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純中国産スパコン「神威太湖之光」が世界スパコンランキングで1位

~DEC Alphaの流れを汲む260コアの独自RISCプロセッサ。天河二号の2.75倍の性能

Sunway TaihuLight(神威太湖之光)

 LINPACK benchmarkによる世界のスーパーコンピュータ性能ランキングを年2回掲載している「TOP500」にて、6期連続でトップを走り続けていた中国の「Tianhe-2」(天河二号)がついに1位の座から引きずり下ろされた。

 今回1位を奪取したのは中国の「Sunway TaihuLight」(神威太湖之光)。江蘇省無錫市の国立スーパーコンピューターセンターにて稼働するスパコンで、実効性能値は93.01PFLOPS。2位へと落ちたTianhe-2は33.86PFLOPSであり、約2.75倍の性能差が出ている。

 神威太湖之光は中国の国家並列計算機工程技術研究中心(NRCPC)が開発した高性能プロセッサ「SW26010」を採用。260コアを内包しており、1チップで3TFLOPSの性能を叩き出す。神威太湖之光はこのプロセッサを搭載したシステムを40,960ノードで構築し、合計10,649,600コアという大規模システムを構築。理論ピーク演算性能は125PFLOPSに達するという。Linpackの実行効率は74%だった。

 SW26010のアーキテクチャはまだ謎に包まれたままだが、SIMD命令をサポートし、アウトオブオーダー実行ができるとされており、DECのAlphaアーキテクチャをベースに開発されたと推測される。命令セットはShenWei-64。

 プロセッサは4つのコアグループに分割されており、それぞれのグループは64個のコンピューティングプロセッシングエレメント(CPE)と1つのマネジメントプロセッシングエレメント(MPE)に分割される。それぞれのグループにメモリコントローラを持ち、1ソケット当たり136.5GB/secというメモリバス幅を持つ。動作クロックは1.45GHzで、1コアあたり1つのスレッドを実行できるという。製造は上海にある国家高性能集成電路設計中心にて行なわれたが、プロセスルールは不明。

 メモリに関しては1ノード当たり32GBで、全体で1.3PBという容量。これは理研の京の1.4PBよりも少ない。また、メモリに関してもDDR4ではなくDDR3を使用しているという。キャッシュに関しても実装が軽く、L1~L3までのキャッシュ層を持たず、各コアに12KBの命令キャッシュと64KBのローカルスクラッチパッドのみを持つのが特徴としている。

 消費電力は15.3MW(メガワット)で、天河二号の17.8MWよりも少ない。1Wあたり6GFLOPSの演算性能を持ち、スパコンの電力効率ランキングGreen500の上位に位置するだろうとしている。インターコネクトは「Sunway Network」というPCI Express 3.0に準拠した独自のものが採用され、ノード間で16GB/secの転送速度を持ち、レイテンシは1msec以下としている。

 OSも独自の「Sunway Raise OS」で、一般的なLinuxをベースとしたものとしている。そのほかのシステムソフトも一般的に使われているもので、C/C++やFortranなどのコンパイラを用意しているという。

 なお、理研の京は前期の4位から5位に下がった。5位までのスパコンの性能は以下の通り。

  • 【1位】Sunway TaihuLight(神威太湖之光) - 中国無錫国立スーパーコンピューターセンター
    コア数: 10,649,600、実効性能値: 93.01PFLOPS、理論性能値: 125.43PFLOPS、消費電力15,371kW
  • 【2位】Tianhe-2(天河二号) - 中国広州国立スーパーコンピューターセンター
    コア数: 3,120,000、実効性能値: 33.86PFLOPS、理論性能値: 54.9PFLOPS、消費電力17,808kW
  • 【3位】Titan - 米オークリッジ国立研究所
    コア数: 560,640、実効性能値: 17.59PFLOPS、理論性能値: 27.11PFLOPS、消費電力8,209kW
  • 【4位】Sequoia - 米ローレンス・リバモア国立研究所
    コア数: 1,572,864、実効性能値: 17.17PFLOPS、理論性能値: 20.13PFLOPS、消費電力7,890kW
  • 【5位】K(京) - 日本理化学研究所
    コア数: 705,024、実効性能値: 10.51PFLOPS、理論性能値: 11.28PFLOPS、消費電力12,660kW

 今回TOP500が始まって以来初めてアメリカがシステム数で他国を下回るという事態も発生している。アメリカの165台に対し、急速な発展を見せる中国が167台と上回り、なおかつランキングでワンツーフィニッシュを飾ったことで大きな優位性も見せている。