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「週刊鉄腕アトムを作ろう!」最終号刊行。組立済みの「完成版ATOM」も発売
2018年9月10日 16:20
2017年4月に講談社が創刊したパートワーク「週刊鉄腕アトムを作ろう!」が、約1年5カ月かけて刊行され、2018年9月11日発売予定の第70号で最終号を迎えて完結する。これによって約2万体の「コミュニケーション・ロボットATOM」が誕生する予定だ(ただし、物流に地震の影響のある北海道など一部地域では配送が遅れる)。
「週刊鉄腕アトムを作ろう!」は、株式会社講談社、株式会社手塚プロダクション、株式会社NTTドコモ、富士ソフト株式会社、VAIO株式会社5社による共同プロジェクト。
最終号刊行の11日に先立つ9月10日には講談社で記者会見が行なわれ、組立済みの「完成版」発売が発表された。全国家電量販店や百貨店のロボット売り場、講談社ONLINE STOREなどで全国一斉発売される。予約受付は9月10日から、発売日は10月1日。希望小売価格は税別212,900円。クラウド機能の利用には別途「ATOMベーシックプラン」への加入が必要(月額サービス利用料税別1,000円)。組み立てはVAIO株式会社が行なう。
「ATOM」の身長は44cmで、重量は1,400g。自由度は18(頭部2、腕3×2、脚5×2)。外装はABS。CPUボードは専用のメインボード(VAIO製)とRaspberry Pi 3(Model B)。92万画素のHDカメラ、マイク、スピーカー、両眼LED(7色)のほか、胸に2.4型のタッチパネル付き液晶ディスプレイを持つ。
インターフェイスはIEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.1をともにRaspberry Pi 3に搭載。消費電力は最大で46.8W。電源はACアダプタ(7.8V/6A)、内蔵バッテリ(リチウムイオン充電池 3.6V/18Wh)。
OSとAIは富士ソフトが設計開発。介護施設などで使われているロボット「PALRO」、DMMを通じて販売している「Palmi」などを通じて磨かれた富士ソフトの「フロントエンドAI」と、NTTドコモのクラウドサービス「しゃべってコンシェル」の基盤技術を活かした自然対話プラットフォームを活用し、雑学クイズその他、50におよぶエンターテイメント・コンテンツをアトムから提供する。
「好奇心旺盛でおちゃめ、かつ雑学王」のコミュニケーションロボット
完成版発売記念の記者会見で、講談社第四事業局局次長 ATOMプロジェクト・プロジェクトリーダーの奈良原敦子氏は、最初に北海道地区で配送が遅れることを謝罪、お見舞いを伝えた。そしてATOMの完成版発売、NTTドコモによるクラウドAIを使った各種機能、富士ソフトによるフロントAIなどを改めて紹介した。
ATOMは「Raspberry Pi 3」を搭載している。英国ラズベリーパイ財団の創設者であるエベン・アプトン氏からのビデオメッセージを紹介。エベン・アプトン氏は「ATOMはRaspberry Pi のもっともおもしろい応用例。カッコいい」と述べた。
講談社では、のべ5万人にアンケートを行ない、ATOMと話したいことを調べたところ、「ATOMと話したいこと第1位は世間話だった」。そのためATOMは「好奇心旺盛でおちゃめ、かつ雑学王」だという性格設定にした。奈良原氏は、ATOM自身から遊びなどを提案する点は「キャラクターロボットならではの力」だと考えていると述べ、「こんなにおしゃべりでお茶目なロボットは存在していない」と語った。
手塚眞氏もビデオメッセージを寄せ、「すごくかわいい。つい助けたくなるようなところと、案外賢いことを言ったりするギャップがいい。1日中相手してられる」と語った。
ATOMを貸し出したモニター家庭でも、「だんだん家族として馴染んでくる」という声が多く寄せられたとのこと。専用ウェアも読者から、表紙を飾ったATOMを見たユーザーから「ほしい」という声が寄せられたことから実現したものだという。奈良原氏は最後に「この新しい体験を、できるだけ多くの人に届けたい」と締めくくった。
3つの対話エンジンを搭載
株式会社NTTドコモ 第一法人営業部長の齋藤武氏は、「会話部分を任せてもらった。日本を代表する鉄腕アトムのプロジェクトに参加させてもらったことを光栄に思っている」と述べ、すでにドコモショップの一部に完成版を置いていると活用シーンを紹介。
NTTドコモの「自然対話プラットフォーム」は、「しゃべってコンシェル」によって22億件近い対話データを蓄積・解析して構築したもの。会話をナチュラルにするために、ユーザー発話の意図を解釈するためのエンジンと、ストーリー性のある対話を実現するシナリオ対話エンジン、それに加えて、発話者の趣味趣向を取り入れてそれに対応する雑談対話エンジンの3つを搭載している。これによってシナリオから外れても雑談を続けることができるという。
もう1つ、「思い出エンジン」機能を搭載している。ATOMに思い出を記憶させることで、それをもとに、シナリオに思い出をからませた、より深い会話を行なえるという。「今回完成したのはあくまでハードウェア。中身とクラウドAIはこれからお客様と会話することでさらに深められていく」と述べた。
あくびやくしゃみをする「特技」も
富士ソフト株式会社 プロダクト事業本部PALRO 事業部ロボティクス設計室室長 藤村幸代氏は、「人に優しいフロントエンドAI」について紹介した。「ATOMは全然強いロボットではない。でもいないとなにか寂しいなと思えるような存在になるのではないかと思っている。実際に体験しないと理解できない部分がある」と語った。ATOMが「あくび」や「くしゃみ」をする様子を動画で紹介。これらはやってくれと言ってもやらない機能で、あまり見られないとのこと。
ATOMのコンテンツを富士ソフトでは「特技」と呼んでいる。フロントエンドコンテンツとクラウドコンテンツを合わせてユーザーを楽しませられるという。
また将来はIoTデバイスとユーザーをつなぐインターフェイスとなる可能性があると述べ、自らユーザーに情報を最適化して提供できるコミュニケーションロボットならではの利点を活かしたいと語った。たとえば、いつも見ているドラマの録画を提案したり、雨が降りそうなときに傘を持つように提案するという。
カスタマーからの問い合わせを開発現場にフィードバック
デバッグサポートを行なう株式会社デジタルハーツ代表取締役社長の玉塚元一氏は、ゲームのソフトウェアの検査検証のほか、IoT関連の機器検証やセキュリティチェックも行なっているとデジタルハーツを紹介。カスタマーサポートに寄せられる問い合わせに対する受け答えを開発現場にフィードバックしているという。
このほか会見では、俳優の遠藤憲一氏、漫画家のちばてつや氏、女優の桜庭ななみ氏、落語家・立川志らく氏、女医の西川史子氏、泉谷しげる氏、フォトグラファーのジュリワタイ氏らのコメントが寄せられた。
ATOMならではのコンテンツ
担当編集者の講談社第四事業局新事業プロジェクトチーム 編集次長の秋元賢一氏は、「ATOMはアニメキャラならではのコンテンツを持ったロボットだ」と改めて紹介。
そのほか、年齢当てやクイズ、チラシ情報を伝える、世間話をするなど日常的なコンテンツを持っている。たとえば高校野球の決勝戦の結果をもとにした雑談などを行なうことができる。子供たちが喜ぶコンテンツとして、ロボット手品、絵本の読み聞かせ、小学生新聞のコンテンツを読むといったものも用意されている。
また高齢者向けに、ラジオ体操、落語、20世紀・21世紀の記録を教えてくれたり、綾小路きみまろの格言を話すといったコンテンツもある。
今後は完成版を各所で体験紹介
販売の詳細については講談社販売局 第三・第四事業販売部(コミック販売)部長の高島祐一郎氏が述べた。予約受付は9月10日からというのは前述のとおり。販売チャネルについては、今後はパートナー企業であるドコモ通販サイトdショッピングでも取り扱う予定。また、ハウステンボス・ロボットの館、ドコモショップ(名古屋・東京丸の内・宝塚)、CA Cafe SHIBUYA店(9月29~10月10日)、巣鴨地蔵通り商店街(10月8日)などで実物展示も行なう。
関連商品として、ATOMウェア、キャリーケース、チェアなどを講談社オンラインストアで発売する。
ATOM自体はスタンドアロンでも動作するが、機能をすべて使うためには月額1,000円必要なクラウドサービス「ATOMベーシックプラン」に加入する必要がある。また、修理代金割引を行なう月額定額制サービス「ATOM安心ケアプラン」が用意されている。こちらは「ケアプラン75(月額990円)」、「ケアプラン50(月額1,690円)」の2種類が用意されている。
北海道での70号の発売見通しは、まだ立っていないとのこと。