ニュース

VAIO、簡単に対話ロボが作れるロボット汎用プラットフォームを提供

~ぬいぐるみに専用筐体を埋め込むだけでコミュニケーションロボットを実現

 VAIO株式会社はコミュニケーションロボット開発用オールインワンソリューションとして「ロボット汎用プラットフォーム」を提供開始すると発表し、2019年1月16日~18日に東京ビッグサイトで開催されている「第3回 ロボデックス~ロボット開発・活用展」に参考出品した。

 VAIOは、ソニーからPC事業を継承して2014年7月1日に設立された。2015年から展開してきたEMS事業で培ってきた知見やパートナーシップを礎に、ロボット開発および運用のために必要なハードウェア・ソフトウェア・ソリューション・クラウドサービス・サポート・各種サーバーなど、すべての機能を1つのプラットフォームで提供する。

 ロボット開発には、多種多様なレイヤーの各技術と統合が必要だ。1社だけでは完結せず、開発コストがかさみ、結果としてロボットの販売価格を押し上げてしまう。

 VAIOでは、それがコミュニケーションロボットの普及を妨げる一因だと考えており、これらの課題に対する解決策として、VAIOが主導するかたちでロボット開発における各機能をもつ企業と連携し、今回の「ロボット汎用プラットフォーム」を構築した。

専用筐体を入れるだけでぬいぐるみがコミュニケーションロボットになる

ぬいぐるみに専用筐体を埋め込むだけでコミュニケーションロボットに

「Simple」筐体。放熱を考慮した設計になっているという

 プラットフォームのハードウェアは、中級クラスCPUによって多機能なカスタマイズができる「Middle」と、対話を主目的とし、効率重視の開発に用いる「Simple」の2種類が用意される。

 対話機能だけで良い場合は、ぬいぐるみのなかにVAIOが独自開発した「Simpleハードウェア」の筐体を埋め込むだけで、コミュニケーションロボットを実現できる。

 Simpleハードウェアには、音声認識機能やセンサー、バッテリ制御機能が組み込まれており、音声合成エンジンと対話エンジンは、ロボットのキャラクターに合わせてカスタマイズできる。音声認識は基本的にクラウド上で行なう。

 動いたり、カメラで顔認識したり、液晶ディスプレイを搭載するようなロボットを開発したい場合は「Middle」を選択する。すでに実績もあるという。

「Middle」の基板はニーズに応じてカスタマイズする
MiddleとSimleの機能比較表
ニーズに応じてMiddleとSimpleの2種類を用意

 ロボデックスでは、VAIOテクニカルパートナーであるHOYA株式会社が提供する音声合成エンジンソリューションが採用された「Simpleハードウェア」が参考出品された。

 深層学習を活用することで、相槌、語尾、言い回しといった細かいニュアンスが大幅に向上。より繊細で自然な感情表現を感じさせる発話が可能となったという。

 全体のサポートは、初期検討~組み込み開発~製品化まですべてVAIOが実施する。

今回はあくまで参考出品

ロボット開発コスト半減で、ロボット普及率向上を目指す

VAIO株式会社代表取締役社長 吉田秀俊氏

 VAIOは、PCを中心に製品企画からアフターサービスまで、上流から下流までの充実の機能・設備を活かして、顧客ニーズに合わせたEMS事業を2015年から展開してきた。今年で5周年になる。

 近年では、コミュニケーションロボットについても数少ない量産技術を持つ国内企業として認知され、引き合いもスタートアップから大企業まで増加しているという。

 VAIO株式会社代表取締役社長の吉田秀俊氏は、「コミュニケーションロボットの課題は開発費が高いこと。ロボット生産を一貫してできるところはほかにない。我々は先頭を切っており、今回の汎用プラットフォームによって開発費を半分に近づけ、顧客ニーズに迅速に応えられるようにしたい」と語った。

 2018年には、EMS事業の第2フェーズとして、優れた技術やソリューションを持つ企業と「VAIOテクニカルパートナー」として連携し、VAIOだけでは実現できない領域へビジネスを拡大するプログラムを開始した。

 各社が培ってきた高度な技術やノウハウの相乗効果により、VAIOのEMS事業における取引先企業にもメリットのあるサービス提供を目指している。

EMSとしてVAIOが製造している各社のロボット
コミュニケーションロボット向け静音ギヤードモーターも開発している。バンダイ「ガンシェルジュハロ」にも採用されている

 HOYA株式会社HOYA SPEECH SBU長の木村聡仁氏は、同社の合成音声はとくに組込みにおいて力を発揮する技術であり、合成音声感をかなり消すことができ、キャラのイメージに合わせた声が出せるとアピールした。

HOYA株式会社HOYA SPEECH SBU長 木村聡仁氏

 今回のパッケージを使うことで、ソフトウェアと電気設計部分のベース分の開発が必要なくなるが、実際には、その上に必要な部分はロボット(顧客ニーズ)によって異なり、開発工数がどの程度減るかはモノによって異なる。

 具体的な目標販売台数、そのほかについては明かされなかった。今回の参考出品によって、顧客からの要望を聞いて判断していくという。