Windows 8ユーザーズ・ワークベンチ
自分の環境をスピーディに取り戻す
(2013/2/6 00:00)
PCを日常的に使っていると、さまざまなトラブルに遭遇する。システムそのものや、アプリケーションの不具合によるものもあれば、単純に自分のミスということもある。これらのトラブルから、いちはやく回復するために、Windows 8は、さまざまな仕組みを用意している。
あってよかったシステムの復元
Windows 8でも、従来からあったシステムの復元は健在だ。ベータ版のアプリをインストールしたり、動くはずのアプリやドライバがうまく使えなかったりしたとき、あるいは、とんでもないアプリを入れてしまったような場合は、念のためにシステムの復元をしておくことが多かったのだが、この機能のおかげで助かったということが、過去に何度もあった。
ともあれ、この機能はオンにしておいた方が何かと安心だ。システムの復元は、コントロールパネルの「回復」アプレットに関連機能がまとめられている。このアプレットを開くと「高度な回復ツール」として、
・回復ドライブの作成
・システムの復元を開く
・システムの復元の構成
という3つの項目が用意されている。
従来通りのシステムの復元は2つ目の項目「システムの復元を開く」で行ない、その設定構成や強制的な復元ポイントの作成については3つ目の「システムの復元の構成」で設定する。
システムの復元は、あくまでもシステムの回復を目的にしたものであり、ユーザーファイルには手をつけない。新しく作成したユーザーファイルなどはそのまま残る。ドライバやアプリケーションなどをインストールして、どうにもシステムの様子がおかしい場合は、ドライバやアプリそのもののアンインストールをすればいいのだが、それでも残骸が残ってしまうことがある。そんな時にも、システムの復元を使えば元の状態に復帰することは多い。逆にいうと、何か、危ない橋を渡る場合は、あらかじめ、復元ポイントを手動で作っておくようにするといい。復元ポイントは一部のアプリケーションならインストーラが自動的に作成したり、Windows Updateなどのタイミングで作成されるが、そうではないケースも多く、問題の起こった直前の状態に戻れるとは限らないからだ。
メーカー製PCのようにリカバリできる
メーカー製のPCなどでは、工場出荷時の状態に戻すリカバリ機能が用意されていることが多い。工場出荷状態のイメージファイルが別のパーティションに用意されていて、それを使って元の状態に戻す機能だ。お膳立てがきちんとしているので、メーカー製PCの場合はユーザーが回復用のイメージファイルの存在を意識することはあまりないが、自作PCなどでも、Windowsをクリーンインストールしたような場合でも同等のことができる。そのための機能が「PCをリフレッシュする」だ。
似たような機能に「すべてを削除してWindowsを再インストールする」があるが、こちらは、インストール直後の状態に戻すだけなので、もう一度クリーンインストールするのと変わらない。
それに対してリフレッシュは、特定時点でのWindowsの状態をそのままイメージとして保存しておき、それを元にリフレッシュすることができる。したがって、Windowsが正常に稼働していると判断できる時点で、自分で回復用のイメージを作成しておくと安心だ。特に自作機の場合は、さまざまなドライバやアプリなどをインストールして安定稼働を確認した時点で、回復用イメージを作成しておくと、まるでメーカー製PCのように自分の環境をリフレッシュすることができる。
ただし、回復用のイメージを作成するためのGUIは用意されていない。イメージの作成にはコマンドラインツールとしての、recimg.exeを使用しなければならないのだ。さらに、このツールは管理者用のコマンドプロンプトで実行する必要がある。
引数なしでこのコマンドを実行すると、かなり長い説明文が表示される。ちょっと長いが確認のために引用しておこう。
<ここから引用>
PCのリフレッシュに使用される回復イメージを構成します。
RECIMG.EXE <コマンド> <引数>
recimg.exeコマンドラインツールでは、PCをリフレッシュするときに使用するWindowsのカスタム回復イメージを構成できます。カスタム回復イメージを作成すると、インストールしたデスクトップアプリと現在の状態のWindowsシステムファイルが含まれます。回復イメージにドキュメント、個人設定、ユーザープロファイル、またはWindowsストアからのアプリは含まれません。それらの情報はPCのリフレッシュ時に保持されます。
カスタム回復イメージを作成すると、recimgによりそのイメージは指定されたディレクトリに格納され、アクティブな回復イメージとして設定されます。カスタムの回復イメージがアクティブな回復イメージとして設定されている場合、PCのリフレッシュ時にWindowsでそのイメージが使用されます。/setcurrentおよび/deregisterオプションを使用して、Windowsで使用する回復イメージを選択できます。
すべての回復イメージのファイル名はCustomRefresh.wimになります。
CustomRefresh.wimファイルがアクティブな回復イメージディレクトリで見つからない場合は、PCのリフレッシュ時にWindowsで既定のイメージ(またはインストールメディア)にフォールバックされます。
カスタム回復イメージを使用してPCを初期状態に戻すことはできません。カスタム回復イメージはPCをリフレッシュするためにのみ使用できます。
次のコマンドを指定できます:
/createimage<ディレクトリ>
<ディレクトリ>で指定された場所の新しいカスタム回復イメージをキャプチャし、アクティブな回復イメージとして設定します。
/setcurrent<ディレクトリ>
アクティブな回復イメージを<ディレクトリ>で指定された場所にあるCustomRefresh.wimファイルに設定します。PCの製造元から提供された回復イメージがある場合でも、WindowsはPCをリフレッシュするときにこのイメージを使用します。
/deregister
現在のカスタム回復イメージの登録を解除します。PCの製造元から提供された回復イメージがある場合、PCをリフレッシュするときにWindowsはそのイメージを使用します。提供されたイメージがない場合、PCをリフレッシュするときにWindowsはインストールメディアを使用します。
/showcurrent
現在アクティブな回復イメージが保存されているディレクトリのパスを表示します。
/help, /?
このヘルプテキストを表示します。
<引用ここまで>
この説明を読めばわかるように、回復イメージはCustomRefresh.wimという名前のファイルであり、他の名前は許されない。そして、あらかじめ、レジストしておくことによって、特定のフォルダに置いたCustomRefresh.wimを特定しておくことができる。
recimgは、RecoveryImageを意味するのだろう。つまり、現在の環境をイメージとして記録するということだ。健全に稼働している環境をそのまま記録し、それを復元することができる。これは自作PCではきっと重宝するはずだ。
また、メーカー製のPCのユーザーにも役に立つ。たとえば、Windows 7機をWindows 8機にアップグレードしたような場合、過去に使っていた工場出荷時へのリカバリイメージをもう使うことはないと判断したら、アップグレード後の状態をイメージとして保存しておけばいい。また、最初からWindows 8がプリインストールされたPCでも、パワーユーザーであれば、購入直後から日常的に使う環境に仕上げるまでに相当の手間をかけるはずだ。その作業が終わったときにイメージを作成しておけば、何かがあったとしても、作業をゼロからやり直す必要がなくなるというわけだ。
備えあれば憂いなし
それでもPCは機械だ。SSDにしろ、HDDにしろ、いつかは壊れる運命にある。これらのデバイスが故障もなくPCがライフサイクルを終えるのはラッキーだったからだと思った方がいい。
これらのシステムパーティションがなんらかの障害を起こし、PCを起動できなくなってしまうことも想定しておくべきだ。そのために用意されているのが、冒頭のコントロールパネルアプレットの「回復」にある「回復ドライブ」だ。
この機能を使うことで、USBメモリなどに起動可能なパーティションを作成し、回復用の環境を用意しておくことができる。作成時には、自分で作ったイメージをあわせて格納しておくことができるので、万が一の際には重宝するはずだ。
かつては、さまざまな作業を手間をかけてセットアップしなければならなかったWindowsも、クラウドとの連携機能などによって設定が同期されるなど、比較的短時間で、自分の環境を復元できるようになった。インストールに要する時間も短くなり、標準的な機器構成であれば、ゼロからクリーンインストールした方が手っ取り早いということもあるかもしれない。ユーザーファイルの多くもクラウドに保存されているケースは多いだろう。メールなども同様だ。それでも、パワーユーザーであればあるほど、自分の環境にはこだわりがあるものだ。時間が経てば経つほどレジストリなども汚れてきて、いろいろな不具合を見つけにくくなる。定期的なリフレッシュが必要なのは、以前のWindowsとあまり変わってはいないようだ。