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デルとインテルが高知県須崎市と提携。ご当地キャラ「しんじょう君」が2in1 PCで情報発信

高知県須崎市の楠瀬耕作市長

 デルおよびインテルは、高知県須崎市との協業を発表し、2in1 PCやTV会議システムなどを同市に提供する。須崎市では、2019年度を最終年度とした「すさきがすきさ産業振興計画」を策定しており、ここで打ち出した目標達成に向けて、デルとインテルが、最新デバイスの提供などを通じて支援することになる。

 デルとインテルが、地方自治体を支援するのは、2016年の福井県鯖江市に続いて2件目になる。

 2018年4月26日に、須崎市役所 保険福祉センターで行なわれた会見で、高知県須崎市の楠瀬耕作市長は、「デルとインテルという、世界的な企業との連携はありがたい話であり、市役所のなかの働き方改革にもつなげていきたい。さらに、その効果を町づくりへとつなげていくことにも期待している」と述べたほか、「2018年度から、小学校と中学校を、1校ずつをモデル校として、本格的なICT教育への取り組みを開始する。このタイミングで、デルおよびインテルとの提携が可能になったことは喜ばしい。ご指導をいただきたい」とした。

 須崎市は、県庁所在地の高知市から車で約40分。高知県中央部に位置する。面積は135.4平方km。人口は22,000人。

 「高知県の海岸線は750kmあるが、そのうち、須崎市が約100kmの海岸線を有しており、須崎の港の年間出荷額は、四国で1位である。 石灰石の供給でも高い実績があり、この供給が止まると、日本の製鉄業が止まってしまうほどだ。また、みょうがの生産は日本一であり、年間60億円の出荷規模を誇る。さらに、行政では、日本初の下水道管渠コンセッション事業に取り組むなど、官民連携を強化している。官民連携による人材育成にも注力しているところだ」と語る。

 2015年度にスタートした「すさきがすきさ産業振興計画」では、12分野56項目において、数値目標を設定。産学官の連携により、さまざまな取り組みを加速している。

 須崎市 元気創造課の有澤聡明係長は、「須崎市は、人口減少や産業縮小のほか、東日本大震災において、唯一、西日本エリアで震災の被害を受け、南海地震や津波への防災対策を進めなくてはならず、全国トップクラスの財政難の自治体となっている。すさきがすきさ産業振興計画では、かぎられた資源を最大限に生かすため、産学官が一体となって、効率的で、時代にあわせた働き方改革に取り組んでいる。デルとインテルの協力を得て、すさきがすきさ産業振興計画で打ち出した目標の達成を目指すとともに、この目標を大幅に超えていきたい」と述べた。

しんじょう君が2in1 PCを使用して屋外から情報を発信している様子

 具体的には、「しんじょう君事業」、「須崎アンバサダー」、「ふるさと納税」、「暮らすさき」の4つの事業において、デルとインテルが提供する最新デバイスを活用することになる。

 しんじょう君事業では、同市のゆるキャラである「しんじょう君」による情報発信の強化に活用する。

 現在、しんじょう君のTwitterのフォロワー数は6万人。ブログは年間100万PV、Facebookの「いいね!」は8,000件の実績だが、これを2019年度には、フォロワー数で10万人、ブログでは250万PV、Facebookの「いいね!」が17,000件を目標にしている。

 「しんじょう君は、年間50回を超える県内、県外への出張があり、これまでのIT環境では発信できる情報に限界があった。だが、2in1 PCを利用して、職場にいるのと同じ環境で、効果的な情報発信を行なうことができるようになる。どんな場所にいても、須崎市の深い情報を発信することができる」とした。

 なお、しんじょう君は、2016年に開催された「ゆるキャラグランプリ2016」で優勝している。

 「須崎アンバサダー」では、2in1 PCを活用して、海外のファンづくりを進め、外国人観光客の増加につなげる考えだ。

会見が行なわれた須崎市役所
「しんじょう君」は、日本かわうそと地元B級グルメの鍋焼ラーメンを組み合わせたという

 海外で須崎市の良さを発信してくれる須崎アンバサダーを、2019年3月までに、3カ国10人以上に増やす予定であるほか、現在、年間500人程度の外国人観光客を、2026年3月には、人口と同程度の2万人の外国人観光客の観光誘致を見込んでいる。

 すでに、フランス・パリで開催したJapan EXPO 2017への出展を通じて、須崎アンバサダーを選出。しんじょう君とともに見所を回るツアーに招待し、この様子を現地のテレビで放映するなど、外国人観光客の誘致につなげる活動を開始している。「フランスの須崎アンバサダーとの連携では、Skypeを利用して、双方向で情報交換を行なう取り組みを開始する。また、フランス人の国際交流員が2in1 PCを使って、須崎市の市民にフランス語講座を実施することも検討している」という。

古民家素泊まり宿の「暮らしのねっこ」
こちらが宿泊スペース
特定非営利活動法人暮らすさきの大崎緑事務局長
デルが提供したノートPCやディスプレイ
フランスの須崎アンバサダーとSkypeで会話をしながら情報を共有する
会話にはしんじょう君も参加した

 「ふるさと納税」においては、昨年度に11億円の寄付を得た実績があるが、これを2019年度には20億円に拡大する目標を掲げている。

 2in1 PCを使って、返礼品となる商品を撮影し、タイムリーに情報を発信するほか、PCでの帳簿の作成などにも利用する予定だ。

 「須崎市の商品の魅力を伝えることが必要であるが、市役所の担当者が発信するには限界がある。そこで、今回のデルおよびインテルとの協業により、ふるさと納税の返礼品に参加している企業に2in1 PCを手渡し、企業側から魅力的な情報を発信してもらうようにする」という。

 須崎市のふるさと納税の返礼品に参加している土佐龍は、まな板をはじめとする木製家庭用品など、400種類の木製品の生産、販売している地元企業であり、New Latitude 5290 2-in-1を2台を導入し、ふるさと納税の返礼品に関する情報を発信することになる。

 土佐龍の池龍昇社長は、「現在、約50社の地元企業が、ふるさと納税に参加しているが、他の自治体以上に成果を出そうと協力をしている。ふるさと納税の勝ち組になるには、鮮度の高い情報を流し、情報を更新し続けていくことが大切。今回のデルおよびインテルとの協業をきっかけに、須崎市の納税額や、土佐龍のサイトを通じた販売額を増やしたい」と意気込む。

 「暮らすさき」では、特定非営利活動法人である暮らすさきを通じた須崎市への移住を促進する取り組みだが、ここでは、古民家素泊まり宿の「暮らしのねっこ」を、2018年4月からオープン。移住を支援するために、気軽に須崎市に泊まってもらったり、移住に関する情報を発信したりする。

 同市では、2019年度までに、移住者数で20家族40人、移住の相談受付160件、ホームページの閲覧数で15万PVを目指す。

 暮らすさきでは、ノートPC「New Latitude 5290」と、カメラ搭載24型ディスプレイ「P2418HZm」を使用。移住に関する情報発信を行なったり、フランスの須崎アンバサダーと情報交換を行なったりする。

 また、暮らしのねっこに宿泊を希望する人に、ベッドやトイレ、居間などを2in1 PCに搭載したカメラを使って撮影して動画を送信したり、Skypeで会話をしながら紹介することができる」(特定非営利活動法人暮らすさきの大崎緑事務局長)という。

須崎市にある土佐龍
土佐龍の土佐龍の池龍昇社長
木製家庭用品の生産現場
直売所の様子
年間25万枚のまな板を生産している。中央は代表商品の「極」シリーズ
導入されたNew Latitude 5290 2-in-1
今後は自治体から情報を発信するのではなく企業側から情報を発信するかたちになる

 「ゲストハウスをオープンしたことで、人員が増えなくても、市役所の業務が増加することになる。2in1 PCを使用することで、より効率のいい働き方を実現し、レベルのするためのツールとしても活用したい」(須崎市 元気創造課の有澤聡明係長)とした。

須崎市元気創造課の有澤聡明係長

 さらに、移住だけではなく、新たなファンづくりのためにコミュニティとして「meets奥四万十」を設置。Skypeなどを通じて、都市と須崎をつないだ交流も行なう考えだ。

デル 常務執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部長の山田千代子氏

 デル 常務執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部長の山田千代子氏は、「デルでは、デジタルトランスフォーメーション、ITトランスフォーメーション、ワークフォーストランスフォーメーション、セキュリティトランスフォーメーションの4つのトランスフォーメーションにフォーカスして、顧客のIT環境を支えている。そのなかでも、場所や時間の制約にとらわれない働き方を推進するワークフォーストランスフォーメーションが、今回の須崎市との連携において中心的な取り組みになる」と述べた。

 また、「デルでは、働き方改革を支援する7つのメソッドを提唱。一人一人にあったPCを用意して、働き方を支援している。今回の須崎市との協業を通じて、最適な使い方の実例を発信していきたい。今回の協業はデルにとって、すぐに利益を生むものではないが、創業者であるマイケル・デルが掲げた社会に貢献するというミッションに沿ったものであること、須崎市での活用事例を紹介できるという点でのメリットがある」と説明した。

 「須崎市では、働き方改革の推進やICT教育への注力、さらには、ITによる町おこしを進めており、少子高齢化が進むなかで、市民の能力を最大限発揮する取り組みや、国際化、語学学習などの習得に向けた強い意欲、そして、元気創造課に代表されるように、若い発想や若い力を活用する姿勢があり、デルが目指す方向と、同じ方向に向かっていけると考えた。実ビジネスの経験があり、強いリーダーシップを持つ楠瀬市長による、変えていくという強い意思が感じられる自治体であることから、デルの方から協業を申し出た。今後、なにを進めていきたいのか、どう使っていきたいのかということをヒアリングし、提供する機材を決めることになる」と語った。

 さらに、山田常務執行役員は、2016年から開始した福井県鯖江市との協業成果についても言及。「鯖江市では、毎年4月の統計では人口が減っていたものが、初めて増加に転じた。本社が東京にある企業のデザイン部門が鯖江市の空き屋を使って、リモートオフィスとして活用したり、テレビ会議システムを主婦が使いこなして情報交換をするといった成果もあがっている」と述べた。

インテル ビジネス・クライアント マーケティングディレクターの飯田真吾氏

 一方、インテル ビジネス・クライアント マーケティングディレクターの飯田真吾氏は、「高知県内の企業における働き方改革の実行率は、66%と高いが、テレワークについてはあまり進んでいないという傾向が出ている。労働力の確保という点でもテレワークは重要なものだと考えており、インテルではその点を支援したい。今回はデルとの協業によって、須崎市の働き方改革を支援していくことになる。働き方改革の成功事例として、全国に発信していきたい」とした。

 加えて、「インテルは、ビジネスPC市場における優先課題として働き方改革を打ち出しており、そのなかで、2in1 PCの利用促進、Windows 10への移行に伴う第8世代Coreプロセッサの普及、今年後半にはノートPCにも対応する予定のOptaneメモリへの移行促進、vPro搭載機の拡充、商用市場でのVR/ARおよびAIを主導することに取り組んでいる」などと説明した。