Windows 8ユーザーズ・ワークベンチ

Windows 8はメッセージングコミュニケーションをどうしたいのか

 Microsoftは、Windows Live MessengerをSkypeに統合しようとしている。それはそれでいいのだが、あとで決まったことからなのか、いろんな矛盾も散見する。今回は、Windows 8のコミュニケーション環境について見ていこう。

中途半端なメッセージング

 Windows 8の新しいUIには、コミュニケーションのための標準アプリとして、

・メール
・メッセージング
・People

が用意されている。メッセージはWindows Live MessengerとFacebookメッセージに対応し、Peopleは、FacebookとTwitterに対応している。なんだかFacebookがとても優遇されている印象を受ける。

メッセージングで追加できるのは、MeesengerとFacebookだけで、2つのサービスのメッセージを1カ所で受け取ることができる
メッセージングは、左右にスナップして、Webページを見ながらなどの操作ができる
Peopleアプリは、連絡先に限っては豊富なサービスのものを統合できるが、メッセージのやりとりができるわけではない

 もし、Skypeを使いたい場合は、自分でストアからアプリをインストールする必要がある。現在、SkypeはMicrosoftアカウントでログインすると、従来のSkypeの連絡先と、Windows Live Messengerの連絡先の両方が混在して一覧され、どちらの連絡先に対してもメッセージを送ることができる。

 これによって立場がなくなるのが標準アプリのメッセージングだ。今のところ、標準のメッセージングは、Microsoftのメッセージングサービスとして、Live Messengerのみの対応なので、Skypeアカウント宛てのメッセージが取得できない。メッセージングとSkypeの両方がインストールされていると、Microsoftアカウント宛のメッセージについては2つのトースト通知が表示されるが、Skype宛はSkypeだけが通知する。さらに、普通はFacebookのメッセージも受け取るだろうから、こちらはこちらでメッセージングがトースト通知する。結局、誰から何を経由してメッセージが届いたのかよく分からないというのが現状だ。もし、このトースト通知をタップし損なったら最後、いったいどのメッセージアプリがトースト通知をしたのか分からないので、片っ端から確認する必要がある。

 ちなみに、Connected Standbyの環境では、ストアアプリのみがメッセージの受信を通知して音などで知らせる。それでユーザーはメッセージの到来に気がつき、スリープを解除してロック画面でメッセージの概要を知る。そこからロックを解除し、スタートスクリーンでメッセージの到来を通知したアプリを開くといった手順が必要だ。このあたりの手間の煩雑さを考えると、やはり、スマホの方が手っ取り早い。

デスクトップアプリとストアアプリがいっせいに通知

 一般的なユーザーは、インスタントメッセージに関して、Windows 8の標準アプリやストアアプリだけを使うわけではない。デスクトップアプリも併用するパターンが多いはずだ。もちろん、Skypeはデスクトップアプリも提供されている。こちらも、Microsoftアカウントでログオンすることで、ストアアプリと同様に、Live MessengerとSkypeの双方のメッセージを送受信できる。また、Facebookのアカウントでサインインして統合することもできる。それぞれのアカウントでサインインして、ログアウト後、もういちどサインインするなど、最初はちょっと煩雑だが、最終的に、Skype、Facebook、Live Messengerの3種類のアカウントを1カ所でやりとりできる。Windows 8では、もっとも汎用的な環境といっていいだろう。

 これらの環境を使っているユーザーは、Microsoftアカウント宛てにメッセージが届くと、ストアアプリのSkypeがそれをトースト通知し、デスクトップアプリのSkypeがそれを通知し、さらにアカウントの状況によっては、標準にメッセージングもメッセージの受信を通知する可能性がある。

 ユーザーにとっては、どの方法でどのようにメッセージを受け取ったとしてもかまわないのだが、会話の履歴で困ることがある。すべてのアプリで同じ履歴を参照できるとは限らないからだ。

 履歴の点では、現状では、Facebookネイティブのメッセージサービスが比較的使いやすい。Webで使う場合やスマホなどのアプリで使う場合がいろいろと混在したとしても、やりとりした環境にかかわらず、すべての会話をいつでも参照できるからだ。ところが、それができないのが、Windows 8のメッセージングなのだ。基本的に、電源が入っていてネットワークにつながっていて、その状態でアプリが受信したメッセージだけが履歴と残る。Facebookはクラウド側にメッセージが蓄積されているが、それを取得する方法は提供されていない。その他のメッセージングは、基本的にローカルにメッセージが蓄積されるため、仕方がないといえば仕方がないのだが、やっぱり使いにくい。

デスクトップ版のSkypeは、MicrosoftアカウントとFacebook、Skypeのメッセージを統合できる
ストアアプリのSkypeに、Microsoftアカウントでサインインすると、SkypeとLive Messengerのメッセージをやりとりできる

ワンストップの窓口が欲しい

 人それぞれ、愛用しているメッセージングサービスは異なる。Live Messengerのように、クラッシックなメッセージングはもちろん、FacebookにTwitterのDM、Google+のメッセンジャー、そしてLINEなど、人によってはTencentのQQを使っていたり、Weiboでメッセージが届く人もいるかもしれない。さらに、スマホにはSMSでもメッセージが届くだろうし、携帯電話のキャリアメールをSMSのようなものとして考えるなら、それらもあてはまる。

 本当は、Windows 8のメッセージングがこれらをすべて統合してくれる存在でないと困る。SNSの時代なので、人は、いろんなコミュニティに属しているはずで、それぞれのコミュニティで、それぞれのコミュニケーションが発生する。どのデバイスを使っているときでも不自由なくそれらのコミュニケーションができてほしいと思うのは当たり前だ。

 ちょうど、メールクライアントが複数アカウントに対応し、いろいろなアカウントに届くメールを集中管理できるのが当たり前になったように、メッセージングもそろそろ統合化が実現されてもいいはずだ。現状は、パソコン通信の時代と同じで、加入しているサービスの数だけメールアドレスがあり、そのアドレスを名刺に列挙し、毎日、サービスをハシゴしてメールをチェックしていた時代に逆戻りという印象だ。今、MicrososftはSkypeとLive Messengerの統合という形で、異なる素性を持つメッセージング環境を統合したらどうなるかを実験しようとしているといってもいい。

 それがうまくいったら、Windows 8のメッセージングにもSkypeを追加すようなこともあるかもしれない。TwitterのDMも統合されるかもしれない。

 現在の仕様を見る限り、異なるアカウントのためのモジュールを追加していけば、いろんな種類のメッセージングに対応できるような実装になっているように見えるのだが、サードパーティ製アプリが、特定のメッセージングサービス用のモジュールを、標準アプリのメッセージング用に提供するのはストアの仕組みとして難しそうだ。ここは1つ、Microsoftの仕事に期待したい。

 メッセージングの出入り口を1カ所にまとめること。これはとても重要だ。ワンストップですべてのメッセージを扱いたい。そうなっていなければ使いにくくてたまらない。

 Windows 8のスタートスクリーンでは、ライブタイルがアプリごとの状況をリアルタイムで知らせてくれる。もちろん、メッセージングもその例外ではない。でも、扱うアカウントの数だけライブタイルがあっても使いにくいだけだ。ぜひ、シームレスにメッセージングサービスを統合した使いやすい環境を整えてほしいものだ。

(山田 祥平)