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インテル、自動運転のすべてにソリューションを提供できるとアピール

 インテル株式会社は、都内にて同社の取り組みを紹介する「インテル・プレスセミナー」を開催した。

 挨拶を行なったインテル株式会社 代表取締役社長の江田麻季子氏は、直近の主要な発表を振り返り、サーバー向けに2017年半ばに投入予定の「Xeonプロセッサスケーラブルファミリー」のほか、個人向けデスクトップPCでの高性能コンピューティング需要の増大に合わせ、第8世代Coreプロセッサ(2017年後半提供予定)および、Optaneメモリを提供すると説明。

 Core Xシリーズプロセッサファミリーも提供することで、クリエイターやPCゲーマーに向け、強力な性能を提供するとした。市場規模が拡大しているゲーミング分野にも注力し、ESLとのパートナーシップや大会の開催などをアピールした。

 同氏は、Intelの戦略的サイクルにおける注力分野には「自動運転」、「AI/機械学習」、「IoT」、「5G」、「VR/ゲーム/e-Sports」の5つがあると述べ、今回のセミナーでは、特に自動運転についての取り組みの説明が行なわれた。

インテル株式会社 代表取締役社長 江田麻季子氏
最近の主要ニュース
Xeonプロセッサ スケーラブルファミリー
高性能PCの需要増大
Core Xシリーズプロセッサ
ゲーミング分野
戦略的サイクル
注力分野

 インテル株式会社 事業開発・政策推進ダイレクター兼チーフ・アドバンスドサービス・アーキテクトの野辺継男氏は、自動車は1970年までITと関連がなかったが、ECUが搭載されるようになりABSやスタビリティコントロールといった運転支援が実現されていったと説明。

 日本では、2000年以降携帯通信網によりインターネットと接続可能になったことから、ナビゲーションシステムなどで車とITの組み合わせが普及したが、世界的には2010~2015年にかけて、クラウドを活用した車とITとの統合が進んでいったという。

 今(2015~2020年)は、そこから進んで自動運転にシフトしている。同氏は、ICTの指数関数的な成長に合わせて、車も劇的に変化すると見込まれていると述べ、米国では自動車が過去100年分で変化してきた以上の変化が、今後10~20年でもたらされると言われていることを紹介した。

 自動運転の実現時期については、以前は2020年に高速道路、2025年に幹線道路の自動運転が可能になると予測されていたが、3次元地図や機械学習によって急激に進化しており、残すは自宅までの“ラスト1マイル”だけとなっていると述べ、2020年にもドライバーレスタクシーが実現できるのではないかと語った。

インテル株式会社 事業開発・政策推進ダイレクター兼チーフ・アドバンスドサービス・アーキテクト 野辺継男氏
2010~2015年でクラウドと自動車が連携
2015~2020年で車載のセンサーで社外の状況が分かるように
2020~2025年で人に代わってコンピュータが運転を行なうようになる
自動運転の分類
機械学習の発展
高速道路の自動運転は実現しており、ドライバーレスタクシーも可能になる
駅などから家までの“ラストワンマイル”の運搬事業
自動運転におけるコンピューティング能力

 インテル株式会社 執行役員 Automotive担当の大野誠氏は、Intelは自動運転について、この1~2年で積極的かつ活発に開発を行なっているが、自動車業界への本格的な参入は十数年前から行なっていると説明。

 カーナビゲーションシステムや車内エンターテイメント機器といったインフォテイメント分野向けに、x86製品を投入してきたという。世界では30車種に採用された実績があり、国内でも主要数社で採用実績があるという。

 自動運転を含め車載システム全体が高性能かつインタラクティブで高機能なものにシフトしていると述べた同氏は、それにより高い処理性能を持ったソリューションへの需要が高まっているとした。

 同氏は、今後の自動車は自動運転で膨大なデータの生成/処理を行なうことになり、言わば「車輪の付いたデータセンター」になるとして、現状の車はマイクロコントローラのネットワークによる分散型コンピューティングだが、データセンターで起きたように高性能な統合型コンピューティングへ変わっていくと述べた。

 自動運転には車載システム、ネットワーク、クラウドの3要素が必要となるが、同氏はIntelではそのすべてにソリューションを提供できるとアピール。しかし、Intelだけでは自動運転は実現できないと述べ、業界パートナーとの協力が必要であるとした。

 そのため、同社では「Intel GO」と称する自動運転プラットフォームを提供しているという。具体的には次世代XeonやAtomなどを採用する自動運転開発プラットフォームや、次世代通信規格5Gのプラットフォーム、データセンター向けのテクノロジーなどで、次世代コックピット、車載コンピューター、データセンター、ネットワークのそれぞれにソリューションを提供し、自動運転の変革をリードするとした。

インテル株式会社 執行役員 Automotive担当 大野誠氏
以前から自動車業界に参入
今後求められるコンピューティング性能
Intelのソリューション
Intel GO
戦略的取り組み

 日本アルテラ株式会社 代表取締役社長の和島正幸氏は、自動運転におけるFPGAについて紹介を行なった。

 同氏は、以前は試作品開発などで使われていたFPGAだが、今ではあらゆる市場で採用されていると説明。具体的には、半導体製造などインダストリアル分野での製造機器への採用、メガソーラーのパワーコントローラ、ドローンのほか、昼に大量のデータへのアクセスを提供し、夜間にアクセス頻度に応じデータを並べ替えるといったデータセンターで、ハードウェア的に昼夜で機能を最適化できる点から採用されているとした。

 またFPGAは多機能アクセラレータであると述べ、自動運転では、複数センサーデータをまとめるアクセラレータとして車に、送信アンテナ内の信号の歪み補正処理でネットワークに、データセンターでは機械学習のためと、エンドツーエンドでFPGAを使えると説明した。

 同氏は、自動運転の実現に向けた課題として、高い演算性能と消費電力の両立、車両制御や衝突回避などのため、数百msから数十msレベルのリアルタイム処理、安全性とセキュリティの3点を挙げ、FPGAでは、ハードワイヤードで処理の最適化ができるため高速なリアルタイム処理が可能で、かつ回路を簡素化できるため高い電力効率を提供できるとした。

 安全面では、起動時にROMからアーキテクチャにロードされるが、ROM内は暗号化されており、書き換え時も認証を噛ませることで安全性を確保しているという。また、抽象化されたプログラミングにより、OpenCLでソフトウェア開発のようにハードェアを設計できる点も、車種によってセンサーの数が違っても柔軟に対応できるため、自動運転での利点になるとした。

 IntelではXeonまたはAtomプロセッサとArria 10 FPGAの組み合わせを自動運転開発プラットフォームとして提供する。

 同氏は、Arria 10は第5世代目となるFPGAで、1TFLOPSの浮動小数点演算性能と66万ロジックエレメントのカスタムロジック領域を持つとアピール。カスタムロジックはASICのゲートに換算すると、およそ660万ゲートに相当するという。

 Intelのエコシステムでは、車載のシステム開発の認識、センサー・フュージョン、位置推定、環境モデリング、ドライビングストラテジーの5段階のうち、Intelでは前述の3つにFPGAの利用が想定されているとのことだった。

 自動運転(および機械学習)におけるGPUに対するFPGAの優位性については、GPUと異なり演算によってハードェアのビット幅を最適化できることによる消費電力の低さを挙げた。またIntelという1社で、高性能なCPUとFPGAを組み合わせた環境を提供できるというのも強みであるとした。

日本アルテラ株式会社 代表取締役社長 和島正幸氏
FPGAはあらゆる市場に
多機能アクセラレータ
課題
Intel FPGA
Arria 10 GX
エコシステム