やじうまミニレビュー

ケンジントン「ExpertMouse OpticalBlack」

~4ボタン+同時押し2ボタンが利用可能、左手でも使えるトラックボール

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。

 以前、左右どちらの手でも使えるトラックボールとして、ケンジントンの「OrbitTrackball with Scroll Ring(以下OrbitTrackball)」を紹介したが、当初の目的である肩こりの解消に十分な効果があると分かったこと、また使い続けるうちに機能面で物足りなさを感じるようになったこともあり、上位のモデルへと買い替えることにした。今回はその上位モデルこと、同じケンジントンの「ExpertMouse OpticalBlack」を紹介したい。購入価格は8,562円だった。

 本製品は前回の「OrbitTrackball」と同様、左右対称で左手でも問題なく使えるデザインを採用している。ただし、ボールを中心に中央部が盛り上がる形状の「OrbitTrackball」とは異なり、本製品は平らな台座の中心にボールを配置した形状で、見た目のデザインは全く異なる。価格帯が違う製品とはいえ、同じメーカーの製品とは思えないほどだ。

 それゆえ「OrbitTrackball」のように手のひらで本体を包み込む握り方ではなく、キーボードのホームポジションに手を置いているかのような握り方になる。「OrbitTrackball」に比べるとフィット感には乏しいが、決して操作しにくいわけではない。もし角度が急すぎると感じるなら、付属のリストレストを使って調節すればよい。

 機能面での特徴としては、「OrbitTrackball」と同じく、ボール周囲にホイールと同じ機能を持つ「スクロールリング」を搭載することに加え、ボタンを4つ搭載することが挙げられる。ホイールボタンが搭載されないのは「OrbitTrackball」と同様だが、実質2ボタンだった「OrbitTrackball」に加えてさらに2つのボタンがあるので、1つにホイールボタンの機能を割り当てたとしても、まだ余裕がある。一般的なマウスの操作は、十分に代替できることになる。

 これらボタンに機能を割り当てるには、専用ユーティリティ「TrackballWorks」を利用する。左右ボタンの配置変更はもちろん、個別のキーストロークの登録も可能なので、例えば「Ctrl+Tab」というショートカットを割り当て、タブブラウザでタブを順番に切り替えるなどの役割を追加できる。ゲーミングマウスのようなマクロの登録まではさすがに無理だが、メディア再生用のキー割り当て、ウインドウの最大化最小化などのデスクトップ周りのキー割り当てなども用意されており、自由度は高い。

 またこの「TrackballWorks」では、「左上+右上の同時押し」および「左下+右下の同時押し」にも動作を割り当てられる。これにより、4ボタンと合わせて合計6つのアクションを割り当てて利用できる。「左下+右下の同時押し」などは握り方によってはホームポジションのままでは押しにくく、常用には向かない場合もあるが、例えば画面のロックやタスクマネージャの起動など、片手では押しづらかったり、あるいはホームポジションから手を離して押すことになるショートカットを割り当てて活用するのも、1つの方法だろう。

 ボールは前回の「OrbitTrackball」が40mmだったのに対し、こちらは55mmと大きく、ビリヤードの的玉よりわずかに小さい程度だ。自重があるためスムーズに回転させるにはやや力がいるが、むしろ「OrbitTrackball」のようにボールが軽すぎて制御しにくいこともなく、細かいコントロールも容易だ。しばらく使い込むと手の脂などで回転が軽くなってくるので、最初のうちに重く感じても、そう心配することはない。勢いをつけてボールを回転させた時の慣性も違和感はなく、ポインタの行方が分からなくなることもない。

 ボールの周囲に配置されたスクロールリングは、回転させた時にわずかに感触があるタイプ。使い始めはあまりスムーズではなく、不規則な引っ掛かりを感じたが、数日間使っているとスムーズに動作するようになった。とは言えあまり微細なコントロールをするのに向いていないことは明白で、もう少し精度が高ければと思わなくもない。筆者は主用途がブラウザの上下スクロールなので、多少の誤差は許容範囲内だが、ユーザによっては狙った位置でピタッと止めにくいことにストレスを感じるかもしれない。

 本製品のさらに上位モデル「SlimBlade Trackball」のように、ボールをひねる動きにまでアクションを割り当てられるといった派手な機能はなく、どちらかというとオーソドックスな製品だが、実質6ボタンで使える点など、「OrbitTrackball」との価格差なりの価値は十分にある。既に10年近いロングセラー商品であり、それなりに“枯れて”いるのも、安心して導入できる要因となるだろう。

 唯一のネックはボディが大柄なこと。とくに付属のリストレストを装着すると、かなりの存在感になる。左手で使うのならキーボードの左側に、右手で使うならその反対側に、設置スペースを確保できることは、事前に確かめておいた方がよさそうだ。

パッケージ。センサーは光学式でUSB接続。対応OSはWindows XP以降およびMac OS X 10.4.11以降で、今回はWindows 7 Pro 64bitで使用している
製品本体。写真で見ると金属っぽい質感だが実際にはプラスチック素材。ちなみにクリックはかなり反発力があり、クリック音も大きめ
左右が完全に対称なデザイン。ボール周囲のギザギザが入ったリングはホイールの役割を果たす。回した際に感触があるタイプだが、マウスのホイールほど明確な手応えはない
ボールを中心に4つのボタンが配置される。これに加えて左上+右上の同時押し、左下+右下の同時押しにもショートカットを割り当てられるので、実質6ボタンとなる
側面。かなり急角度に見えるが、実際にはフルキーボードよりも多少傾きが強い程度
筆者のホームポジション。左クリックは親指(右下のボタン)、右クリックは薬指と小指(左上のボタン)という割り当て
ボールは55mmと、ビリヤードの的玉よりもわずかに小さい程度。凹部に乗っているだけなので裏返すことで簡単に取り外せ、メンテナンスも容易
リストレストも付属する。前回紹介した「OrbitTrackball with Scroll Ring」と違い、いったん装着すると外しにくい構造。かぶせ持ちには適さないため筆者は使用していない
筆者の割り当て例。左右クリックを対角線上に割り当てた上で、右上が「次のタブ」、左上+右上の同時押しが「前のタブ」、左下が「閉じる」という、タブブラウザに特化した割り当て。左下+右下の同時押しは現状未使用
メディアプレイヤーやブラウザに特化したキーも用意されているほか、自前でキーストロークの組み合わせも登録できる
ポインターの速度はこのタブで調整できる
スクロールリングの回転方向も切り替え可能。ちなみに前回紹介したフリーウェアの「Nadesath」のようにボールの角度を調整する機能はないが、傾けて設置するのでなければ特に問題はないだろう
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(山口 真弘)