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全社一斉「週休3日制」が社員の意識変革につながる

~日本マイクロソフト、ワークライフチョイス チャレンジ2019夏の成果を報告

ワークライフチョイス チャレンジ2019夏

 日本マイクロソフト株式会社は、「ワークライフチョイス チャレンジ2019夏」の成果報告記者説明会を開催した。

 登壇した同社 執行役員常務 クラウド&ソリューション事業本部長 兼 働き方改革推進担当役員 手島主税氏は、創業45年を迎えたMicrosoftでは、多大な労力をかけて大きな方向転換を図っていると述べ、なかでも社内カルチャーの変革がもっとも苦労する領域だと説明。

 同社の提唱する「Vision 2020」で挙げているインダストリー/ワークスタイル/ライフスタイルのイノベーションにおいても、共通点は人であり、人の変化がイノベーションの鍵となると語った。

日本マイクロソフト株式会社 執行役員常務 クラウド&ソリューション事業本部長 兼 働き方改革推進担当役員 手島主税氏
Vision 2020

 同社の働き方に関する取り組みは、最初は福利厚生の一部として、現在は重要な企業戦略として位置づけられており、これからは社会の変化を象徴的に表現した社会要請/社会基盤となるとする。

 具体的な要素としては、同社の「Workstyle Innovation(WSI)」活動におけるミッションとして挙げられており、国策や多様性などの社会づくり、イノベーションや生産性などの仕事(企業)づくり、活躍できる社員を新しい働き方を創造することであるという。

 同氏は、まず社員が元気で意欲的であることが重要であると述べ、そういった環境/人の生まれるような取り組みが必要とされるとした。

 新たに同社が掲げている「働き方改革NEXT」は、ファーストラインワーカーやミレニアル世代、2020年の教育改革にむけた取り組みなどを通じて、万人のための経済成長を実現するための新しい働き方の創出を目指すもの。

時代とともに変遷する役割
Workstyle Innovation活動のミッション
働き方改革NEXT

 同社の取り組みでは、2007年の在宅勤務制度導入から10年ほどが経過しているが、その間に社員数は8%減っていると説明。そういったなかで、年間2ケタの成長を達成するには、社員個々人の生産性の向上なしには実現不可能なビジョンであるとした。

 これまでの10年間の成果としては、勤務時間は2カ月分に相当する60万時間が削減され、110万枚の白黒コピー印刷も削減されてきたと紹介。

 しかし効率化の点でグローバルのMicrosoftと比較するとまだまだ余地があり、たとえばメールに費やす時間が24%長く、宛先も31%多いという。また会議時間では17%長く、参加人数も11%多いという状況だったという。

 今回2019年8月の丸1カ月に渡って取り組んできた「ワークライフチョイス チャレンジ2019夏」プログラムは、社員の「生産性」と「創造性」の向上を目的として実施したもので、選択肢を提供することで機会を生み出すためだと説明。

 具体的には、週勤4日/週休3日制の導入、社外学習などへの金銭などの社員支援プログラムの提供といった内容となる。

日本マイクロソフトの働き方改革の進化
ワークライフチョイスチャレンジ2019 夏
日本マイクロソフトとグローバルの比較
生産性と創造性の向上を目的としたプロジェクト
For Work, For Life, For Society

 効果測定の結果について解説した、同社 マイクロソフトテクノロジーセンター エグゼクティブアドバイザーの小柳津篤氏は、効果測定について、削減や最小化を目標とした「削減系」、活性化や増加を目標とした「向上系」、社員の気持ちや印象を確認する「満足系」の3つの指標で行なわれていると説明。

 まず削減系では、作業日数が前年比で25.4%減り、印刷枚数も58.7%減ったという。消費電力は23.1%削減され、廃棄物も減りコストやCOXの削減につながったとした。

 向上系では、今回の施策では勤務時間が減っても業務目標などが下げられているわけではないため、業務の効率化が必須となるが、結果を見ると労働生産性は39.9%向上したという。会議時間については、30分会議の比率が46%向上し、グローバルには及ばないもののリモート会議の実施比率も21%向上したとする。

 満足系については、社員の意識/行動に効果があったかという面の指標で、資金補助によって1,629件の申請があり、1.7倍に増加。休暇申請も増え、一定の成果を挙げたとした。

マイクロソフトテクノロジーセンター エグゼクティブアドバイザー 小柳津篤氏
効果測定は削除系/向上系/満足系の3点で実施
Teamsの徹底活用
Workplace Analytics
測定項目フレームワーク
休暇取得と福利厚生プログラムへの影響
仕事のやり方/自己啓発についての社内アンケート
ライフデザインやファミリーケアについての社内アンケート
社会貢献や地域活動についての社内アンケート

 社員の全体評価としては、今回の取り組みに対して9割ほどが肯定的な意見を社内アンケートに投稿しているという。しかし、856件あったフリーコメントのうち、1割程度は激しい不満を含むネガティブなものだったと紹介した。

 小柳氏は、この1割の不満の声について、これは「社員の9割が賛同して1割が不満を持っている」ということではなく、今回の取り組みにどの社員にも9割ほどポジティブに捉えられる面があり、辛い側面が1割があるという認識のほうが正しいとの考えを示し、ネガティブな意見について精緻に分析していると語り、すでに分析の結果として、構造的な課題が2つ見つかっているとした。

 具体的には、営業職などで、クライアントの企業は休んでいないのにこちらだけ休むとなると、業務の整理や連絡などが生じてしまう点や、コンサルタント業務などの、顧客に費やす時間で業務成果が発生するような場合、週休3日にされることで会社側の都合で自身の業績が制限されるという捉え方にもなることなどを挙げた。

 当然、プロジェクトの実施前に想定される不都合について対策は考えてきたが、実際に実施してみて完全でない部分が見つかったという。

 ただし、プロジェクトの実施によって多くのポジティブな反応が得られたことも確かであるとした。

 効果測定から見えてきた点としては、社員は想定よりも多様な働き方を求めていること、ワークライフチョイスが働き方の実現に有効であることなどを挙げた。

 また、全社で一斉に実施するという姿勢は一見乱暴だが、社員の考えや取り組みの変化になったという意見もあり、会社がキッカケづくりをすることのメリットが得られたという。

 課題としては、有効活用できた側と、そうでなかった社員や部署とのギャップや、一部のマネージャー/部門の働き方の多様性に対する理解不足、顧客の迷惑ならないという点と顧客にこのチャレンジを共有するという相反する要素によるジレンマといった面があるとした。

フリーコメントの傾向分類
見えてきた点と課題

 手島氏は、週休3日という枠組みを決めることは、労働時間を削減するということであり、仕事の仕方を変える必要があるため、企業側として大きな決断だったと振り返ったが、社員が色々なことを実現したいという意欲を引き出せたことで、他社にも推奨できる結果を得られたと語った。

 取り組みのなかで、若い世代の社員が増えたことで、世代や文化によって求める働き方や生活に求めるものが異なるというのがハッキリ現れたことや、単純に勤務時間が短くなると考えるのではなく、時間をどう使うかを考え直す機会となり、顧客からの反応もポジティブなものが多く、営業職は顧客とのやり取りにTeamsを活用してみるなど顧客対応に変化が生まれるといった洞察が得られたという。

 経営的観点からは、インクルーシブな企業体質を実現していくうえで、取り組みを実施したことで、そのビジョンに向けたデータを得られたことは大きいとした。

 日本マイクロソフトでは、今回のプロジェクトの結果を活かして、2019年冬にも取り組みを実施。多様な働き方への主体的・自律的チャレンジや、ノウハウやソリューションの提供などチャレンジの輪を広げるかたちで実施する。

今後の展開
多様な働き方への主体的・自律的挑戦
チャレンジの輪を広げる