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NVIDIA、“Naviキラー”のGeForce RTX SUPERシリーズを投入
~GeForce RTX 2080/2070/2060 SUPERの3製品を展開
2019年7月2日 22:00
米NVIDIAは7月2日(現地時間)、新GPU「GeForce RTX SUPER」シリーズを発表した。同社は5月からティザーで「SUPER」を冠したなんらかの製品を発表すると公式に告知しており、今回その正体が明かされたかたちだ。
GeForce RTX SUPERは、昨年(2018年)の8月(一部製品は今年)に発表されたGeForce RTX 20シリーズの追加製品と位置づけられ、GeForce RTX 2080などの後ろに日本語で“超”の意味を持つ「SUPER」をつけた製品になる。GeForce RTX 2080 SUPER、同2070 SUPER、同2060 SUPERの3種類が用意され、2080 SUPERおよび2070 SUPERは、無印の2080と2070よりも性能が向上しているものの、価格は据え置きとなる。
GeForce RTX SUPERの3SKUを追加、GeForce RTX 2080 Ti、2060は継続販売
今回NVIDIAが発表したGeForce RTX SUPERシリーズは、GeForce RTX 2080 SUPER、同2070 SUPER、同2060 SUPERという3つの製品から構成されている。昨年の8月に発表されたGeForce RTX 20シリーズと同じ12nmで製造されるTU10x(TU104/106)のダイを利用しており(NVIDIA、リアルタイムレイトレーシングに対応した「GeForce RTX 20」シリーズ参照)、歩留まりの向上などにより性能などが強化された追加SKUと考えることができるだろう。
GeForce RTX 2080 SUPER | GeForce RTX 2080 | |
---|---|---|
ダイ※筆者予想 | TU104 | |
FLOPS | 11+11TFLOPS(11.2TFLOPS/FP32、11.2TFLOPS/INT32) | 10+10TFLOPS(10.1TFLOPS/FP32、10.1TFLOPS/INT32) |
Tensor FLOPS | 89TFLOPS | 80.5TFLOPS |
Rayコスト | 8Giga Rays | |
Streaming Multiprocessor | 48 | 46 |
CUDAコア | 3,072 | 2,944 |
テクスチャユニット | 192 | 184 |
ベースクロック | 1,650MHz | 1,515MHz |
GPUブーストクロック | 1,815MHz | 1,710MHz |
メモリ | 8GB | |
メモリバス幅 | 256bit | |
メモリデータレート | 15.5Gbps | 14Gbps |
メモリバス幅 | 496GB/s | 448GB/s |
ビデオカードの消費電力 | 250W | 215W |
GeForce RTX 2070 SUPER | GeForce RTX 2070 | |
---|---|---|
ダイ※筆者予想 | TU104 | TU106 |
FLOPS | 9+9TLOPS(9.1TFLOPS/FP32、9.1TFLOPS/INT32) | 7.5+7.5TLOPS(7.5TFLOPS/FP32、7.5TFLOPS/INT32) |
Tensor FLOPS | 72TFLOPS | 60TFLOPS |
Rayコスト | 7Giga Rays | 6Giga Rays |
Streaming Multiprocessor | 40 | 36 |
CUDAコア | 2,560 | 2,304 |
テクスチャユニット | 160 | 144 |
ベースクロック | 1,605MHz | 1,410MHz |
GPUブーストクロック | 1,770MHz | 1,620MHz |
メモリ | 8GB | |
メモリバス幅 | 256bit | |
メモリデータレート | 14Gbps | |
メモリバス幅 | 448GB/s | |
ビデオカードの電力 | 215W | 175W |
GeForce RTX 2060 SUPER | GeForce RTX 2060 | |
---|---|---|
ダイ※筆者予想 | TU106 | |
FLOPS | 7+7TLOPS(7.2TFLOPS/FP32、7.2TFLOPS/INT32) | 6+6TLOPS(6.5TFLOPS/FP32、6.5TFLOPS/INT32) |
Tensor FLOPS | 57.4TFLOPS | 51.6TFLOPS |
Rayコスト | 6Giga Rays | 5Giga Rays |
Streaming Multiprocessor | 34 | 30 |
CUDAコア | 2,176 | 1,920 |
テクスチャユニット | 136 | 120 |
ベースクロック | 1,470MHz | 1,365MHz |
GPUブーストクロック | 1,650MHz | 1,680MHz |
メモリ | 8GB | 6GB |
メモリバス幅 | 256bit | 192bit |
メモリデータレート | 14Gbps | |
メモリバス幅 | 448GB/s | 336.1GB/s |
ビデオカードの電力 | 175W | 160W |
SUPER版では、無印版に比較してそれぞれSM(Streaming Multiprocessor)の数が増やされており、演算エンジンに相当するCUDAコアが増えている。また、クロック周波数のうちベースクロックが引き上げられているほか、2080 SUPERと2060 SUPERに関しては、メモリも強化されている。2080 SUPERはメモリのデータレートが14Gbpsから15.5Gbpsに引き上げられ、2060 SUPERはメモリのバス幅が192bitから256bitに引き上げられている。
ただし、ビデオカード全体の消費電力は2080 SUPERで250W、2070 SUPERで215W、2060 SUPERで175Wと無印に比べて増えているが、これは性能とのトレードオフなので致し方ないだろう。
NVIDIAは、2080 SUPERはTITAN XP(PascalベースのTITAN)よりも高い性能を持ち、2070 SUPERは2070無印と比較して平均16%、最大24%の性能向上があり、GeForce GTX 1080 Tiに匹敵する性能を実現したと説明している。2060 SUPERは2060無印と比較して平均15%、最大22%の性能向上を実現しており、GeForce GTX 1080以上で2070無印に近い性能を発揮するという。
なお、OEMメーカー筋の情報によれば、利用されているダイは2080 SUPERがTU104(-450)、2070 SUPERがTU104(-410)、2060 SUPERがTU106となる。2080無印がTU104、2070無印と2060無印がTU106だったのに比べると、2070 SUPERに関しては上位ダイに使われているTU104のカットオフ版に切り替えられており、それが今回の3つのGPUのなかで一番性能が向上している理由の1つになりそうだ。
GeForce RTX SUPERシリーズ投入は“Naviキラー”が狙いか
注目すべきは製品の位置づけだ。まず昨年8月に発表されたGeForce RTX 2080 Ti/2080/2070、および今年の1月に発表された同2060という現行のGeForce RTX 20シリーズのうち、2080無印と2070無印は生産終了となり、2080 SUPERと2070 SUPERに置き換えられる。いずれの製品も性能が強化されるが、価格は699ドル、499ドルで据え置き。また、Founder Edition(FE)も用意されるが価格は同じとなる。
これに対して、トップエンドのGeForce RTX 2080 Tiは販売が継続され、価格も据え置きとなる。通常版が999ドル、FE版も1,199ドルと従来の価格が据え置かれる。
2060無印に関しても販売が継続され、価格も従来と同じ349ドルが維持される。2060 SUPERに関しては、2070 SUPERと2060無印の中間の新しいSKUと位置づけられ、399ドルという新しい価格が設定されている。この2つの製品もFE版があり、やはり価格は通常版と同等になる。
販売は7月9日より開始される予定だが、期間限定でこれらSUPERがつく製品にはリアルタイムレイトレーシングに対応した「Control」、「Wolfenstein: Youngblood」という2つのタイトルがバンドルされる。NVIDIAによれば2つのゲームを合わせて90ドルの価値があるという。
なお、NVIDIAが今回GeForce RTX SUPERシリーズを投入したのは、明らかにAMDが7月7日に販売を計画している7nmで製造される開発コードネーム「Navi」こと、Radeon RX 5700シリーズへの対抗措置という側面が強いと言えるだろう(AMD、RDNA初の製品となるRadeon RX 5700シリーズ参照)。
今回の発表以前のSKU | 今回の発表後の製品 | 市場想定価格 | FE市場想定価格 | AMD Naviの価格帯 |
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GeForce RTX 2080 Ti | 継続販売 | 999ドル | 1199ドル | - |
GeForce RTX 2080 | GeForce RTX 2080 SUPER | 699ドル | - | |
GeForce RTX 2070 | GeForce RTX 2070 SUPER | 499ドル | Radeon RX 5700 XT(449ドル) | |
- | GeForce RTX 2060 SUPER | 399ドル | Radeon RX 5700 (379ドル) | |
GeForce RTX 2060 | 継続販売 | 349ドル | - |
AMDのRadeon RX 5700シリーズは上位版のRadeon RX 5700 XTが449ドル、Radeon RX 5700が379ドルに設定されている。AMDの主張としてはRadeon RX 5700 XTが2070無印(449ドル)に対抗できる性能を持っており、コストパフォーマンスをアピールしている。Radeon RX 5700に関しては2060無印(349ドル)よりわずかに価格が上だが、高い性能を持っていると説明している。
そうした状況のなかで、Radeon RX 5700 XTの449ドルに対して499ドルの2070 SUPERを、Radeon RX 5700の379ドルには399ドルの2060 SUPERを投入し、“Naviキラー”として対抗させようというのがNVIDIAの狙いだと考えられるだろう。
ビデオカードの平均フレームレートや平均消費電力などを計測できる「FrameView」を投入
NVIDIAはGeForce RTX SUPERシリーズの投入に合わせて、新しいベンチマークツールである「FrameView」の提供も開始する計画を明らかにした。
FrameViewはゲームプレイ時のフレームレートやGPUの消費電力などのログを取るツールで、瞬間的なフレームレートではなく、ある特定の時間のフレームレートのログを取り、その平均値を出すことができる。また、そのフレームレートを計測しているときの消費電力を測定できるのも特徴で、ボードレベルの平均消費電力、ビデオカードの性能をExcelのグラフとして表示させることができる。