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デルとデータシティ鯖江市がコラボレーション、第4の産業への先進的な取り組みを支援

鯖江市役所庁舎

 デルが最先端のデータシティとして知られる福井県鯖江市と協業することになった。同市ならではの先進的な取り組みを知って支援を申し出た。さらなる発展に貢献できるはずと、市内4拠点にIntel第6世代Core搭載の最新のPC、ワイヤレス機器、4Kディスプレイなどの機材を提供することになり、その贈呈式が2月12日、鯖江市内の市民スペース「hana道場」で執り行なわれた。

眼鏡の街、繊維の街、漆器の街、ITの街としての鯖江市にデルが注目

 福井県鯖江市は県庁所在地の福井市の南、約15kmに位置する。福井市のいわゆる衛星都市として機能する人口7万人弱の街だ。当然、昼間人口は少ない。もともとは農業の街だったが、農閑期の産業として漆器や眼鏡に取り組むようになり、それらが新たな産業として確立してから150年が経過する。

 近年では眼鏡、繊維、漆器の3大地場産業に特化した物作り産業の街として栄え、眼鏡フレームは国内シェア96%、業務用漆器シェア80%を誇っている。平成の大合併に際しては、2003年に福井市等との5市町村合併について住民投票が行なわれ、その是非を争い破談に至っている。それを受けて市長リコールの住民投票も実施され、現職市長の即日解職が成立するという希有な経験を持つ街だ。

庁舎内のIT会議室。ここにデルから提供された機材が設置され、会議等に利用されることになる

 そのリコール選挙で新たに選ばれたのが現在の市長牧野百男氏だ。同氏の掛け声のもと、鯖江市はITに熱心に取り組むようになり、まちづくり三本の柱の1つとして、ITを掲げるようになった。ITで市民がより豊かさを感じ、ITを眼鏡、繊維、漆器に続く4番目の産業にしたいというのが同市の願いだ。

 ちなみに、秀丸エディタの作者、秀まるおこと、斉藤秀夫は鯖江市出身で、現在、氏は山本和夫氏とともに秀シリーズソフトウェアの開発を同市内で続けている。メガネ、漆器、秀丸エディタ。その圧倒的なシェアを考えれば、この記事を読んだ方は、そのどれかで鯖江市との関わりがあると言えるかもしれない。

 その鯖江市にデルが注目した。

5年前にオープンデータ施策をゼロ予算で始めた鯖江市

 鯖江市のオープンデータへの取り組みは「データシティ鯖江」として着実にその成果を上げている。市内公園のトイレ情報などの施設情報、観光情報、文化関係情報、タウンバスのロケーション情報など、公開データは既に150種類に上り、それを活用した民間作成アプリは約120種類が存在する。また、市民のための高年大学実施に加え、各地区の公民館ではタブレットやアプリ講座が頻繁に開催されている。

 牧野百男市長は、2010年の時点でオープンデータをゼロ予算で始めたことを振り返り、それでも国より1年半先駆けたことで早い時期から脚光を浴びることができたとし、今、その分野でのフロントランナーとしての地位を確立している市のバックグラウンドを紹介した。これからもオープンデータ、ITの街として努めることを表明し、東京中心のIT社会が地方に回帰することを願いたいとした。

 当然のことながら眼鏡のプロとしての鯖江市はスマートフォンの次の情報端末として「スマートグラス」にも注目している。HMDデバイス「M100スマートグラス」をマウントできるメガネフレーム「M100スマートグラス用メガネ」は鯖江市の三工光学とVizixによって共同開発されたものだ。さらに、AR機能を搭載したスマート眼鏡「Cool Design Smart Glass」は村田製作所と鯖江市との共同開発だ。

市内河和田地区の「うるしの里会館」。ここに設置された河和田デジタル工房には漆器にかかわる若手の職人が3Dプリンタなどの最新IT技術を頼り足繁く通う
相談役として常駐している木戸健氏は、岸博幸教授による慶應義塾大学メディアデザイン研究科がすすめる伝統工芸みらいプロジェクトのメンバーだ

市内4拠点を結ぶIntel Uniteによるコミュニケーションインフラをデルが提供

鯖江駅にほど近い「らてんぽ」スペース。市民の憩いの場としても使われている

 こうした鯖江市の取り組みを知ったデルは、そのさらなる発展を願い、市民活動のための協力を考えた。2015年末にその意思を同市に伝え、市側の要望を聞いた上で、インテルと共同で、各種の機材提供をすることになったわけだ。

 鯖江市内にはITによるものづくりの拠点として、Hana道場(こども起業家道場)、うるしの里会館にある河和田デジタル工房があり、市民のITに対する関心を高めたり、職人の技としての漆器づくりを再発見再創造すべく活動を続けている。また、駅近くの商店街にはギャラリースペースとしての「らてんぽ」があり、市民活動の発表の場として利用されている。

国登録文化財、近代化産業遺産群「旧鯖江地方織物検査所」を利用した「Hana道場」。建物は昭和10年に建築されたもの。ここで新世代のこどもがITを学ぶ
建物の外観。昭和初期の建物から新しい未来が生まれる

 デルの申し出を受けた鯖江市は、これらの拠点と市役所のIT会議室を結ぶコミュニケーション環境の構築を考え、そのための設備の提供を頼ることにした。

 デルはそのために4Kディスプレイ、最新のIntel第6世代プロセッサ搭載ノートPC「Latitude E7000シリーズ」、Atom搭載タブレット「Venue 11 Pro 5000」シリーズとともに、インテルがUniteセッティング済みの「OptiPlex 7040シリーズマイクロデスクトップ」などを提供し、4拠点に設置することになった。Intel Uniteは、ハブとなるPCを設置し、そこに会議室内やリモートのロケーションから接続することで、最大4台での電子会議ができるソフトウェアによるコミュニケーションシステムだ。

 デルの塙暢彦氏(公共営業統括本部長)は、変わりつつあるワークスタイルに注目、デルが最先端のデータシティ鯖江市と一緒に、同市内のコミュニティをいっそう活性化し、ベンチャー企業の誘致などに繋げることができる可能性に言及した。そして、今後、県外、市外からのIターン、Uターンを促進するアイディアを推し進めるための環境として提供器材を活かしてもらうことで、鯖江市の創生施策に寄与したいとした。

 なお、デルでは、今回の鯖江市を最初の取り組みとし、今後も地方創生に熱心に取り組む自治体があれば、デルの掲げる「Future ready workforce」次世代のワークスタイルに貢献するための施策として、地域の生産性、効率性をアップさせるためITの力でサポートし積極的に支援して行きたいとしている。

牧野百男鯖江市長
デルの塙暢彦氏(公共営業統括本部長)
塙氏から目録を受け取る牧野市長
贈呈式会場ではIntel Uniteのデモも披露された。画面内は「らてんぽ」だ

(山田 祥平)