややフレームレートが低めだが、6C12Tの3600Xの場合はとくに伸び悩むというデータが得られた。i5-9600Kとクロック的には大差ないのに伸びない理由は、単純にZen 2のアーキテクチャとMHWのシステムのかみ合わせが今一つなのでは、という推論が成り立つ。
モンスターハンター:ワールド(フレームレート無制限、画質“最高”、平均)
ただこの問題はMHWのフレームレート上限を60fpsに設定すればデメリットとは言えなくなる。RTX 2080 Tiの場合はWQHDでもほぼ60fpsに張り付き、GTX 1660 TiもフルHDならほぼ平均60fpsを達成できた。GPUとCPUの組み合わせの最適解は、プレイスタイルも加味する必要があるのだ。
多コア/多スレッドが活きるゲーム配信&録画
最近はゲームを配信や録画しながらプレイする人もそうとうな数存在する。ここでは「OBS Studio」を使い、バックグラウンドでTwitch配信(エンコーダはx264。理由は後述)を行なったときに、プレイヤーから見えるMHWのフレームレートはどう変わるかを調べる。MHWのフレームレートは無制限、計測方法はこれまでと共通だ。
CPUによる動画エンコードの影響でゲーム単体時に見せたIntel勢の優位はほぼ消え去った。数値的にはi7-9700Kがダントツだが、配信時のエンコードミスが続くため、プレイはできるが動画配信としては完全な失敗。RTX 2080 Ti&フルHD環境で配信できたのはIntel勢ではi9-9900Kのみなのに対し、AMD勢は3900X/3700Xともにミスなしで完走、3600Xも一瞬カクついた程度なのでほぼ成功と言ってよい結果に。コア数に余裕のあるAMD勢がとたんに輝き始めた。とくに6C12TのRyzen 5は低コストで高品質な配信を行ないたい方にとって強い味方だ。
一方GTX 1660 Ti環境になるとi7-9700Kもミスなしで完走できる。MHWのフレームレートが伸び切らないため、結果としてCPUの負荷が減り、その分エンコードがミスなく処理できる余裕が発生するからだ。
モンスターハンター:ワールド+Twitch配信時のフレームレート(画質“最高”+x264/CBR 6Mbps/fasterプリセット、平均)
続いて、ゲームプレイ録画を想定したテストの結果を見てみよう。前ページのTwitch配信は筆者のネット環境の問題でやや画質を抑えたが、こちらはローカル保存になるので画質をさらに上げている。Turing世代のGeForceに組み込まれているNVEncを使うエンコードだと“fast”が好適だが、今回はそれより1段重い“medium”設定とした。CPU占有率が前ページよりも上がるため、RTX 2080 Ti環境でエンコードミスなく録画ができたのは12C24Tの3900Xのみというシビアな結果となった。だが、MHWの解像度をWQHDに上げるとMHWのフレームレートが下がるため、i9-9900Kでも、エンコードをしていてもCPUに20%~30%程度の余裕が生まれていた。
GPUをGTX 1660 Tiに変更すると、9900K&3700Xの二つでもエンコードミスが発生しなくなった。RTX 2080 Ti&フルHDではMHWもフレームレートを高く維持しようとするためCPUパワーを吸い取ってしまうが、GPUのグレードを下げたことでMHW側の処理が頭打ちになり、結果としてCPUに大きな余裕ができる。前述のRTX 2080 Tiの解像度上げと同じ理屈だ。配信や録画からエンコードミスを排除するには、単純にCPUのコア数を増やすか、フレームレートを制限することでCPUの負荷を下げ、その分パワーをエンコードに回すのがよさそうだ。なお、i7-9700Kやi5-9600Kといった論理コア数の少ないCPUでも、GTX 1660 Tiで解像度をWQHD以上にすることでエンコードミスは発生しなくなる。しかし、ゲームのフレームレート自体は低くなってしまう。高画質設定で60fps録画を目指すなら、GTX 1660 Tiと組み合わせるのは8C16TのCPUが最低ラインと考えるべきだろう。
GPUはゲームの描画に専念させてCPUパワーだけで配信&録画
今回OBSで使ったTwitch配信(上)と録画(下)の設定。Turing世代のGeForceなので高画質でエンコードできるNVEncが使えるが、CPUの力比べをするにはx264のほうが妥当と判断。NVEncは低負荷だがGPUの余裕でエンコードミス率が決まるからだ
ゲームを楽しむためのCPU/GPUの組み合わせは?
今回人気ゲームを2本試した限りでは、ゲームだけ動かしてフレームレートの高さを重視するのであれば、Intel勢が安定して強い。決して第3世代Ryzenは悪い選択ではないが、1fpsでも多くレンダリングさせるならIntelという印象だ。だがRTX 2080 TiクラスのハイパワーGPUだと、i5-9600Kや3600XなどではCPUが足を引っ張りやすい。最低でもi7-9700K以上の多コアCPUが必要だ。逆に言えば、GTX 1660 TiクラスのミドルレンジGPUで運用するなら、i5-9600Kと3600Xのバランスは優秀だ。
一方、高画質配信/録画を視野に入れた場合は、Intelの場合はi9-9900Kがベストだが、投資に見合うリターンを得られるCPUとは言いにくい。i7-9700Kも決して悪くはないが、8C8Tというスペックはx264の処理には足りない。その点、AMD勢ならi7-9700Kと同価格帯で8C16Tの3700Xが買えるのが魅力的。ミドルレンジのGPUとの組み合わせなら3600Xもよい。
CPU負荷が厳しいならNVEncなどのGPUエンコードに任せてしまえば、CPUはi5-9600Kでも問題はなくなる。だがGPU側に処理を任せた場合、今度はゲーム側にフレームレート制限をかけないと動画のエンコードミスが出やすくなる。プレイヤーが目にするフレームレートを極大化しつつ最高の画質で配信&録画できる自由度も重視するなら、今の第3世代Ryzenにかなうものはないと言える。とりわけ3900Xは、ゲーム単体ではややIntel勢に届かない部分もあるものの、配信&録画時の安定感では大きく凌駕している。
結論1 : 軽めのゲームを予算抑えめで楽しむならコレ
ゲームの設計にもよるが、ゲームを“高フレームレートで遊ぶ”こと、とりわけフルHD環境での快適さを追求するなら、まだIntel製CPUが優勢。そして軽めのゲームならGTX 1660 TiのようなミドルレンジGPUが最適だ。しかし、ゲーム実況配信や動画投稿も考えているなら、見た目のフレームレートは若干落ちるもののRyzenの論理コアの多さが活きてくる。配信はやらないにしても今後のゲームのCPU使用率工場もにらんで長い目で見るならRyzen 5がお買い得と言える。
結論2 : 重量級のゲームを高画質で遊びたい派は
今最強のGPUはRTX 2080 Ti。これならゲームの画質に妥協せずにフレームレートが稼げる。だがGPUの投資をムダにしないためには、CPUもケチってはいけない。今回試したベンチの数値だけ見れば、Core i7-9700Kも資格十分の製品ではあるが、MHWクラスのゲームだともう少し余裕が欲しいところ。Ryzen 7 3700Xもベターな選択ではあるが、ゲームの快適さにおいていまだCore i9-9900Kの右に出るCPUは存在しないのだ。
結論3 : 至高のゲーム配信/録画環境にはコレを揃えよう
ゲームの実況配信や動画投稿を“高画質で”行なうことを考えるなら、Ryzen 9 3950Xがまだ入手できない現状では、3900X以外の選択肢はない。i9-9900Kも魅力だがCPU占有率の高いゲームではエンコードミスも少なくない。GPUはCPUパワーに見合ったものを選び、RTX 2080 Ti/SUPERで。どうしてもAMDで揃えたいというならRadeon VIIではなくRX 5700 XTがよいが、NVEncの存在を考えると、ゲームの最適化諸々含めGeForce系のほうがお得だ。
DOS/V POWER REPORT 2019年秋号では、「自作の王道をぶっ壊せ! 第3世代Ryzenインパクト!!!」と題した特集を掲載しています。IntelとAMD CPUの多角的比較、第3世代Ryzen対応マザーボード紹介やRyzen PC組み立て講座などなど、Ryzen自作関連記事を多数掲載しています。