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東芝、服の下に隠された危険物を足を止めずに検知できる技術

新たな検査方式の導入による効率化イメージ

 株式会社東芝は、ミリ波レーダーを利用して通行人の足を止めることなく保安検査が行なえる技術を開発した。

 セキュリティ対策として一般的に用いられる監視カメラでは、衣服の下に隠し持った危険物を発見することが非常に困難である。一方で、検知器と検査員を用いた空港の保安検査場のような検査は、セキュリティは向上するものの、導入コストが高いことに加え、通行の妨げにもなるため、公共スペースでの導入は難しかった。

衣服の下の隠したモデルガンを用いた実証結果

 今回同社では、自動運転などに利用されている「ミリ波レーダー」を採用した電波イメージング技術を開発。ミリ波は、周波数が30GHz~300GHzの電波で、衣服を透過し、金属にぶつかると反射して、爆薬などの粉末には吸収される特性をもつ。

 ミリ波レーダーはこれを応用したセンサーで、通行人にミリ波を照射し、反射信号を面状のアンテナで捉えることでイメージングを行ない、隠し持った危険物の検知を可能にする。従来の検査と異なり、検査対象が立ち止まる必要のないウォークスルー方式での検査を実現する。

開発した技術の測定イメージ
互いに素となる波長間隔で測定した2つのデータの合成処理

 一方で、余分な虚像の映っていない高精細なイメージング画像を生成するためには、照射するミリ波の半波長間隔での測定が必要で、アンテナの数やデータが膨大になる問題があった。

 同社では、互いに素となる半波長以上の間隔で2つのイメージング画像を生成し合成すると、虚像が打ち消しあう特性を発見。測定数の大幅な削減に成功した。必要な測定数が半波長間隔の場合と比べて約7分の1となったことで、アンテナなどの設備やデータ量を縮小でき、導入時の負担を軽減した。

 ミリ波レーダーを利用した保安検査は、ショッピングセンターやアミューズメントパーク、鉄道の駅など、多くの人が行き交う場所への導入が見込まれている。