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キングジム、“うっかり忘れ”を防ぐE-Ink採用電子メモデバイス「カクミル」
~クラウドファンディングの結果次第で製品化
2018年7月25日 14:10
株式会社キングジムは、電子メモデバイス「カクミル」を発表し、クラウドファンディングサービス「Makuake」にて、出資の受付を開始した。
支援額は1万円からで、クラウドファンディングの目標額は1,000万円。期間は10月30日までで、目標額に到達しなかった場合は製品化が見送られる。
製品は4.3型480×800ドットのE-Ink製電子ペーパーディスプレイを搭載したデバイスで、機能としてはメモ、ToDoリスト、カレンダー、時計、電卓の5機能を備える。
加速度センサーを内蔵しており、縦置き/平置きに合わせて表示の向きが自動で切り替わる。
デスク上に置いて、付属のペンですぐにメモを取れるほか、ToDoリストではアラームを設定し、時間になったら音と画面で通知する機能も備える。これによって“うっかり忘れ”を防ぎ、ビジネスをサポートするとしている。
本体メモリにはメモ最大99枚、ToDo最大30件を登録でき、データエクスポート用のmicroSDカードリーダも備える。
本体にバッテリはなく、単3形アルカリ乾電池またはエネループ4本で動作する。
本体サイズは93×41×132mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は未定。
都内で開催された製品発表会には、株式会社キングジム 常務取締役 開発本部長の亀田登信氏、同社商品開発部の東山真司氏、株式会社マクアケ 取締役の木内文昭氏が登壇。
亀田氏は、同社ではモニタリングアラーム「トレネ」で2017年10月にクラウドファンディングを実施したところ、大きな成功を収めるとともに、市場の反応をダイレクトに実感できたと述べ、今回のプロジェクトは2度目のクラウドファンディングの活用になると説明。
カクミルでは、目標額を達成するか否かで製品の製造が決まる「All or Nothing」を採用しており、商品が世に出るかどうかがプロジェクトの成否次第になるとした。
東山氏は、カクミルを「『忘れてた』をなくすデバイス」と紹介。もともとは電子メモ「マメモ」の後継として開発を始めており、メモをしてアラームで見るというコンセプトは変わっていないと説明し、マメモのユーザーから、画面が暗く見にくい、液晶ディスプレイ搭載のため画面が常時表示ではないといった不満の声を受けて、E-Inkディスプレイの搭載でそれらを解決し、より使いやすくなっているとした。
調査によれば、タスク(ToDo)管理をしている人が33.6%いるなか、その管理にメモ帳や付箋紙、カレンダーなどアナログで管理を行なっている人が7割を占めていることを紹介し、カクミルは、アラームで通知してくれるというデジタルの良さと、すぐに書き始められるアナログの良さを合わせた「未来の文房具」製品とアピールした。
健全に淘汰されるクラウドファンディング
今回、カクミルがクラウドファンディングを行なうに至った経緯について、東山氏は、じつは商品化について、社内提案では全員から反対されてしまったが、説得を続けた結果、クラウドファンディングの機会を得られたと明かした。
会議で受けた反対意見としては、「スマートフォンが普及している現在、手書きのメモの必要性はないのでは?」といったものや、「メモやタスク管理の用途のために1万円のデバイスを買う消費者がいるのか?」といった声があったという。
しかし、東山氏や亀田氏らは、電子手書きメモや、電子メモパッド「ブギーボード」などは一定の需要あることから、商品化しても良いのではないかという考えだったという。
そういった会議が行なわれていたのと、トレネのクラウドファンディングを実施したのが同時期だったことから、クラウドファンディングで市場ニーズがあることがわかれば商品化しようという流れになったとのことだ。
次いで登壇した木内氏は、今回のキングジムのようなクラウドファンディングの活用事例は、今後より一般的になっていくのではないかとの考えを述べた。
同氏は、日本でいまオープンイノベーションが叫ばれているにもかかわらず、具体的に生み出されているアウトプットの数が少ない理由として、スマートフォンの普及でユーザーニーズを見通すのが難しくなったことに加え、上場企業ではコーポレートガバナンス重視の中で、意思決定側も気軽に「やろう」と言えない現状があると説明。
日本にはイノベーションの種はあるが、テストトライでその芽を発芽させられる場所が少ないとした。
そこで、同氏は種をばら撒いて最適な環境で芽を出す植物と同様に、「多産多死」の構造の中で、残った種を強化していくかたちで、市場評価によって“健全に淘汰”されるというサイクルを紹介。
これまでのモデルでは、「社内視点」による事業性判断で事業化を検討しており、市場環境の変化のなかで思い切った新商品の決定は難しかったが、クラウドファンディングを活用することで、「消費者から反響のあったもの」だけを事業化できるため、思い切った新商品によってヒットを狙っていけると説明。
購買行動を伴う消費者の反応が見れるため、クラウドファンディングが市場評価に有用であるとアピールし、Makuakeを活用した市場検証サイクルを実施している企業が増えていると紹介した。