ニュース
Adobe MAXでHPが「Project Captis」対応の3Dキャプチャ、ワコムがWindows版Frescoをデモ
2019年11月6日 12:09
Adobe MAXは、ソフトウェアメーカーのAdobeが開催している同社のサブスクリプション型クリエイターツール「Creative Cloud」を利用しているクリエイターを対象にした年次イベントだ。基調講演と個別の話題によるセミナーから構成されており、クリエイターがAdobeの新しいテクノロジーやクリエイターツールのよりよい使い方を学ぶことができる。11月4日(現地時間)には基調講演が行なわれ、Photoshop for iPad(和名:Photoshop iPad版)やAeroの製品版の発表、IllustratorのiPad版の開発意向表明などが行なわれた。
また、11月4日の午後からCommunity Pavilionと呼ばれる、AdobeやAdobeのパートナーによる展示会が開催され、Creative Cloudをよりよく活用できるハードウェアなどを各社が展示した。
このなかで、HPはAdobeと協力して、同社のハイエンドワークステーション「Z by HP」や開発中のキャプチャ・ユニットなどの製品を、Adobeが今年(2019年)買収して傘下に収めたSubstance Alchemistに最適化していくことを明らかにした。また、ワコムは、同社のMobile Studio Pro 16で発表されたばかりのFresco Windows版をデモした。
HPとAdobeはSubstance Alchemistに最適化したPCやキャプチャ機器を開発する「Project Captis」を発表
HPは、Adobeと共同で「Project Captis」(プロジェクトキャピティス)という取り組みを行なっていくと発表。この取り組みは、HPが提供しているハードウェア、たとえばZ by HPなどをAdobeのSubstance Alchemistに最適化して、クリエイターがより速く3Dモデリング化を実現するという取り組みだ。
Substance Alchemistは、今年になってAdobeが買収したソフトウェアベンダー「Allegorithmic」が開発したソフトウェアで、新しいかたちの3Dモデリングソフトウェアとなっている。たとえば、3Dゲームなど向けにPhotoshopを操作するような感覚で3Dモデリングを行なえるソフトウェアとして注目を集めている。現在はCreative Cloudの一部ではなく独立して提供されるソフトウェアとなっているが、将来的にはCreative Cloudに統合される可能性もある。
HPはSubstance Alchemistで3Dモデルを作成する場合に、より効率よく作業を行なうことができるよう、ハイエンドワークステーションとなるZ by HPシリーズに接続して利用できる、物体を3Dキャプチャするのに使えるユニットのプロトタイプを展示した。
展示されたのはピラミッド型のキャプチャ・ユニットで、内部に物体を入れて、上部に設置しているカメラで撮影する。必要に応じて内部に設置されているLEDが光、光の加減なども調節して模様などをデジタルに取り込むことが可能になる。
たとえば、自動車を設計するときに、シートの模様などを実際の布からこの機器を使って取り込めば、よりリアリティのあるシートの3Dモデリングを作るなどの使い方が考えられる。HPとAdobeは今後1年かけてこうした製品の開発を行なっていく方針であることを明らかにしている。
ワコムは「Mobile Studio Pro 16」でFresco Windows版のデモを行なう
ワコムは、販売中のペンタブレット統合型PCとなる「Mobile Studio Pro 16」上で、Adobeが11月4日(現地時間)に公開したばかりのFrescoのWindows版を動かすデモを行なった。
別記事でも紹介しているとおり、Fresco Windows版は動作環境としてSurfaceシリーズとワコムの「Mobile Studio Pro」が紹介されている。日本のAdobeの説明では、それらに対応していないWindowsデバイスでも動作するとされていたが、筆者がリリース後に、ワコムのAESペンが利用できるLenovoの「ThinkPad X1 Yoga Gen4」で試したが、インストール時にハードウェアが対応していないとしてインストールすることができなかった。ほかのPCでも同様かどうかわからないが、現時点では同様にインストールできない可能性が高い。
その意味では、現状ではSurfaceシリーズ、そしてワコムのMobile Studio Proシリーズが数少ないWindows版Frescoが動作する環境となる可能性が高い。
Mobile Studio Pro 16のワコムのEMR(電磁誘導)方式のペンとなる「Wacom Pro Pen 2」が採用されており、8,192段階の筆圧検知、60度までの傾き検知、5,080lpiという高い解像度を実現しており、現在発売されているペンタブレットの中ではトップクラスに入るペンとなっている。
実際、Windows版Frescoで操作してみたが、iPad版と同じように快適に操作することができた。iPad版では最高で3K(2,732×2,080ドット)で12.9型までの対応になるが、Mobile Studio Pro 16では4Kの解像度で16型というより大きく高解像度のディスプレイが使えることがメリットとなるだろう。
Intel、NVIDIAはGPUのCreative Cloudへの最適化をアピール、PCメーカーはワークステーションPCを展示
ほかにも、Intel、Dell、ASUS、GIGABYTE、MSIなどがブースを設けており、AdobeのCreative Cloud向けのソリューションを展示した。
Intelは、10nmで製造される第10世代Coreプロセッサ(Ice Lake)に内蔵されているGen11の内蔵GPUを、Creative CloudのGPUアクセラレーションが効くことなどをアピールしていた。
NVIDIAは6月のCOMPUTEXで発表したNVIDIA Studioに対応したモバイル・ワークステーションPCのデモを行なっていた。NVIDIA Studioはプロフェッショナルソフトウェア向けに最適化したドライバなどを添付しており、ユーザーはシステムを購入するだけで、安定して利用できる点をNVIDIAはアピールしている。
今回はこのNVIDIA Studio上で、Adobeの各種アプリケーションを動かしており、Creative Cloudを安定して利用できるモバイル・ワークステーションPCとしてNVIDIA Studioをアピールしていた。
Dell、ASUS、GIGABYTE、MSIなどはすでに発表されたワークステーションPCなどを展示していた。