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Intel、次世代CPUアーキテクチャ「Sunny Cove」の概要を明らかに

~Willow Cove、Golden Coveと進化予定、Atomのロードマップも更新

Sunny Coveマイクロアーキテクチャを搭載したCPU

 米Intelは11日(現地時間)、同社の共同創始者ロバート・ノイス氏のかつての私邸において記者会見を行ない、同社が開発している次世代CPUなどに採用される各種の技術を公開した。

 このなかで、Intel上席副社長兼Intelアーキテクチャ/グラフィックスソリューション事業本部長兼エッジコンピューティングソリューション主任アーキテクトのラジャ・コドリ氏が、Intelが開発している新しいCPUのマイクロアーキテクチャの開発コードネームが「Sunny Cove」(サニーコーヴ)であることを明らかにした。

 Sunny Coveは、2019年の末までにリリースされるXeonやCoreプロセッサのマイクロアーキテクチャとして採用される。

 現行製品のベースになっているSkylakeと比較して、Sunny Coveでは実行ポートが8から10に増やされていること、L1データキャッシュが32KBから48KBに増やされているなどの拡張が加えられており、Coreプロセッサとしては、久々に内部アーキテクチャへ大きな改良が加えられることになる。

2019年に投入されるXeon、Core用のSunny Cove、その後Willow Cove、Golden Coveと進化

Intel上席副社長兼Intelアーキテクチャ/グラフィックスソリューション事業本部長兼エッジコンピューティングソリューション主任アーキテクト ラジャ・コドリ氏

 記者会見でコドリ氏は、Intelが開発しているCPUのマイクロアーキテクチャ(設計上の仕様のこと)に関しての説明を行ない、来年(2019年)末までに投入を計画しているXeonプロセッサ、CoreプロセッサのCPUマイクロアーキテクチャの開発コードネームが、「Sunny Cove」(サニーコーヴ)であることを明らかにした。

Intelが公開したCPUマイクロアーキテクチャのロードマップ

 Sunny Coveは、Intelが2020年にXeonとしてサーバー向けに投入を計画する“Ice Lake”に採用される予定であるほか、クライアントPC向けにも2019年に投入される計画だという。

 ただし、現時点ではクライアント向けのどのCPUに搭載される予定なのかは明確にされていないが、Sunny CoveであるとされたCPUが搭載されたマザーボードには、「ICL」などの表示が残っており、Ice Lakeである可能性が高い。

 なおコドリ氏によれば、最初のSunny Cove搭載製品は、10nmプロセスルールで製造される予定とのことだ。

Sunny CoveマイクロアーキテクチャベースのCPUが搭載されたマザーボード
ICL-Uとマザーボードやファンに書かれていた。ICLとはIce Lakeの3レターコード

 コドリ氏によれば、IntelはまずSunny Coveを投入し、その後継として、キャッシュを再デザインし、新トランジスタに最適化された改良版となる「Willow Cove(ウィローコーヴ)」、さらに2021年には、性能を引き上げた「Golden Cove(ゴールデンコーヴ)」を投入すると説明した。

 Atomプロセッサの新コアも計画されていることが明らかにされ、2019年に性能を向上させたネットワーク/サーバー向けの「Tremont(トレモント)」、2021年にスカラー性能、周波数、ベクター性能を引き上げた「Gracemont(グレイスモント)」、さらにその後にも、名称は未定ながら「~mont」というコードネームで次の世代の製品を計画していると明らかにした。

Sunny CoveはSkylake世代に比較してIPCが大きく向上

Intel フェロー兼Intelアーキテクチャ・グラフィックスソリューション事業本部 CPUコンピューティングアーキテクチャ Intelアーキテクチャコア事業部部長 ロナック・シングハル氏

 Intel フェロー兼Intelアーキテクチャ・グラフィックスソリューション事業本部 CPUコンピューティングアーキテクチャ Intelアーキテクチャコア事業部部長のロナック・シングハル氏は、Sunny Coveのマイクロアーキテクチャの概要を説明した。

 シングハル氏によれば、Sunny CoveではIPC(1クロックサイクルあたりに実行できる命令数)を上げていく改良が施されており、クロック周波数が上がらなくても性能が上がるような設計を目指しているという。

SkylakeとSunny Coveのマイクロアーキテクチャの違い

 同氏は、第6~第9世代Coreのベースとなっている開発コードネーム「Skylake(スカイレイク)」とSunny Coveの内部構造を比較しながら、Sunny Coveの強化点について説明した。

 それによれば、Sunny Coveでは、リオーダーバッファ、ロードバッファ、ストアバッファ、リザベーションステーション(スケジューラ)などのサイズや構造も強化されており、とくにキャッシュは、L1データキャッシュが50%大きく(32KBから48KBに)、L2キャッシュのサイズもSkylake世代よりも大きくなっているという。

 ただし、L2キャッシュの容量はSkylake世代でもそうだったように、製品によって異なるが、「Xeon用のデザインはより大きく、クライアント用はそれより小さいというのはSkylake世代とは共通だが、容量そのものは、どちらもSkylake世代よりも大きくなっている」(シングハル氏)という。

L1データキャッシュが50%アップ

 内部の実行ユニットも拡張されており、Skylake世代に比べてワイドアロケーションが4から5に、そして実行ポートは8から10に増やされている。

 増えた実行ポートは、AGUが1つ(3から4へ)に、ストアデータが1つ(1から2へ)増やされている。実行ポートのいくつかにSIMD Shuffle、LEAなどの機能が追加されている。

 これらにより、1クロックサイクルで実行できる命令数が増えており、並列実行時の効率を上げているのがSunny Coveの特徴となる。

実行ポートが8から10へと増加する

 分岐予測のバッファも増やしており、新しいアルゴリズムを導入する、正確性をより向上するなどの改良を加えているなど、効率性を上げる改善も加えられている。

 新しい命令セットも導入される予定で、とくに暗号化関連の追加命令セット(vector AES、SHA-NIなど)の強化が行なわれるという。

 展示会場ではオープンソースの圧縮・解凍ソフトウェアである7zipのソースコードを書き換えて、Sunny Coveの新命令セットに対応させたデモが披露され、対応していないKaby Lakeで実行した場合と比較して、75%高速に処理できるとしていた。

バッファが増える
新しい命令セットの追加
Kaby Lakeのシステム(左)と比較して75%暗号化の性能が向上

 また、メモリアドレスも強化されている。アドレスできる仮想メモリは、Skylake世代の48bitから57bitに強化されており、さらに物理メモリは52bitに拡張される。

 これにより、最大で4PB(ペタバイト)までの物理メモリに対応することが可能になるとIntelでは説明している。

物理メモリアドレスは52bitに、アーキテクチャ的には4PBの物理メモリまで対応