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Rockit Cool、オーバークロック向けIntel CPU用ヒートスプレッダを単体発売

Copper IHS for LGA 1151

 CPUのヒートスプレッダを除去するツール「Rockit 88」でお馴染みのRockit Coolから、純正のCPUヒートスプレッダの置き換えとなる「Copper IHS for LGA 1151」が発表された。

 日本正規代理店のRockit Cool Japanでも取り扱っており、価格は3,320円だ。今回、Rockit Cool Japanより1つサンプル提供があったので、簡単にご紹介したい。

 あまり知られていないかもしれないが、じつは、IntelはPentium 4の世代より、ダイとヒートスプレッダの接合方法を試行錯誤していた。発熱の多い上位モデルには、より高コストなソルダリング(金属によるはんだ付け)、発熱の少ない下位モデルにはグリスを採用し、品質と価格のバランスを図っていた。

 ところがIvy Bridge世代より、上位でもグリスを用いるようになった。Haswell、Devil's Canyon、Broadwell、Skylake、Kaby Lake、そして最新のCoffee Lakeに至るまで、一貫してグリスを採用。また、ソケットが異なるエンスージアスト向けのプロセッサも、Skylake-X世代でグリスを導入するようになった。

 もちろん、これらのプロセッサを定格で動作させている分には、なんら問題のない仕様である。しかしオーバークロックが可能な「K」シリーズにおいて、このグリスが熱伝導のボトルネックとなり、オーバークロックのポテンシャルを削ってしまう。

 そこでオーバークロッカーのあいだで、ヒートスプレッダをいったん除去し、このグリスをより高性能な液体金属に置き換えるという手法が編み出された。当初は、カミソリの刃などを使って、基板を傷つけないよう慎重し作業しなければならなかったが、Rockit 88を始めとする殻割り専用ツールの登場により、この殻割りによるプロセッサ破損のリスクが大きく軽減され、保証を度外視すれば一般ユーザーでもチャレンジしやすくなった。

 ところが、グリスを液体金属に置き換えても「熱伝導にボトルネックはある」と断言してしまうのが、オーバークロッカーの世界。オーバークロッカーらが次に着目したのは、CPUのヒートスプレッダそのものだ。

 Intelのヒートスプレッダは、LGA775の時代から大きく変わっておらず、ヒートシンクに接触する面積は約826.5平方mm(約28.5×29mm)。一方のAMDを例に挙げると、Socket 940/754時代から約1,406.25平方mm(約37.5×37.5mm)であり、Intelと比較して1.7倍も面積的が広い。同じ発熱量の場合、面積が広い方が、より多くの熱をより容易にヒートシンクに伝えられるのは、想像に難くない。

 Copper IHS for LGA 1151はその発想をもとに制作された、LGA1151プロセッサ(Skylake/Kaby Lake/Coffee Lake)専用のヒートスプレッダだ。純正のヒートスプレッダと同じく純銅製だが、純正より15%表面積が広く、より多くの熱をヒートシンクに伝導できるのがウリだ。純正とは異なり、コーティングされておらず銅の色むき出しのままな点もユニークである。

 実際に計測したところ、ヒートスプレッダは横は34mm、縦は31mm。左右にリテンションメカニズムの固定ノッチ用に、2×13mm程度の切り欠きがあるため、この分を除いた実効面積は約1,002平方mm。計算上、純正と比較して21%ほど大きく、その分熱伝導に優れるわけだ。

 残念ながら今回、殻割りできるLGA1151のCPUを用意できずテストできていないのだが、公式によると、最大で7℃の温度低下を実現するという。熱がボトルネックでオーバークロックできなかった個体で、1ランク上のクロックを目指すことはできそうだ。

 製品パッケージには、ヒートスプレッダのほかに、Rockit 88専用の、ヒートスプレッダを正しい位置に戻すためのアラインメント調節ツールが付属している。単なる殻割りと液体金属のリプレースで満足せず、さらなる上のクロックを目指すユーザーは、チャレンジしてみると良いだろう。

ダイ接合面
Intel純正のヒートスプレッダとの比較。写真はCore i7-4770Kのもの。なお、Copper IHS for LGA 1151はCore i7-4770Kで利用できない
重量は30gであった
Rockit 88専用のアライメントツールが付属する