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AMD、未発表の小型ビデオカード「Radeon RX Vega Nano」を公開
~PFLOPS級HPCも披露
2017年7月31日 18:54
米AMDは、米ロサンゼルスで7月30日~8月3日に渡って開催されている「SIGGRAPH 2017」が開催されているLos Angels Convention Center近くの会場で記者会見を開催し、同社の最新GPU製品やCPUなどを発表した。
Radeon RX Vegaシリーズの未発表製品「Radeon RX Vega Nano」を公開
記者会見の冒頭に登壇した、米AMD社長兼CEOのリサ・スー氏は「現在我々はテラバイトの話をしているが、今後データは爆発的に増えていく、ペタバイト、さらにはエクサバイトが必要とされる時代が来るだろう。そうした大量のデータを処理するのに、CPUとGPUはどっちの大事かというのはありがちな議論だ。
ある企業はCPUこそ大事だと言い、別の企業はいやGPUだと言う。しかし、AMDの考え方は、CPUもGPUも大事であり、両方が強調して動くことこそ大事だ」と述べ、今回のSIGGRAPH 2017の記者会見では、CPU、GPUどちらにもフォーカスした話をすると始めた。そして、米AMD上席副社長兼チーフアーキテクトのラジャ・コドリ氏にバトンタッチした。
コドリ氏は「この20年でグラフィックスは大きく進化してきた。初めは2Dアクセラレーションからスタートし、その後3Dアクセラレーションへ、シェーダになり、複数のディスプレイで表示、そしてVRへと進化してきた。それでも、まだフォトリアリスティックなリアルタイム表示には遠く、(実現には)現在よりも100万倍処理能力が必要になる」として、まだまだGPUへの処理能力へのニーズは高まるばかりだとした。
そうしたコンテンツを作るクリエイターの代表として、EPIC Gamesのティム・スイニー氏を壇上に呼び、まだまだ処理能力が足りていないというディスカッションを行なった。
そして、その後にコドリ氏はスイニー氏にプレゼントとして謎の箱を渡すと、中からでてきたのは、Radeon RX Vega Nanoだった。
現在までのところ、Radeon RX Vegaのビデオカードはフルサイズのみが明らかにされており、よりサイズが小さなNanoの存在はこれまで明らかにされてこなかった。しかし、今回デモされたことで、その存在が明らかになり、今度どのタイミングで投入されるのかが注目されることになる。
Ryzen Threadripper 1950XはCore i9-7900Xを最高38%上回る性能を発揮
続いてコドリ氏は、AMD執行役員兼クライアントビジネス事業部 事業部長のケビン・ランシング氏を壇上に呼び、同社が8月に発売を計画しているRyzen Threadripperについて説明を行なった。
ランシング氏は、「Ryzen Threadripper 1950Xは16コア/32スレッドに対応しており、現時点でPCの世界では最もハイエンドなCPU。競合他社のCore i9-7900Xと比較すると、最大38%高い性能を発揮することができる」と述べ、Ryzen Threadripperが、現時点でIntelが発売している中で最上位の製品となるCore i9-7900Xを上回っており、AMDがIntelとの性能競争で逆転を果たしているとアピールした。
その上で、Ryzen Threadripper 1950X(16コア/32スレッド、3.4GHzベース/4GHzブースト)と1920X(12コア/24スレッド、3.5GHzベース/4GHzブースト)は8月10日、最下位SKUとなる1900X(8コア/16スレッド、3.8GHzベース/4GHzブースト)は8月31日に販売を開始するとアピールした。
なお、Ryzen Threadripperのそれ以外のスペックは、4チャネルのDDR4メモリ、64レーンのPCI Express 3.0と共通しており、すべての製品が倍率アンロックとなっている。価格は1950Xが999ドル、1920Xが799ドル、1900Xが549ドル。
また、同日発表されたVegaアーキテクチャの、開発コードネーム“Vega 10”ベースとなるGPU新製品Radeon RX Vegaについても説明した。
特に下位製品となるRadeon RX Vega 56は、399ドルと低価格でありながら単精度の浮動小数点演算で10TFLOPSを越えているとアピールし、コドリ氏は「10TFLOPSの壁を399ドルで初めて破った」と述べ、Vegaアーキテクチャが今後20年の基礎的な存在になるとアピールした。
Radeon Pro SSGを利用すると、PCでも8K動画をリアルタイムに編集可能に
次いでコドリ氏は、SIGGRAPHの主役とも言えるプロフェッショナルグラフィックスに話題を移し、AMD Radeon Pro グラフィックス事業部長のオギ・ブルキッチ氏を壇上に呼び、同社が昨年のSIGGRAPHで発表したプロフェッショナルグラフィックスのRadeon Pro WXシリーズに関して説明した。
プロ向けGPUは、NVIDIAのQuadroが非常に強い市場になっており、それまでのAMDのプロ向けブランド製品だった「FireGL」はなかなか太刀打ちできていない状況だった。しかし、ブルキッチ氏によれば「昨年(2016年)Radeon Pro WXシリーズを投入して以来、売り上げも出荷数も増えている」と述べ、Radeon Pro WXシリーズの投入後ビジネスが順調に推移しているとアピールした。
コドリ氏は「Radeon Pro WXを投入して以来、399~799ドルのレンジの製品はある。それ以上のレンジの製品はないのかと聞かれ続けた。今こそ、その答えを出そう」と述べ、今回のSIGGRAPHではVegaベースのRadeon Pro WX910とRadeon Pro SSG(2TB版)を投入することを明らかにした。
Radeon Pro WX910はVega 10のダイを利用して、12.3TFLOPS(倍精度時)の演算性能を備え、Vega 10の最大スペックである16GBのHBM2メモリを備えている。ブルキッチ氏によれば、価格は2,199ドルとなる。
Radeon Pro SSG(2TB版)は、2TBのNVMeフラッシュメモリストレージを、PCI Expressのスイッチを介して接続している形の製品で、NVMeストレージをフレームバッファとして利用し、16GBのHBM2メモリを一種のキャッシュとして利用する。これにより、大容量のデータをフレームバッファに展開して高速に処理することが可能になる。
GPUがフラッシュメモリにデータを展開するには、「SSG API」と呼ばれるAMD独自のAPIをサポートしている必要があるが、今回Adobeの「Premiere Pro CC」と「After Effect CC」でこのSSG APIに対応しており、これまでは30fpsの表示が難しく、リアルタイム編集することができなかった、8K動画のリアルタイム編集ができるようになるとアピールした。価格は6,999ドルだ。
単精度で1PFLOPSの処理能力を持つHPC「P47」を初めて公開
最後にスー氏が再び登壇し、まとめて終わりかと思われたその時、「もう1つお話ししたいことがある。今後はペタバイトやエクサバイトの処理を行なうのも当たり前になるというお話をしたが、AMDでもインベンテックやサムスンといったパートナー企業と協力してペタバイトの処理能力を持つHPCを開発した、それがこのP47だ」と述べ、同社が6月に発表したデータセンター向けCPUとなるEPYC、同社のデータセンター向けGPUとなるRadeon Instinctを搭載した、単精度で1PFLOPSの処理能力を持つ1ラックHPCを紹介した。
スー氏によれば。20個のEPYC、80個のRadeon Instinct、さらに10TBを越えるDDR4メモリから構成されているという。
その後、再びコドリ氏が登壇し、同社のサンノゼのラボに設置されているP47にアクセス(会場に運ばれてきたものは、会場の電源容量の問題でLEDだけがつけられている)し、VDI(デスクトップ仮想化)で4つのクライアントからアクセスしてそれぞれレンダリングする様子や、1PFLOPSのフル性能を活かしてレンダリングする様子(処理能力は追いついているのだが、回線の方が追いつかないという様子が見て取れるほど、高い処理能力を備えている)などが公開された。