やじうまミニレビュー

マグネットでの着脱を可能にする「Micro USBマグネットケーブル」

~わずらわしいケーブルの抜き差しが不要に。充電のほかデータ転送にも対応

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
今回購入したMicro USBケーブル。色はブラックをチョイスした。パッケージはノーブランドで、販売元はWEUTOP

 昨年(2015年)の秋頃、KickstarterやIndiegogoなど海外のクラウドファンディングサイトで盛んに話題になっていたアイテムに、マグネットで着脱できるLightningケーブルやMicro USBケーブルがある。コネクタの先端部分がマグネットで取り外せるこれらのケーブルは、スマートフォンなどに装着することで、磁力によってケーブルの取り付けと取り外しが可能になる。MacBookのユーザーであれば、MagSafeと同じ着脱機構をLightning/Micro USBケーブルに持ち込んだ一品と考えれば分かりやすいだろう。

 このマグネット着脱ケーブル、なぜか同時期に複数のベンダーから形状が異なる製品がクラウドファンディングに持ち込まれ、ざっとチェックしただけでも4~5種類は確認できたが、そのいずれもが目標を大きく上回る金額を集めていた(年末近くには国内のクラウドファンディングサイトでも募集が行なわれていた)。筆者も海外サイトで2種類ほどを注文していたのだが、それらが手元に届かないうちに、国内の事業者を通じてAmazonなどでも複数製品の取り扱いが始まったので、今回はその中でもAmazonでの評価がとくに高い製品を選んで紹介する。

仕様は一般的なMicro USBケーブル。コネクタの損傷防止にも有効

 製品の仕様は上で紹介した通りで、コネクタの先端部分がマグネットによる着脱式になっていることを除けば、至って一般的なMicro USBケーブルである。コネクタの先端を機器のMicro USBポートに取り付けておけば、後はケーブルを近付けるだけでパチンとコネクタが合体し、充電が始まる。当然だがドライバインストールなどは必要ない。マグネットはそこそこ強力で、数cm離れた位置からでもきちんと合体する。

 充電のたびに機器を手で押さえてコネクタを差し込む作業がいらなくなるので、例えば就寝前に枕元などでスマートフォンを使った後も、薄暗がりの中スマートフォンをケーブルに近付けるだけでパチンとコネクタが合体し、充電が開始される。合体すると(通電時には)青いLEDが点灯するので、合体させたつもりが実は外れていたということもまず起こらない。一度使ってしまうと、これなしではいられなくなる快適さだ。

Micro USBコネクタの先端がマグネットで着脱式になっている。ケーブルの被覆はナイロンタイプでしなやかだ
コネクタ形状は一般的なmicroB-USB A端子
本体にはHKWというロゴがある
マグネット式で、コネクタ先端を引っ張ると分離する
【動画】後述のScanSnap iX100への着脱を行なっている様子。ちなみに通電していると合体時にはコネクタのLEDが青く光る

 コネクタの抜き差しが不要になるということは、コネクタそのものを傷める危険も少なくなる。もともとMicro USBは1万回の抜差耐用回数があるとされるが、それはきちんと差し込んだ場合の話で、力がかかって根本から折れ曲がるなどの事故は起こりやすい。本製品を使えばそうしたリスクも回避できる。

 利点はもう1つある。それはMicro USBの表裏を気にせず使えることだ。本コネクタは上下の区別なく合体できるため、Micro USBにつきものの、表裏を間違えて挿さらないストレスから解放される。つまりMicro USBでありながら、LightningやUSB Type-Cに近い使い勝手を実現できるわけである。このメリットも意外に大きい。

充電が必要な機器との組み合わせでストレスフリーな運用が可能に

 筆者の使い方はというと、とある理由(後述)でスマートフォンには使用せず、手元にあるマウス、およびスキャナと組み合わせて使用している。マウスはロジクールの「G700s」で、これはUSBケーブルで充電することで無線で使えるほか、USBケーブルを繋いだまま有線でも使える製品なのだが、無線での駆動時間は1~2日が限界で、かといってUSBケーブルは反発力が強いため有線のままだと操作がしにくい。そこに本製品を組み合わせれば、思い立ったらすぐ充電、使う時はすばやく取り外すことが可能になる。まさに理想的な運用が可能になるわけだ。

ロジクール「G700s」に取り付けたところ。本体を充電しつつ、有線マウスとして使える
マグネット式ですばやく取り外し、無線マウスとして使える
きちんと合体していると通電中は青く光る

 もう1つはPFUのスキャナ「ScanSnap iX100(以下iX100)」で、こちらも有線および無線の両方で駆動する製品なのだが、長時間のバッテリ駆動には不安があるため、スキャンは無線で行っている場合も、未使用時には常にケーブルを繋いで充電しておく必要がある。本製品があれば、その着脱がスムーズになり、機動性は大きく向上する。

 ちなみにこのiX100、スキャンデータをPCレスでクラウドにアップロードして分類保存する「ScanSnap Cloud」に対応しているが、これは無線接続時のみ利用できる。従ってスキャンデータをローカルに保存する場合は有線、EvernoteやDropboxなどクラウドサービスに保存する場合は無線という使い分けが可能なのだが、そうした抜き差しが必要な場合も、本製品が威力を発揮する。今回購入した製品は、試した限りでは有線接続時のデータ転送にも支障は見られなかった。常時有線のまま使うケースを除けば、iX100ユーザーにとってはメリットばかりだ。

PFUのスキャナ「ScanSnap iX100」に使用している状態。試した限りではデータ転送も問題なく行なえた
こちらは分離させた状態。ちなみにコネクタは表裏の区別なく合体できる
横から見たところ。突起はほんのわずかだが、それゆえいったん装着すると抜きにくい

 上記2製品を含め、手持ちの機器との組み合わせは双方のメーカーが保証しているわけではなく、利用はあくまで自己責任ということになるが、ケーブルを抜き差しするストレスから完全に開放されるメリットを考えると、試してみる意義は大きい。コネクタの規格自体は汎用的なMicro USBであるため、仮にうまく動作しないケースがあっても、ほかの機器に転用できるのも利点だろう。1セット2,280円という価格も、これらの利点を考えれば、とくに高いとは感じられない。

利用スタイルによっては不便な場合も

 ところで本製品はもちろんスマートフォンにも利用できるが、これについては注意が必要だ。それは製品の相性や動作の不具合といった話ではなく、スマートフォンにこの製品を取り付けることで、ほかのケーブルの利用が制限されてしまうからだ。

 というのもこの製品、いったん機器に取り付けると、抜き差しは必ずしも容易ではない。なにせ爪先をひっかけるところがないため、少しずつ引っ張りながら長時間格闘しなくては抜けない。むしろラジオペンチを使った方がいいくらいだ。それゆえ、今回だけは通常仕様のケーブルで充電する……といったことができず、結果的に組み合わせて使っている全ての充電ケーブルをこの製品に取り替えざるを得なくなる。そもそも毎回取り外すのなら最初から本製品ではなく通常ケーブルを使った方が良いだろう。サイズも極小なので、取り外すことで紛失する危険もある。

 こうしたことから、スマートフォンを充電している場所が自分の部屋、リビング、会社のデスクと3カ所あるならば、ケーブルは実質的に3本必要ということになる。今回紹介している製品はコネクタとケーブルがそれぞれバラ売りもされているので揃えること自体は可能だが、コストは相応にかかってしまう。Qiなどほかの充電方法が用意されているならともかく、複数の場所で充電する可能性のあるスマートフォンで、唯一の充電方法を本製品で制限してしまうのはマイナス面もあるので、その点は認識しておいた方がいいだろう。

 もう1つ、本製品のマグネットはそこそこの吸着力はあるものの、バッグの中に放り込んだ状態で常に接続を保てるほどの強さはないので、モバイルバッテリと組み合わせての利用では、バッグの中で荷物に押されたりケーブルの反発力に引っ張られたりして、すぐに外れてしまいがちだ。充電していたつもりが外れていた……というケースが多発すると考えられるので、モバイルバッテリによる移動中の充電が欠かせないというユーザーは、導入にはより慎重になった方が良い。ちなみに筆者がスマートフォンで本製品を使わない理由はこれである。

 このほか、コネクタをカバーで覆うことで防水を謳っている製品などは本製品を装着することでその機能が失われてしまうほか、Lightningコネクタ仕様の製品については筆者が探した限りではMFi認証を取っている品は確認できなかったので、結果的に高い買い物になってしまう可能性が高い。便利な製品であることはお墨付きだが、事前に利用シーンを想定して慎重に購入するのが、賢い選択だと言えそうだ。

スマートフォン(MADOSMA)に取り付けたところ。利用自体に支障はないが、通常ケーブルを挿せなくなるので、複数環境で充電を行なっている場合は注意したい
マグネットはそこそこ強力だが、横向きに力をかけるとこのような状態になりがち
突起はほんのわずかだが、本体機器の形状によっては気になることも。またカバーで覆われているタイプのUSBポートに使用するのは現実的ではなさそうだ
Amazon.co.jpで購入

(山口 真弘)