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パナソニック、リモートカメラの人物自動追尾システムを開発

自動追尾対応のリモートカメラ

 パナソニック株式会社は、リモートカメラの人物自動追尾技術を開発した。PCやタブレットにソフトウェアをインストールするだけで、パナソニック製の4K/HDインテグレーテッドカメラ「AW-UE70W/K」、「AW-HE130W/K」、「HE70シリーズ」などで、自動追尾を利用できるようにした。既に数百件規模での試験導入が進んでおり、今年夏以降、本格的な導入提案を加速する考えだ。

 パナソニックのリモートカメラは、離れた場所からの操作に加えて、省人化による撮影や制作コストの軽減を実現。多様な用途での映像制作が可能になるのが特徴。また、IP伝送でのフルHD映像出力や高画質映像のマルチストリーミングも実現できる。

特徴
リモートカメラのラインナップ

 パナソニック AVCネットワークス社 イメージングネットワーク事業部 プロAVマーケティング部 システムソリューション営業課の米澤功浩氏は、「パナソニックは、放送カメラで培った映像クオリティをリモートカメラにも活用。ハイエンドモデルからエントリーモデルまでをラインアップし、世界初の4Kリモートカメラもパナソニックが製品化した。また、高い操作性と円滑な駆動を実現しており、プロからも高い評価を得ている。他社に先駆けてIP化にも取り組んできた」という。

 議場や講義室、イベントホール、コンサートホール、スポーツ施設、お天気カメラ、放送スタジオ、結婚式場などでの利用を想定しており、講師を自動的に追尾して撮影するほか、既に提供を開始しているコントロールアシストカメラ機能を用いることで、iPadを使用して、リモートカメラを直感的に操作するといった使い方も可能だ。会議場で予想外の発言者がいた場合にも、その人の映っている部分をタップするだけで、カメラの位置をスムーズに変えることができる。

議場
講義室

 同社のリモートカメラの具体的な導入事例としては、日本初のオリンピック選手養成場となるイトマンスイミングスクールのAQIT(アキット)で、今年5月の開設以降、37台のリモートカメラを設置。水上や水中のさまざまな角度から水泳フォームを撮影、解析を行ない、選手のフォーム改善、技術力の向上に繋げているという。

 また、英国王立音楽アカデミーでは、演奏収録システムにリモートカメラを採用。演奏をライブスリトーミングで世界中に配信している。さらにジュネーブのユネスコ本部では、国際会議収録システムとして、本会議場にリモートカメラを設置して、国際会議やイベントを収録、世界に配信するという。

人が動くとカメラが自動追尾する
自動追尾で顔を認識している様子
多様な用途で活躍
スイミングスクールへの納入事例

 今回、パナソニックが開発したリモートカメラ人物自動追尾技術は、追尾開始時に、ガボールフィルタにより人が立った状態を縦形状として検出するとともに、その上部を頭部として推定することができる「動き検出」および「頭部検出」を行なうことで追尾対象を決定する。

 追尾中には、動きのある部分の画像だけを抽出し、頭部候補となる部分および周辺部を検出。直前10コマの頭部画像と現在のコマとの差分を計算し、差分が少なければ同一頭部と判断するテンプレートマッチング方式によって、講義中の講師が、正面、横、後ろなど、体勢を変えても追尾することができる。検出部分を少なくし、差分と比較することで、負荷を軽減した形で人物追尾を可能としている。

 また、動き検出および頭部検出と、テンプレートマッチングの組み合わせにおいて、双方の重み付けを状況に応じて変更させることで、多様な環境での追尾に対応。身振り手振りが激しい人の場合には、動き・頭部検出の重みを上げる一方、講義室に貼られた人物肖像画や、ポスターを講師と認識しないようにするためには、テンプレートマッチングの比重をあげることで、最適な人物自動検出を可能にする。重み付けの変更は、ソフトウェアのインターフェイスを通じて可能だという。

 さらに、顔認証技術を今年夏以降に追加。事前に登録された顔のデータベースと照合して、その顔を追尾対象とすることでさらに精度を高めるという。

自動追尾技術
動き・頭部検出
テンプレートマッチング
重み付け
顔認証
自動追尾で広がる多様な学びの場

 米澤氏は「講師を自動的に追尾することから、オペレータの負担軽減を実現するほか、講師はタグや発信器の携帯が不要であることから、講師自身への負担を軽減。ソフトウェアをPCにインストールすることで人物自動追尾ができるため、低コストで既存システムへの追加が可能で、導入する学校や施設側の負担を減らすことができる。学びの場においても多様な環境を提供することに繋がる」とした。

 現在、自動追尾は、PC向けのアプリとして提供しているが、自動追尾アルゴリズムをリモートカメラの中に組み込んで活用することも考えている姿勢を示したほか、将来的には、ドローンに搭載したカメラへの採用も検討していく可能性もあるという。だが、ドローンは本体そのものが移動することから、本体とカメラがより連動性を高めた自動追尾システムの開発が必要であり、今後ドローンメーカーとの話し合いを進めていく考えも示した。

自動追尾ソフトウェアはPCにインストールして利用する
iPadからコントロールアシストカメラ機能でカメラ操作が可能になる

 パナソニック AVCネットワークス社 イメージングネットワーク事業部 放送&システム事業担当総括の宮城邦彦氏は、「リモートカメラは、放送局や会議室などにおいて、省力化という観点で使われるようになっている。今年度で260億円の市場規模があり、パナソニックは3~4割のシェア。約100億円のビジネスを行なっている。年率10%の市場成長を遂げており、今後も成長が期待できる分野」としたほか、「リモートカメラはコンテンツを撮影することが中心であり、画質や操作性が重視される。その点がセキュリティカメラとは異なる。さらに、昨今ではIP化が進んでおり、PCやタブレットとケーブル一本で繋いで、撮影操作や制御ができるようになっている。追尾技術は、顧客がより使いやすいアプリケーションの1つとして開発したもの。放送システム事業としては、顧客のビジネスの成功と映像文化の発展に寄与したい」と述べた。

パナソニック AVCネットワークス社イメージングネットワーク事業部放送&システム事業担当総括 宮城邦彦氏
パナソニック AVCネットワークス社イメージングネットワーク事業部プロAVマーケティング部システムソリューション営業課 米澤功浩氏