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「夏のCPU殻割り大会」の宿題を片付ける

宿題を片付けるべく編集部で作業している筆者

 先週行なわれたPC Watch主催イベント「夏のCPU殻割り大会」。Intel CPU殻割り専用ツール「Rockit 88」を用いて、CPUのヒートスプレッダを除去するというニッチなイベントだが、大会では参加者の分を含めて、20個以上のCPUが殻割りされ、無事全てのCPUを殻割りすることができた。Rockit 88は世界で最も安全にCPUを殻割りできるツールであることが証明された。

 殻割りは無事終了したが、いくつか宿題を残していたので片付けるとしよう。

 まずはデルの「ALIENWARE Alpha」に搭載されたCore i7-4770K。生放送では、Prime95(ストレステスト)実行時のCPUの温度が、殻割り前と同じ92℃に達したことをお伝えした。生放送終了後、再度分解して中身を確認したのだが、Liquid Pro(液体金属)は問題なくヒートスプレッダと接合できていた。

 念のため、コンデンサをグリスで絶縁し、シール材を全て除去、そしてLiquid Proを追加で塗布して戻してみたが、結果的に92℃で変わらなかった。

 実は予想はしていたのだが、これはALIENWARE AlphaのCPU用ヒートシンクはかなり小ぶりであるため、Core i7-4770Kの発熱に追いつかず、温度は92℃で飽和するためだ。これ以上冷そうとするのであれば、さらに大型のヒートシンクを搭載するしかない。殻割りはやはりオーバークロックでこそ効果を発揮するのである。

 一方、“息子のMinecraft PC用”のPentium G3258だが、生放送ではそもそも4.5GHzのオーバークロックに失敗していた。検証時は問題なく動作していたのだが……。とりあえず、マザーボードをSupermicroの「C7Z97-M」から、ASUSの「Z97-PRO GAMER」に、CPUクーラーをThermalrightの「Silver Arrow IB-E Extreme」からCRYORIGの「R1 Ultimate」に変更し、再度オーバークロックにチャレンジした。

 3.2GHzの定格で既に1.09Vの電圧を要求する“ハズレ”個体だったのだが、コア電圧1.31Vで4.5GHz動作させた時点で既に70℃を突破し、1.388V/3.6GHzが上限だった。この時既に温度は78℃に達し、これ以上は常用が難しいと思われる温度だった。

 子供向けPCに搭載されるCPUであるため、Rockit 88でヒートスプレッダを除去した後、表面実装のコンデンサをグリスでしっかり絶縁し、Liquid Proを丁寧に塗る。その後両面テープをPCBに貼り付け、付属のアライメントツールをセット。ヒートスプレッダを正しく嵌めたら、上から「Relid Spider」と呼ばれるY字形のツールを載せ、ボルトで位置を固定してから、中央に太いボルトをねじり込んで圧着させる。これで、ヒートスプレッダが正しい位置に戻る。

今回犠牲となるPentium G3258
手応えが全くなかったので途中省略。サクッと割れる
残ったシール材を、Rockit 88付属の木材で丁寧に剥がす
コンデンサをグリスで絶縁し、Liquid Proを塗布。そして両面テープを貼る
ヒートスプレッダのアライメントツールをセット
アライメントツールによって正しい位置に戻せる
Y字形パーツ「Relid Spider」を取り付ける
上からボルトで圧着する
両面テープがはみ出しているが……他人の物なので気にしない(笑)

 さて、殻割り後の効果だが、定格動作の負荷時温度は42℃と、5℃の低下が確認できた。そして1.388V/4.6GHz動作時は64℃と、殻割り前と比較してなんと14℃もの低下を実現した。60℃台であれば、十分常用可能な温度だろう。

 4.7GHzについては1.42Vを入れてもブルースクリーンでストレステストを実施できなかったが、そういえばHaswellはコア電圧と入力電圧(VCCIN)は0.4V以上余裕を持たせないとダメだと気づいたのは、機材を分解してCPUを“パパ”に返した後だった。まあ、温度に余裕ができたので、空冷でも4.8GHzぐらいは目指せそうである。

殻割り前。4.6GHz駆動で78℃
殻割りしてLiquid Proを塗布。4.6GHz駆動で64℃。大きな効果が得られた

 なお、生放送中に唯一殻割りの効果が確認できた弊社某営業のCore i7-6700Kだが、その後は彼自身のシステムで順調に稼働しているそうだ。