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小中学生が神宮球場に集結。NEC・レノボのタブレットで新聞作成に挑戦

~できた新聞はつば九郎が翌朝お届け

 小学生が1日かけてタブレットを使い、プロ野球の試合やその後のイベントを記事にまとめ、印刷されたミニ新聞が翌朝「つば九郎」によって届けられる。そんな親子イベント「スタジアムキャンプ~TOKYO HOME TOWN!2016~」が6月4日から5日にかけて、明治神宮球場で開催された。

 このイベントは東京ヤクルトスワローズが2007年から実施してきた一種のファン感謝イベント。第6回目となる2016年には小学生を中心とした子どもたちとその保護者など約50組の家族が参加。野球観戦に加え、OB選手との交流、球場内でのバーベキュー、テント宿泊など、通常では味わえない貴重な体験をした。

 過去4回は、NEC・レノボが全面的なバックアップをしており、今回も100台以上のタブレットを貸し出し用に持ち込むとともに、同社広報担当者が自ら現地で使い方のサポートも行なった。

 記者も約24時間にわたるこのイベントを密着取材した。その様子を順を追って紹介しよう。

試合を観戦し、タブレットで写真を撮影

 午前11時、集合場所である神宮球場のすぐそばにある聖徳記念絵画館にて、イベントの流れや、今回のメインイベントであるタブレットを使ったミニ新聞作りの説明が行なわれた。この場で各家族にNECパーソナルコンピュータの「LaVie Tab S」とレノボの「YOGA Tablet 2」が配られた。YOGA Tablet 2の方には、今回のイベント用にBIGLOBEが用意したSIMが挿入されており、LTE通信ができる環境が整っている。これを使ってインターネットで調べ物をしたりしながら、もう1つのLaVie Tab Sの方で写真撮影や記事の作成を行なうという寸法だ。

 NECパーソナルコンピュータ・レノボ広報の鈴木正義氏が順を追って写真の撮影の仕方や、撮った写真の確認方法、そして文章の入力方法などを教えたが、そこはイマドキの子ども。説明を待たずタブレットの電源を入れ、さまざまなアプリを起動し、早速てきぱきと使いこなしていた。

 また、サンケイスポーツ新聞で実際にプロ野球記事などを担当する記者が、本物の新聞ができるまでの工程や、記事の書き方のコツかなどを説明した。ちなみに、一昔前は、記事は全て紙とペンで書かれ、撮影はフイルムカメラを用い、撮影が終わったフイルムは、都度、球場からバイク便で新聞社に届けられていたが、今では記事はPCで書き起こし、デジカメで撮影した写真はインターネットで瞬時に編集部に送信される。

 さて、いきなり子どもたちに新聞を作れと言ってもどうしたらいいか分からないと思うが、今回参加者に与えられた課題は一面を作ること。既に一面のひな形が用意されており、参加者は撮影する写真の中から紙面で使う7枚を選び、文章も短い見出しと、ちょっとした作文を行なう程度。それがひな形に流し込まれ、新聞ができあがるという具合になっている。自分で作る世界に1つの新聞だ。

聖徳記念絵画館に集合した参加者
NECパーソナルコンピュータ・レノボ広報の鈴木正義氏(左)。右にいるのはサンケイスポーツの記者
受け取ったタブレットを説明を受ける前から使い始める子どもたち
用意された新聞のひな形。写真は全部で7枚使う

 説明が終わると参加者は球場へと移動し、試合を観戦した。子どもたちは、声援を送りつつ、時にはネット際まで近寄り、ピンチ操作でうまくズームを使いこなしながら、写真撮影をしていた。4日のカードはヤクルトスワローズ対オリックス・バファローズ。スワローズは1回表にいきなり3点を失うも、3回、4回、5回に得点を重ね、一度は同点に追いついたが、その後再度引き離され、6対4で負けてしまった。

4日はオリックス・バファローズ戦
タブレット片手に試合を観戦する子ども
ネット際まで行って撮影するシーンも
試合は6対4でスワローズの負けとなった

ギャオス内藤のキャッチボール講習

 試合が終わると、参加者はついさっきまで熱戦が繰り広げられていたグラウンドへと誘導された。先ほどまで高い視点から見ていた光景は、ともすればややこぢんまりして見えるが、選手と同じ目線に降り立つと、バックスクリーンや客席を見上げる格好になるため、突として巨大に見える。

参加者がグラウンドに入った時、まだ試合後の整備が行なわれていた。こうしてバッターボックスから見る球場は巨大だ

 そして、司会者からの呼びかけで家族たちの前に登場したのはヤクルトOBの「ギャオス内藤」こと内藤尚行元投手。内藤氏は身長187cmということで一般男性と比較してして長身だが、周りにいるのがちびっ子だけに、氏も一層際立って大きく見える。

 そんな内藤氏は、子どもたちにキャッチボールを教えるためにやってきた。最初に全員でウォームアップの運動を軽くこなしたあと、まずは特に何も指示をせず、キャッチボールをやらせた。野球未経験者もそこそこおり、うまくキャッチボールできない子どもたちがそこかしこにいた。

ゲストとして登場した内藤尚行元投手。終始、体育会系の見本とも言うべきはつらつぶりだった
参加者も持っている人はグローブを持参した
まずは様子見でキャッチボールをさせる
使われたのは柔らかめのキャッチボール専用球

 数分後、いったんキャッチボールを中断し、内藤氏はうまく投げる秘訣を伝授した。まずはボールの握り方。右利きの場合、ボールの縫い目が「つ」の字に、左利きの場合は「C」の字に見える場所を探し、それに対して、人差し指と中指の間を指1本分くらい空けて載せる形で握る。いわゆるフォーシームという握り方だ。

 そして腕は縦に振る。腕を横に振るサイドハンド投法もあるが、慣れない内にこれをやると球が左右にぶれてしまいがちになる。縦に投げれば、ぶれる方向は基本的に縦になるので、高すぎると相手が取れないが、低い分には捕球できるからだ。

 もう1つのポイントが腿をしっかり上げて、前に踏み出しながら投げること。これで体重を乗せて安定した投球ができるようになる。元プロの的確な指導に子どもたちは真剣に耳を傾けつつ、ボールの握り方や腕の振り方などを再確認していた。

フォーシームの握り方を解説する内藤氏
しっかり足を上げるのも重要
説明を聞きながら子どもたちはその場で握りやフォームを実践

 この3点を心がけながらキャッチボールを再開したところ、おぼつかなかった子どもたちも、幾分マシに投げられるようになった。

 最後に、チーム対抗の的抜き合戦が行なわれ、優勝したチームの家族は、内藤氏と一緒に、オーロラビジョンに映し出されながらの記念撮影を行なった。

チーム対抗の的抜き合戦
優勝チームの家族は内藤氏と記念撮影。オーロラビジョンも映し出されるおまけ付き
最後に全員で記念撮影
最後に握手攻勢に会う内藤氏

球場内でバーベキュー

 キャッチボール講習が終わると、すっかり日も暮れ、夕食の時間になった。スタンドに移動すると、コンロが用意されている。これでバーベキューを行なうのだ。スタンドでの飲食は通常でも可能だが、自分たちで調理するというのも、普通、経験できないこと。食材は、鶏肉やラム、ハンバーグ、野菜など。記者たちも同じものをいただいたのだが、思いの外(と言うと失礼だが)おいしかった。ただし、イベント中の飲酒は禁止されていたため、大人たちの間からは「これにビールがあれば、もっとよかったのに」というホンネもちらほら漏れていた。

 夕食を取り終わると、翌日の朝食の下ごしらえを行なった。下ごしらえと言っても、普通のパスタをジップロックに入れ、水に浸けて封をしておくだけ。一晩寝かしておくと、1分で茹で上げることができるようになる。この下ごしらえは、災害などで料理環境に制約がある際に役立つことを教える意味で行なわれたものだ。

スタンドに移動すると、業者がコンロを用意していた
家族でバーベキュー
夕食後に朝食の下ごしらえとして、ジップロックにパスタを入れて水に浸けておく

記者室で原稿を提出

 その後、野球観戦や今日の活動などを記事に起こす時間が設けられた。文章は長いものでも300字程度だが、長い文章より、むしろ見出しを10字程度にまとめるのに難儀していた子たちが多かったようだ。溢れた文字数を削るため、あるいはユニークな紙面にするためにと、家族一緒に知恵を絞りながら、思い思いの記事を作っていた。

既定の文字数の見出しを考えるのが結構難しかったようだ

 文章作成と紙面に使う写真の選定が終わったら、これまた普段は立ち入ることのできないバックネット裏の記者室に移動し、データごとタブレットをスタッフに手渡した。新聞作成について参加者が行なう作業はここまで。データはスタッフによって、PCに移し替えられ、「PowerPoint」のひな形に流し込まれる。単純な処理に聞こえそうだが、ある程度の修正も行ないながら、約50組分の記事を編集するのは一大作業で、実際スタッフたちはほぼ夜を徹して、編集と印刷を行なっていた。なお、タブレットで撮影した写真は全てUSBメモリにコピーされ、参加者に手渡された。

ちょっと操作方法に自信がない家族はスタッフの説明を受けながら記事を制作
書き終わったら記者室に移動して、タブレットごとデータを提出
記者室にはNECパーソナルコンピュータのPCが並べられていた
編集作業はスタッフがPowerPointで実施
鈴木氏を始めとしたスタッフがほぼ夜を徹して編集を行なった
最終的にブラザーのプリンタで印刷する

家族で協力してのテント設営

 4日最後の活動はテントの設営。夕食から戻ったグラウンドには、家族ごとにテントセットが用意されていた。今晩はグラウンドで一夜を明かすのだ。スタッフによる説明を受けた後、設営に取りかかる。折りたたまれたポールを伸ばし、対角線状にテントに通す。そして、風で飛ばされないよう、2方向に置かれた重りにテントのヒモをくくりつける。家族で協力して5~10分程度でテントは完成した。

 この後、カウントダウンが行なわれ、球場全体が消灯された。本当はここで手元のもう1台のタブレットを使って天体観測アプリを使いながら夜空を眺める予定だったが、この日はあいにくの曇り空で、全く星が見えなかったため、一応はアプリを起動してみたものの、そうそうに切り上げ、就寝となった。

家族で協力してテントを設営
経験は不要だが、起こすところがちょっと難しかった様子
完成したテント
消灯となり、タブレットの天体観測アプリを使ってみるが、あいにくの曇り空だった

 ちなみに、記者もテントで1泊したのだが、神宮球場は都心にありながら、森に囲まれていたりと、周囲に交通量の多い道路がなく、またスタンドが防音壁代わりになっているのか、夜になるとほとんど騒音が聞こえないことに気が付いた。

つば九郎が新聞を配達

一夜空けた神宮球場

 キャンプの朝は早い。翌5日は6時の起床。起きてまず、昨日作った記事が印刷された新聞を受け取るのだが、それを配達に来たのはスワローズのマスコットキャラのつば九郎。愛くるしい見た目とは裏腹に、定番のフリップ芸できわどいブラックジョークを飛ばしたり、ほかのマスコットキャラや選手たちにちょっかいを出したりするものの、憎めないヤツとして幅広い層に人気がある。

 この日も、配達に来た新聞を渡す振りをして渡さなかったりというご挨拶ぶり。しかし、子どもたちは大好きなつば九郎をみつけて大はしゃぎで周りに群がり、保護者たちもちょっと遠慮して遠巻きになりながらもカメラのシャッターを切りまくったりと、この2日で一番の盛り上がりを見せた。

つば九郎登場
新聞を受け取ろうとする代表に対し、明後日の方向に新聞を向けるつば九郎
そんな意地悪ぶりを見せながらも子どもたちのサインにも応じる
保護者も夢中になって写真を撮っていた

 本来は、この後つば九郎と一緒にラジオ体操が予定されていたのだが、ちょうどテント設営直後から降り始めた雨のためキャンセルとなり、新聞を配り終えたつば九郎はそのまま球場を後にした。

これは見本だが、このような形のミニ新聞が発行された

 その後、テントを片付け、球場のゲート外に出ると、バーベキューに使ったコンロがそこに並べられ、鍋で湯が沸かされていた。下ごしらえしたパスタを茹でるためだ。ミートソースは既に用意されていたので、1分ほど茹でたら、ミートソースをかけたら調理完了。さっと朝食を取り終えた。

 元々は10時からの予定だったが、ラジオ体操のキャンセルなどで、約2時間繰り上げられ、8時過ぎに閉会式が行なわれた。記者は運動やキャンプ設営などの作業には携わらなかったものの、24時間近いイベントの取材で結構くたくたになっていたが、子どもたちは閉会式の際も元気に満ちあふれており、まだ興奮冷めやらぬと言った様子。中には、そのまま5日の試合も観戦すると言う親子もいたほどだ。あいにく、5日のゲームもヤクルトは敗戦を喫し、手痛い4連敗となってしまった。次戦は、この参加者たちの期待に応えて欲しい。

 そして、事前の準備や、当日のさまざまな対応、夜を徹しての作業に携わった裏方スタッフの人たちにもお疲れ様でしたと述べたい。NEC・レノボ広報の鈴木氏によると、ここ最近はPCやタブレット市場は勢いがなく、持っていたとしてもあまり活用されていないため、今回のようなイベントを通じて、タブレットの新しい使い方を知ってもらったり、何かを作る楽しみをしってもらえればと苦労を買ってこのイベントに協賛しているそうだ。記者としても、こういったイベントが、世界的に低い日本の児童・生徒たちのPC所有率回復のちょっとしたきっかけになることを願っている。

今度はゲートの外に並べられたコンロでお湯が沸かされている
下ごしらえをしたパスタは1分で茹で上がる
完成したミートソースパスタ
閉会式は2階席で行なわれた
学生時代、自身も野球をやっていたという鈴木氏とのキャッチボールに急遽付き合わされる羽目(?)になった記者。鈴木氏もわざわざグローブを2つ持参していた