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日本マイクロソフト、Windows 10 Anniversary Updateで追加された多数の新機能を解説

~ASUSがTransformer 3 Proの国内版を参考展示

日本マイクロソフトで展示されたWindows Ink対応の2in1デバイスなど

 日本マイクロソフト株式会社(以下米国本社の表記と合わせてMicrosoftに統一)は、東京都内の本社において記者説明会を開催し、8月2日(米国時間)より提供を開始したWindows 10の最新版となるWindows 10 Anniversary Update(バージョン1607)の解説を行なった。

 開発コードネームでRedstone1(RS1)で知られるWindows 10 Anniversary Updateは、昨年(2015年)の11月に提供開始されたWindows 10 November Update(開発コードネーム:Threshold2=TH2、バージョン1511)に続く大規模アップデートで、複数の機能アップデートなどが追加されている。

 日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 Windows&デバイス本部長 三上智子氏は「今年度は、Windows 10 Anniversary Updateにおいて新しいデバイスでの新しい価値を提供し、法人での展開を加速していきたい」と述べ、昨年度のテーマだった法人でのWindows 10の評価開始から一歩進めることを明らかにした

新機能をサポートするハードウェアを搭載した新デバイスで価値を提供

 記者説明会は、Windows 10が2015年7月29日に提供開始されてから1年が経過して、2番目の大規模アップデートとなるWindows 10 Anniversary Updateの登場を記念して行なわれた。これまで、Windows 10は最初のバージョンを入れると3つのメジャーバージョンが存在している。

(1)Windows 10(Threshold1=TH1、バージョン1507)2015年7月29日提供開始
(2)Windows 10 November Update(Threshold2=TH2、バージョン1511)2015年11月12日提供開始
(3)Windows 10 Anniversary Update(Redstone1=RS1、バージョン1607) 2016年8月2日提供開始

Windows 10進化の歴史

 MicrosoftはWindows 10では従来のWindows 7→Windows 8のようなメジャーバージョンアップを行なわず、同じWindows 10の中でOSの機能を増やしていくという、WaaS(Windows as a Service、サービスとしてのWindows)と称されるポリシーに従って機能強化を図っていく。なお、Microsoftは同社サイトで、既に来年(2017年)に、今回のAnniversary Updateと同じような機能強化を2度行なうことを明らかにしており、公式にはしていないが、開発コードネームでRedstone2(RS2)、Redstone3(RS3)とされる機能強化だと考えられている。その意味で、今回のRS1ことAnniversary Updateは、今年提供される予定の唯一の機能強化で、それだけにMicrosoftとしても力が入っているのだ。

日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 Windows&デバイス本部長 三上智子氏

 三上氏は記者への説明を、まずWindows 10のリリースから1年について行なった。三上氏は「Windows 10が稼働しているデバイスは3.5億台を超え、グローバルの大手法人の87%が既に検証している。また、日本ではWindows 10 Mobileを搭載したスマートフォンが12社14機種が発表され、NTTドコモ、au、ソフトバンクそれぞれが法人向けの販売を開始、ないしは開始予定だ」と述べ、この1年でWindows 10の普及が大きく進み、かつ新しいOS導入時の課題となる法人向けの普及に向けた評価も進んでいるとした。

 また、法人向けのソリューションとして、Windows 10 Enterprise E3というサブスクリプション型のWindowsなどを発表したことに触れ、今後法人向けの普及により一層力を入れていきたいという。

3.5億台のWindows 10 PCが稼働中
サブスクリプション型のWindows 10 Enterprise E3も導入

 また、7月29日(米国時間)で終了した無償アップグレードについて触れ「無償アップグレードの過程では、通知の方法などでたくさんのフィードバックを頂き、反省すべきところがあった。6月になってお客様から頂いたフィードバックをもとに通知方法を見直した。今後も我々のテーマである愛されるWindowsを目指して、本社とも密接に連携して取り組んで行きたい」(三上氏)とした。

 三上氏によれば、通知画面を変更した5月からサポート窓口への問い合わせが増え、それを見直した6月にいったん減ったという。その後7月に向けては、むしろどのようにしたらアップグレードできるのかという問い合わせが増えたとのこと。特に日本では駆け込みのアップグレードが多かったそうだ。当初日本はほかの市場に比べて出足が遅かったそうだが、急速にアップグレードが進み、最終的には日本もほかの地域と同じような割合の無償アップグレードがされたということだった。

無償アップグレードは7月29日(米国時間)で終了済み
サポート窓口への問い合わせの推移

 また、三上氏は同社がWindows 10のキャンペーンとして展開してきた「Windows 10体験キャラバン」について紹介し、Windows 10に塗装された車両が68都市を訪問し、総走行距離で約19,000kmになったと紹介した。この体験キャラバンの車両は、基本的に1人のドライバーによって行なわれたそうだが、各地で東京からよく来たと言ってもらえたりと、ドライバーは大変歓迎されたという。

Windows体験キャラバン

 そしてこれらのWindowsという内容では「これからは新しい機能を搭載した新規デバイスにより新しい価値を提案していきたい。また、法人での展開も加速する元年に位置付けており、法人でのWindows 10の導入に努めていきたい。そしてそれと同時にWindows 10のファンを大事にすることを引き続き取り組んで行く」(三上氏)と述べ、Anniversary Updateの新機能に対応した新デバイスでユーザーにアピールしていきたいとした。

これからは新規デバイスの展開と法人向けの普及を目指す
Windows 10 Anniversary Updateではセキュリティ機能などの向上により安全安心なWindowsを目指す

デジタイザペンをより便利にするWindows Inkなどをアピール

 引き続き、日本マイクロソフト株式会社 Windows&デバイス本部 Windowsコンシューマーグループ シニアプロダクトマネージャー 春日井良隆氏による、コンシューマ向けのAnniversary Updateのアップデート内容の説明とデモが行なわれた。新機能として、Windows Ink、Windows Hello、Cortana、Microsoft Edge、ゲーム、MS-IMEなどの強化点を紹介し、実際に実機を利用してデモした。

日本マイクロソフト株式会社 Windows&デバイス本部 Windowsコンシューマーグループ シニアプロダクトマネージャー 春日井良隆氏
Windows 10 Anniversary Updateでのコンシューマ向け新機能

 デジタイザペンの強化ポイントとなるWindows Inkのデモでは、電子的な定規の機能で、直線を簡単に引ける様子などを紹介した。今回、MicrosoftはAnniversary Updateポイントとして、デジタイザペンの機能を重視しており、展示スペースで展示されていたOEMメーカーのPCは、いずれもデジタイザペン搭載の2in1デバイスとなっていた。

 日本語入力のMS-IMEの機能としては、より便利になったフリック入力のデモが行なわれ、フリック入力のキーボードの場所がユーザーの思いのままに移動できる様子などが紹介された。このほか、Cortanaのデモや、Miracastの機能を利用してWi-Fi経由でほかのPCのディスプレイをセカンダリディスプレイとして使う機能などが紹介された(なお、MiracastのデモはWi-Fi環境が厳しかったのかうまくいかなかった)。

Windows Inkのデモ
MS-IMEのフリック入力のデモ
Miracastレシーバーのデモは残念ながら失敗
日本マイクロソフト株式会社 Windows&デバイス本部 Windowsコマーシャルグループ シニアエグゼクティブプロダクトマネージャー 浅田恭子氏

 日本マイクロソフト株式会社 Windows&デバイス本部 Windowsコマーシャルグループ シニアエグゼクティブプロダクトマネージャー 浅田恭子氏は、法人向けのアップデートについて説明。浅田氏は主に、情報漏洩対策となるWindows Information Protection、さらに進入された後の対応機能となるWindows Defender Advanced Threat Protectionの2つを紹介した。

 Windows Information Protectionは、企業のポリシーにより構成されているWindows 10デバイスで、企業の重要情報などの管理を厳格に行なう仕組み。デモではポリシーにより保護されているファイルからのコピーで、ポリシーにより許可されているファイルに対しては行なうことができるが、ポリシーにより保護されていないアプリケーションにコピーしようとすると、コピーできないというメッセージが表示される様子が紹介された。

 また、Windows Defender Advanced Threat Protectionは、既に脅威に進入されているPCにおいてクラウドベースのツールと組み合わせて利用することで、どこに原因があるなどの様子をログからチェックしたりできる機能が紹介された。

Windows 10 Anniversary Updateで導入される企業向けの機能
Windows Information Protectionのデモ、対応アプリには機密情報コピーできるが、非対応のアプリにコピーしようとするとブロックされる
Windows Defender Advanced Threat Protectionはクラウドのツールと組み合わせて、脅威への対処ができる

 また、浅田氏はWindows 10の新機能提供方法の法人向けの展開についても触れ、Windows Insider Preview、CB(Current Branch)、CBB(Current Branch for Business)、LTSB(Long Term Servicing Branch)の4つの違いを紹介した。具体的には以下のようになる。

Insider Preview、CB、CBB、LTSBの違い

 CBというのはリリース後にすぐ適用されるアップデートのことで、Anniversary Updateは現在CBのステージになっている。そのCBの約4カ月後に投入されるのがCBBで、こちらは企業向けにバグフィックスなどが進んだ形で安定版として提供されることになる。HomeではこのCB、CBBのどちらを導入するかは選べないが、EnterpriseやProなどの法人向けとされるSKUではCBを導入せず、CBBから導入するなどを選択することができる。

CB、CBB、LTSBのサイクル
CB、CBB、LTSBの位置付け

 また、それに加えて、LTSBという特別版も用意されており、このLTSBでは基本的には機能制限(例えばCortanaなど)を行なうミッションクリティカル向け、特殊業務向けとされるSKUになる。2~3年に1度リリースされるとされているが、Windows 10 Anniversary UpdateのLTSB版は10月1日から提供開始される予定であることが明らかにされた。

ASUSのTransformer3の国内版と見られるT303UAが参考展示される

 最後に三上氏が、Windows 10とハンディキャップをお持ちの方向けのアクセシビリティ機能について紹介し、引き続きMicrosoftがアクセシビリティ機能の強化などに取り組んでいくほか、アクセシビリティを必要とするユーザーには引き続きWindows 10の無償アップグレードを提供していくことを紹介した。

 質疑応答では「現時点においてもWindows 7やWindows 8のプロダクトIDで無償アップグレードできた例が報告されているが」という質問がでたが、現時点では日本マイクロソフトでは具体的な情報を持っていないとの回答で、「基本的にはアクセシビリティを必要とするユーザー様は別として7月29日を持って無償アップグレードは終了したと理解している」(三上氏)と、今後は無償アップグレードは提供されないとした。

アクセシビリティ機能を必要とするユーザーには引き続き無償アップグレードを提供

 なお、日本マイクロソフトでは毎月10日をWindows 10の日として位置付けているが、8月10日からは中野ブロードウェイのソフトクリーム店デイリーチコと協力して、8段のソフトクリームを10段にするキャンペーンを8月10日から10日間限定で行なうことも紹介された(15時~20時まで、平日15時より整理券配布で、15時より随時販売)。なお、ハッシュタグ「#Windows 10の日」をつけてTwitterやInstagramでつぶやいて欲しいとのことだった。

8月10日から10日間は中野ブロードウェイのソフトクリーム店デイリーチコの8段のソフトクリームを10段に“無償アップグレード”

 終了後には、Windows Inkの機能に対応した、OEMメーカーの2in1デバイスが展示された。基本的には既に発売されている製品だが、COMPUTEX TAIPEI 2016でグローバル向け製品が発表されたASUSの「T303UA」(海外名:Transformer 3 Pro)が初めて国内展示された。

 既にキーボードも日本語化されており、参考展示だがこうした展示ではありがちな英語キーボードでの展示ではなく、日本語キーボードと組み合わされて展示されたことは、さほど遠くない時期に投入される可能性が高いことを示唆しており、注目したい。

ASUS JAPAN株式会社 T303UA、キーボードが日本語になっていた
VAIO株式会社 VAIO Z
東芝クライアントソリューション株式会社 dynaPad N72
パナソニック株式会社 タフパッド4K FZ-Y1
株式会社マウスコンピューター LB-J770S(クラムシェル型ノートPC)、指紋認証センサーのmouse FP01
NECパーソナルコンピュータ株式会社 LAVIE Tab W
レノボ・ジャパン株式会社 ThinkPad X1 Yoga
ファーウェイ・ジャパン HUAWEI MateBook
株式会社 日本HP HP Elite x2 1021 G1
富士通株式会社 arrows Tab RH77
デル株式会社 XPS12
日本エイサー株式会社 Switch Alpha 12