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働き方に合わせて多種多様なビジネス製品を提供できるDellの強みとは?

Dell Technologies Forum 2018 Tokyo

 Dell Technologiesは、10月19日、企業顧客向けイベント「Dell Technologies Forum 2018 Tokyo」を都内で開催した。

 本イベントでは、会長兼CEOのマイケル・デル氏による基調講演や、Dell Technologies各社およびパートナー企業のトークセッション、ブース展示などを実施。Dellが提唱する、「コンピューティングの世界で起きている4つの変革」をテーマに、それぞれ「デジタル」、「IT」、「働き方」、「セキュリティ」の4つのカテゴリでブース展示や講演を展開していた。

 本記事ではこのうち「働き方」に関する講演のうちの1つと、ブース展示を紹介する。

Dell EMCの山田千代子氏が語るDellのビジネスへの取り組み

 Dell EMC 常務執行役員 クライアントソリューションズ統括本部長の山田千代子氏のトークセッション「Why Dell? 働き手の生産性、セキュリティ、モティベーションを上げるクライアント・ソリューション」では、コンピュータメーカーから見たIT環境の変化と、ビジネス用途に向けた製品開発への取り組みについての話が行なわれた。

山田千代子氏

 山田氏は最初に、DellとIntelが2016年に共同で行なった勤務形態、職場環境、労働時間に関するアンケート調査の結果を提示。「世のなかではいろいろな変化が起きているが、多くの業務の中心がPCであることは、まだ変わっていない」としつつも、職場環境に関する質問では「IT環境の遅れている職場では働きたくない」と考えている人が、回答者の約4割いたことに言及している。

 「ミレニアル世代の44%は『現在の職場は十分にスマート化されていない』と評価しているようで、それよりも若いZ世代はITのなかで育っているため、もっとそう感じるだろう。私にも高校生の子どもがいるが、彼ら、彼女らを見ていると、それもさもありなん、と感じる。職業柄、家のなかにたくさんのPCやスマートデバイスがあり、一番新しいものは取り合いになる。『こっちに(ちょっと古い)別のがあるよ』と言っても、『無理、大丈夫』と言われる。この場合の『無理、大丈夫』は『いらない、ほしくない』という意味である」。

企業のテクノロジレベルによって、就職先、転職先を決める世代が登場している

 「Z世代」にあたる若い世代では、配布物や課題、文化祭など催事の写真もデジタル化が進んでおり、それが当たり前の世代にとっては、企業が業務に採用するテクノロジのレベルも、入社する企業を選ぶ1つの基準になりうるという。

 その上で、人々のなかにあるITの位置づけについても変化が起きていると話す。IT環境が会社を選ぶ基準の1つになるのであれば、これまで生産性を上げていくためのツールだったITは、従業員のモチベーションを上げる要素になり、結果として生産性向上と変革につながる循環に変化するとの見解を明らかにした。

テクノロジレベルの向上が社員のモチベーションを上げ、その結果生産性向上と変革を起こすという循環

 このほか、製品設計においては、必ず顧客のフィードバックを取り入れるようにしているほか、ものによっては最新技術を積極的に取り込むことも必要だという。

 「われわれはグローバル企業なので、要望を聞いて見積書を作り、注文書をもらう積み重ねで、顧客のデータが毎日、世界中で蓄積される。積み重ねたデータから、顧客の志向が変化する兆候を見出し、製品開発に反映するということをしている。また、8KディスプレイやVR対応のモバイルワークステーションを世界で初めて市場に投入したのも当社だ。そういう尖ったところを出していくことも必要だと考えている」。

 近年では、ワイヤレス充電機能を備えた2in1 PCや、ダイヤル型デバイス「トーテム」とセットで使える液晶タブレット「Canvas」のリリース例を紹介している(デル、27型液晶ペンタブレット「Dell Canvas」を国内発売参照)。

製品ポートフォリオを充実させ、多様化する顧客のニーズに応える体制を作っている

多様化するニーズへの対応

 顧客ニーズの変化に関しては、働き方や用途に合わせて細かくカスタマイズしたオーダーが増えてきたと話す。

 「最近では顧客企業のIT部門が、社内各部署の働き方に合わせたニーズを吸い上げて注文するようになった。かつてのように『同じ仕様のPCを100台』ではなく、たとえば『薄型が15台、マイクロのデスクトップが18台、タワー型が何台……』といったふうに、注文内容が変化してきている」。

 顧客ニーズの多様化を背景として、Dell Technologiesでは働き方を「デスク型」、「在宅型」、「社内移動型」、「外勤型」、「クリエイティブ型」、「エンジニア型」、「現場作業型」の7つに分類し、これに合わせて製品ポートフォリオを拡充。さまざまなフォームファクタやカラーバリエーションの製品を用意し、顧客の働き方に合致したハードウェア、ソフトウェア、セキュリティを提案しているという。

 「カラーバリエーションにおよぶまで細分化させているのは、ひとえにニーズの多様化へ対応するためだ。一例で言えば、『デザイン関係の業務なので、チームで使う機材はブルーで統一したい』とか『机の上を広く使いたいので、導入する機材はすべてマイクロにしてほしい』といったニーズがある。多様化させないと現実的に対応しきれない状態だ」。

働き方を7つに分類

 顧客の要望がとくに多いカテゴリとしては、「AR/VR」と「高耐久PC」を挙げた。

 AR/VRカテゴリについて、とくにVRは、産業用途においてそれほど活用されているわけではないのが現状だが、山田氏は「これから先、AR/VRともに広く産業用途で使われるのはほぼ確実」と予測している。

 「われわれも今年(2018年)の4月から『VR研究会』というのを立ち上げて活動している。参加者同士、『こんなことがVRでできるんじゃないか?』、『今はこういったアイデアがある』というようなことを持ち寄り、話し合って、一緒に盛り上がりながら、勉強する会合だ。DellとしてもVR向けの製品はもちろんあるが、この研究会ではとくに当社の製品を売る主旨の発言はしないことにしている」。

 VR対応のポートフォリオとしては、法人向けワークステーション「Precision」シリーズを紹介。ワークロードのかかっている状態でもストレスなく動作する点をアピールした。

 山田氏によれば、産業用VRは、直近において実際の活用事例が出はじめている分野だという。Dell Technologiesの取り組みとしては、パートナーのソフトウェアがVRがデルのワークステーションで動くかどうかを確認できるよう、検証用の貸出機を用意しているほか、世界8カ所にVR検証のための拠点も立ち上げ、検証した結果はグローバルで情報共有している例を紹介した。

「Precision」シリーズのワークステーションをVR向けにカスタマイズして提供

 高耐久PCに関しては、数年前から展開している高耐久PC「Rugged」シリーズへの問い合わせが増加しているとの現状を説明している。

 「Ruggedシリーズは、他社製品でいえばパナソニックの『タフブック』にあたる位置づけ。現行のラインナップは全然知られておらず、お客様に説明すると驚かれる。なにに使うのかというと、通常のPCでは耐えられない環境での業務全般、たとえば工事現場や冷凍倉庫といった環境になる」。

Latitude 7424 Rugged Extreme Laptop Video

 Ruggedシリーズの導入事例として、冷蔵倉庫業、冷凍食品製造業などを展開している株式会社フリゴの冷凍倉庫に採用された例を紹介した。冷凍倉庫業においては、2つの課題があり、1つはIT化の遅れ、もう1つは働き方改革の遅れだという。

 「冷凍倉庫業界でIT化が遅れている理由は、通常の電子機器が-25℃という庫内の極低温に耐えられないからだ。働き方改革の遅れもこれに連動していて、たとえば庫内作業の時間を30分短くしたいとしても、IT化が進んでいないために、結局は非効率的な作業を強いられてしまうという問題があった。極低温の庫内でも使える『ハンディターミナル』という機器もあるにはあるが、非常に高価であり、修理にも高いコストがかかることから、この環境に耐えられる高耐久PCを探しているという」。

 そこで、フリゴでは各社の高耐久PCを集めて、耐久テストを実施。3カ月にわたるテストの結果、最終的に残ったのがRuggedだったため、業務での採用にいたった。この結果、従業員の残業時間が30分短縮し、紙の伝票はまるごと削減、想定外のメリットとして、内蔵カメラで写真が撮れるようになったこと、そして庫内で直接データを入力できることから、顧客からの在庫問い合わせにも即答できるようになったことを挙げている。

冷凍倉庫への導入事例を紹介した

 「冷凍倉庫は、国の認定倉庫だけでも2,800カ所あり、普通の倉庫であればもっとある。Ruggedシリーズは海のそばにある倉庫でも使えるので、まだまだいろいろなところから引き合いがある」とした。

働き方改革への対応

 日本市場においてはシェア2位のポジションにいるPC用ディスプレイのカテゴリでは、USB Type-C対応のディスプレイの引き合いが強いという。ケーブル1本で映像、音声、電源、データ転送などが可能なため、机の上がスッキリする点が人気。

 「どこでも働ける環境」を作るための取り組みについても紹介した。どのような場所でも「オフィスで働いているように働けなければならない」という条件をクリアするために、物理デバイス、仮想化、モバイル、アプリケーション、データ、セキュリティのそれぞれで、Dell Technologiesグループ各社の連携を図っている。

 「1つの会社でなんとかしようとすると、どうしてもなにかが足りないということが起こりがちだが、Dell Technologiesの場合はさまざまな強みを持った会社が集まっているので、それぞれの強みを組み合わせて足りない部分のギャップを埋め、幅広い問題を解決できる。お客様からしても、じつはここが一番メリットを感じられるところだろう」。

 このほか、SIM対応ノートPCのラインナップも拡充し、順次市場投入をはじめている。回線のパートナーとしてはソフトバンク、SORACOM、ソニ―ネットワークコミュニケーションズと協力している。

どこであってもオフィスと同レベルで働けるような環境づくりのためには、それなりの環境構築が必要
無料でバンドルされている「Dell Command Suite」に「VMware」を組み合わせることで実現できることの一例
デルが持っているアプリケーションやサービスにパートナーを加えることで、さまざまな要望に応えることができる

 セキュリティの観点では、95%の障害がエンドポイントで起きているとの調査結果に言及。Dellだけではカバーしきれなかった層の問題にも、VMware、RSA、SecureWorksと連携し、それぞれが持っている技術を組み合わせて、強固なセキュリティを担保していると話した。

 「もちろん、Dell EMC単体でも『Dell Threat Defence』というエンドポイントのセキュリティは持っている。これは侵入されてからなにかをするのではなく、AIを用いた予測によって未知のマルウェアによる被害も防ぐもので、検知率は99%にのぼる。だが、これだけではまだいろいろなものが抜け落ちている。エンドツーエンドのセキュリティ態勢を敷くためには、Dell Technologies各社の連携が必須だ」。

足りない部分をパートナー企業の技術で補い、強固なセキュリティを構築する

グローバル企業ならではの調達力とサポート

 山田氏は最後に、Dell Technologiesになることで可能になった幅広いクライアントソリューションについて改めて振り返り、俯瞰的な説明を行なった。顧客の要望に応える広範な製品ポートフォリオを中心に、グローバル調達、サポート、コストと生産性、営業力といったポイントにそれぞれ強みがあるという。

 「世間の動きの逆をいくリッチなクライアントポートフォリオが可能なのは、強いサプライチェーンを構築しているから。それぞれのパーツを最短で出していき、利益を確保している。だからこそポートフォリオを拡充してもビジネスが成り立ち、そして拡充したポートフォリオがあるからこそ、多様な顧客の要望に対応できる」。

 グローバル企業ならではの調達力とサポート体制も強みの1つだと話した。製造の過程で部品が足りなくなっても、グローバル調達ができることで、滞りなく製造ができるとし、また、グローバルでの直販体制があるDellにおいては、世界中の多くの国で、同じレベルのサポートが受けられる点をアピールしている。

 「サポートという面で言えば、クライアントだけでなく、ネットワーク、サーバー、ストレージ、ディスプレイ、ペリフェラル、ソフトウェアにいたるまで、さまざまなカテゴリのテクノロジが自社グループにある。製品に関わる全部の部品調達をする力があるので、生産性とコストの面でも有利。ハードウェア間の相性にも問題を起こしにくいメリットがある」。

豊富な製品ポートフォリオを中心に据え、グループ会社と連携して、さまざまな点で強みを発揮している

 膨大な組み合わせになる製品ポートフォリオについて相談する窓口は、担当営業がになう。担当営業は顧客のニーズを聞き、グループ会社を含めた社内の製品を集め、検討し、プロジェクトマネージャーのように取りまとめ、最適な提案を行なう。山田氏はこの体制について、「効率、責任という意味でも、Dell Technologiesだからできる部分は多いと考えている」と話した。

 「働き方改革には、いい面もあるし、そうでない面もあることがわかってきた。しかし1つ言えるのは、テクノロジが加速度的に進化し、つねに変化し、そして新しい考えを持った社員が次々と入ってくるなかで、働き方の変革を進めざるをえないということだ。当社はそういった環境でも、ハードウェアだけでなく、セキュリティ、ソフトウェア、マネジメントを包括的に、エンドツーエンドで提案できる世界唯一のベンダーだと自負している。ぜひ、私たちと一緒に、働き方改革、それ以外のプロジェクトに取り組んで、当社の強みを享受してほしい」。

会場では7つの働き方のイメージを展示

 「Dell Technologies Forum 2018 Tokyo」展示スペースにおいては、山田氏が話した働き方の変革「Workforce Transformation」をテーマに、「デスク型」、「在宅型」、「社内移動型」、「外勤型」、「クリエイティブ型」、「エンジニア型」、「現場作業型」の7つの働き方をイメージした展示を行なっていた。

デスク型

 「デスク型」では、ミニタワーやマイクロフォームファクタを採用するデスクトップPC「Optiplex」を展示。フットスタンプの小さいPCで机の上を広く取りながら、操作の手数を減らして作業の効率を上げる方向性。PCと合わせて指紋認証リーダー付きマウスなどを展示し、作業量低減の提案をしていた。

Optiplexシリーズのミニタワーなどを展示した「デスク型」
わずらわしい認証入力をふれるだけで済ませる指紋認証リーダ付きマウスを提案

在宅型

 「在宅型」の展示は、PCに外部ディスプレイを接続してワークスペースを増やし、業務の効率化を図る趣向。ノートPC「Latitude」や、一体型のOptiplexを展示し、省スペース性の確保も視野に入れていた。

かぎられた作業領域で十分なワークスペースを確保する提案をした「在宅型」
一体型のOptiplexは広いスペースが取りにくい自宅での作業に向くという

社内移動型

 「社内移動型」は、移動する社員本人というよりは、移動先での利便性を考慮した提案。Latitudeシリーズをベースに、USB Type-C対応のディスプレイで、すぐにマルチモニター環境を使えるようにするほか、インターフェイスを増やすドックの展示も目立った。

社内移動が多い社員のための環境整備を提案した「社内移動型」
接続先に合わせてUSB Type-AとType-Cを切り替えられるドックのプラグ

外勤型

 「外勤型」では、Latitudeシリーズの2in1およびノートPC各種に合わせて、USB Type-C PDやAC出力のあるモバイルバッテリなど電源絡みの周辺機器も展示していた。外勤型社員の持つノートPCは、業種によって出先で行なう業務内容が異なるため、インターフェイスにレガシーな端子を残した機種にも一定の需要があり、加えて軽量さ、耐久性、性能のバランスが求められることから、幅広いラインナップが用意されている。

業種に合わせて多くのバリエーションがある「外勤型社員」向けのPC
出先で充電できるような周辺機器も用意している

クリエイティブ型

 「クリエイティブ型」の展示では、「Precision」シリーズのモバイルワークステーションに液晶タブレット「Canvas」とダイヤル型デバイス「トーテム」、そして湾曲ディスプレイを接続したマルチディスプレイ環境を提案。社内作業環境の充実だけでなく、作業中のデータを持ち出したり、出先でも簡単な作業ができるように高めのマシンパワーがあるノートPCを選んでいる。

重い動画や画像ファイルなどを扱う高負荷な作業にも堪えるモバイルワークステーションと液タブを合わせて展示した「クリエイティブ型」

エンジニア型

 「エンジニア型」は、社内で負荷の高い作業を継続して行なう観点から、Precisionシリーズの大型ワークステーションを用意。パワフルな環境だが、海外では社内であってもモバイルワークステーションを使う事例が増加傾向にあるという。

財務分析やCADなど負荷のかかる作業を快適に行なうためのワークステーションを展示した「エンジニア型」
展示ではタワー型しか置いていなかったが、現場ではモバイルワークステーションを選ぶエンジニアも増えてきているという

現場作業型

 「現場作業型」の展示は、「Rugged」シリーズの高耐久PCを展示。「Latitude12 Rugged Tablet」に水をかけるデモも実施していた。

過酷な環境での使用にも耐える高耐久PCを展示した「現場作業型」
Rugged Tabletに水をかけるデモ