ニュース

Sandy Bridgeから最新第9世代まで新旧CPU・徹底ベンチレポート

レンダリングでCPUの実力を見る

 第9世代のCore i9-9900KとCore i7-9700Kはいかなるものか。歴代のメインストリームCPUやRyzen 7 2700X、Core i9-7900Xとベンチマークテストで比較した。

 CINEBENCH R15のレンダリングテストはほぼCPUのみに高い負荷がかかってCPUの性能がストレートにスコアに反映されるため、基本性能の目安として適している。Core i9-9900KのCPUスコアは、同じ8コア16スレッドのRyzen 7 2700Xを上回る優秀なもの。8コア8スレッドのCore i7-9700Kと6コア12スレッドのCore i7-8700Kの比較も注目されるところだが、前者がはっきり上回った。

CINEBENCH R15。3DCGソフト「CINEMA 4D」をベースにしたベンチマークテストだ。マルチスレッド性能を確かめる「CPU」、シングルスレッド性能の目安になる「CPU(シングルコア)」がテスト項目として用意されている
Core i9-9900KのCPUスコアは2,000超え。6コア12スレッドのCore i7-8700Kの1.45倍で、同じ8コア16スレッドのRyzen 7 2700Xにも14%の差を付けてメインストリームでトップのスコア。10コアのCore i9-7900Xにも迫る。9700Kと8700Kの比較ではわずかに前者が上だ。さらにCore i9-9900Kは、CPU(シングルコア)でもトップのスコア。Turbo Boostで最大5GHz動作する強みがしっかり出ている。最大4.9GHzのCore i7-9700Kもそれに続いており、第9世代が第8世代以前やRyzen 7 2700Xに対してはっきり優位があることを示している

旧CPUのポイント

Sandy Bridge/Core i7-2600K(4コア8スレッド 3.4GHz)
近代Intel CPUの礎となる名作
Haswell/Core i7-4770K(4コア8スレッド 3.5GHz)
実行ユニット拡張でAVX系強化
Skylake/Core i7-6700K(4コア8スレッド 4GHz)
デコーダ増加など内部構造拡張

メニーコアの真価が活きる! エンコードテスト

 エンコード性能を見よう。CGレンダリング同様にマルチスレッドに最適化しやすく、メニーコアが有効活用できる処理で、Hyper-Threadingの効果もしっかり出やすい。処理時間が作業効率に直結する分野だけに、SSE、AVXの拡張命令も積極的に使われる。

 ここではAdobeのPremiere Pro CCでH.264とH.265、ペガシスのTMPGEnc Video Mastering Works 6ではH.265のエンコードテストを行なった。ここでもCore i9-9900Kの強さは目立つ。H.265はどちらのソフトでもCore i9-7900Xを上回っている。Core i7-9700KとCore i7-8700Kの比較は物理コアで上回る前者がすべての項目で上だ。

TMPGEnc Video Mastering Works 6。ペガシスの動画変換/編集ソフト。CPUの拡張命令を積極的に取り入れて高画質で効率のよいエンコードが行なえる。x265でのエンコード、およびQSV(Intel Media SDK)を使ったH.265エンコードを実行した
Premiere Pro CCに関してだが、Core i9-9900Kは、H.264ではCore i9-7900Xには少し劣るものの、同じ8コア16スレッドのRyzen 7 2700Xには16%とはっきり差を付けて勝っている。また、Core i7-8700Kに対しても24%、7700Kには40%と大差を付けている。9700Kと8700Kでは前者のほうが11%速かった。H.265のエンコードではCore i9-9900Kの強さがH.264以上に際立ち、10コア20スレッドのCore i9-7900Xを上回った。9700Kより18%、8700Kよりも25%高速で、Core i7-2600Kの3分の1以下の時間で処理を終えた。9700Kと8700Kの比較ではここでも前者が速い。続いてTMPGEncを。Core i9-9900Kは10コアのCore i9-7900Xを上回ってもっとも高速。傾向としてはPremiere Pro CCでのH.265と似ているが、Core i7-2600KやRyzen 7 2700Xとの差はこちらのほうが大きい。ここでも8コア8スレッドの9700Kのほうが6コア12スレッドの8700より速い。ハードウェアエンコーダのQSVを利用したH.265エンコードも試した。第9世代のみUEFI設定をしても外部GPU環境でこれを有効にできなかったため内蔵GPU環境でテストした。CPUによる違いは小さいがそれでも第9世代は旧世代に対して優位は示している

PCMarkで総合性能をチェック

 シナリオ別に実際のアプリを動作させてパフォーマンスを測定するPCMark 10はシステムの総合性能をざっくりと把握するのに有効。

 総合スコアは見てのとおり第9世代の2つが優秀なスコアで、Intelのメインストリームはきれいに世代別の序列が付いている。内訳を見るとクリエイティブアプリを使ってコンテンツ制作を行なうDigital Content Creationでの差がもっとも大きい。Ryzen 7 2700XのスコアはCore i7-7700Kと同じくらい。内訳を見るとDigital Content Creationではよい一方、Essentialで少し見劣りしている。シングルスレッド性能の影響だろう。

PCMark 10。実際のアプリを実行して性能を計測するベンチマーク。「Essential」はアプリの起動など日常操作、「Productivity」はビジネススイート、「Digital Content Creation」はエンコードなどコンテンツ制作を行なう
Gamingテストを含むPCMark 10 Extendedではなく、通常のPCMark 10を実行している。このスコアはシステム全体の総合的な性能をざっくりと比較するのに有効。Core i9-9900Kが順当にトップスコアで、Core i7-9700K、Core i7-8700K、Core i7-7700Kと続く。個別スコアについては、Core i9-9900Kは動画エンコードやレンダリングなどを含むDigital Content Creationの強さが目立つが、Webブラウズやアプリの起動など日常操作をシミュレートするEssentialでもトップ。軽い操作も高負荷操作も強い万能ぶりだ。Core i7-9700KとCore i7-8700Kの比較では、すべての項目で前者が上だが、とくにコンテンツ制作をシミュレートするDigital Content Creationでの差が大きい。最大4.9GHz動作の9700Kの強さが出ている。一方、旧世代のCore i7-2600KをCore i7-9700Kと比較してみると、クリエイティブ系のDigital Content Creationで2倍近い大差が付いているだけでなく、日常操作系のEssentialで37%、オフィス系のProductivityで40%と比較的軽い処理内容でもかなり差がある

WebXPRT 3でライトユース性能を見る

 WebXPRT 3は、Principled Technologiesが提供しているWebブラウザベースのベンチマークテスト。今回はEdgeで実行している。HTML5やJavaScriptを使ったアプリをオンラインで実行し、検索をしたり、画像やグラフなどを描画したりする内容で、CPUへの負荷としては軽い部類に入るが、スコアは意外にも差が出た。

 Core i9-9900KとCore i7-9700Kのスコアは同じで、8700Kとは結構差が付いている。Ryzen 7 2700XやCore i9-7900Xもあまり振るわないところを見ると、クロックの影響が強くありそうだ。軽い処理のわりに旧世代は見劣りが目立つ。

WebXPRT 3。Webブラウザベースのベンチマークテストだ。HTML5やJavaScriptを使って、オンラインでの画像編集、画像整理、株価チャート分析、ドキュメントの暗号化、OCR、セールスグラフ作成といった処理を行なう
ライトユースにおけるシステム全体の総合性能をざっくり見るために、まず総合スコアをチェックしよう。9700Kと8700Kではかなり差が付いている。軽い処理のわりに旧世代、とくにSandy Bridgeの落ち込みは目立つ
Core i7-9700Kと8700Kの差はどこで付いているのか、項目別に見ていくと、ストレージ性能の比重が高めな「Encrypt Notes and OCR Scan」以外は差は小さい。強いて言えば、画像編集を行なう「Photo Enhancement」での差がほかの項目よりわずかに大きい程度。Core i7-2600Kは、Core i7-9700Kの2倍近くかかっている項目が多い。とくにDNA検索とスペルチェックで構成される「Online Homework」はスコアが悪い。軽い処理でもここまで差が出るようになったと言えそうだ。一方、Ryzen 7 2700Xの総合スコアはCore i7-7700Kと6700Kの中間。比較的負荷が低いテストなのでシングルスレッド性能からすると妥当かもしれない。6700Kには「Stock Option Pricing」と「Encrypt Notes and OCR Scan」が劣っている

検証環境

[LGA1151]マザーボード:ASUSTeK ROG STRIX Z390-F GAMING(Intel Z390)、ASUSTeK Z170-PRO(Intel Z170)、メモリ:Micron Crucial Ballistix BLT2K8G4D26AFTA(PC4-21300 DDR4 SDRAM 8GB×2 ※SkylakeではPC4-17000で動作)、
[LGA2066]マザーボード:ASRock X299 Extreme 4(Intel X299)、メモリ:Micron Crucial Ballistix BLT2K8G4D26AFTA(PC4-21300 DDR4 SDRAM 8GB×2)×2
[LGA1150]マザーボード:ASUSTeK Z97I-PLUS(Intel Z97)、メモリ:Team TED38G1600C11BK(PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2)
[LGA1155]マザーボード:GIGA-BYTE GA-Z77X-D3H(Rev.1.0)(Intel Z77)、メモリ:Team TED38G1600C11BK(PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2)
[Socket AM4]マザーボード:ASUSTeK ROG STRIX X470-F GAMING(AMD X470)、メモリ:Corsair Vengeance RGB CMR16GX4M2C3000C15(PC4-24000 DDR4 SDRAM 8GB×2)
[共通]ビデオカード:NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition、SSD:Samsung SM961 MZVKW512HMJP-00000[M.2(PCI Express 3.0 x4)、512GB]、Samsung SSD 850 EVO MZ-75E250B/IT(Serial ATA 3.0、250GB ※LGA1155環境のみ)、電源:Corsair RX1000x(1,000W、80PLUS Platinum)、OS:Windows 10 Pro 64bit
Premiere Pro CC:4Kクリップ7枚で構成したプロジェクトをH.264/H.265で出力するのにかかった時間
TMPGEnc Video Mastering Works 6:4Kクリップ7枚をトランジションで連結したプロジェクトをH.265、およびH.265/QSV(Intel Media SDK Software)で出力するのにかかった時間

告知

この記事の続きは発売中のDOS/V POWER REPORT2018年12月号でお読みいただけます。12月号の特集は「CPU、8コア標準時代、到来」。Intelの第9世代Coreシリーズの登場により、2007年から2016年まで長きにわたって4コアが標準だったメインストリームCPUのコア数は、2年余りで一気に2倍の8コアに。本格的なメニーコア時代の到来です。8コアのCore i9-9900K、i7-9700Kの登場でPCの自作はどう変わるのか。さまざまな角度から解説、検証を行ないました。